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アルネスの街編
18.食事会の後は同居人との会話で明るい未来予想(4)
しおりを挟む火術で焼却するにも悪臭が立ち上り、専用施設を設けても働き手が続かない。家畜や従魔の餌にすることも考えたらしいが、いくら従魔とて好みはあるらしく、何でも食うのはゴブリンくらいなものだとか。
そして陸に捨てるのは言わずもがなというのは、このゴブリンを大繁殖させてしまう危険性があるということだろう。
ディーバラ、なんて怖ろしい魚なんだ。
「とにかくだ、これがこのような水準で食えるようになるのは本当に助かる。ただ、な。少し気になるんだが、ヤスヒトとサクヤはこんなに美味くなったのに偉く反応が薄いな。それが俺には不思議なんだが」
「いや、そりゃそうっすよ、ユーゴさんの料理はこんなもんじゃないって知ってますからね」
「これは料理というより実験だと思うので。ユーゴからしてもその感覚だと思いますよ。多分、今頃新しい発想でも出てるんじゃないですかね?」
「買いかぶり過ぎだけど、まぁ、そうだね。臭いのは皮目の方の肉だから、漁でとってすぐ【異空収納】に保管して、加工所で切り身に解体したあとで、すり身にしちゃうのが一番だと思う」
廃棄部分はミンチにして処理。それを沖の方で分散して撒くことで、一か所に留まった魔物を散らせる。むしろ嫌がる魔物がいるなら田畑の魔物避けに使ったりもできるかもしれない。
皮目の方の脂肪の臭気が酷いので、絞って抽出した油を何かに付着させたりすれば効果が望めるんじゃないか。という意見を続けて話した。
「ま、待て待て、待ってくれ! すまんがユーゴ、今の話を、もっと詳しく聞かせてもらいたい。あと、食材次第では、もっと美味いものが食えるというのなら、悪いが、何でも構わんから料理を作ってみてくれないか? メイドに見せてやって欲しいんだ。効率の良い調理法などもあれば教えてやって欲しい」
俺は了承し、再び厨房に入った。そして適当な食材を出してもらい、それらを使ってすき焼き風の煮込みを作り、白米と一緒に出した。
うん、味は上出来。
エドワードさんはおかわりを五回も行い、ヤス君とサクちゃんもおかわりを三回してがっついた。食事が終わる頃には、特例で一緒に食べていた執事とメイドたちも恍惚とした満足げな表情を浮かべていた。
その後、執務室でエドワードさんからの質問に答えつつヤス君とサクちゃん交えて談笑。食事会に誘ったのに、こんなことになって申し訳なかったと謝礼金を出されたが、丁重にお断りした。
俺は料理人ではないし、素材は領主館の高級な物を使わせてもらったのだから、それで十分。
「欲のない奴だ」
エドワードさんはそう言って笑ったが、なんとなく嬉しそうに見えた。俺たち三人の印象が少しでもよくなったのなら、俺も頑張った甲斐があるというものだ。
損して得とれ。今後はこのアルネスの街を拠点として生きていくのだから、領主様との関係は良好に保っておきたい。そういう打算は、部屋に帰った後で同居人のフィルに話した際に、あっという間に見抜かれた。
「ふふっ、なんていうか、ユーゴの性格が少し分かった」
「ハハハ、まだ会って半日も経ってないのに何言ってんの?」
俺たちは苦笑しながら談笑を続けた。
フィルは前世ではアメリカ人女性で、アシュリー・クーパーという名だった。性同一性障害持ちでバイセクシャルの属性過多だったとカミングアウト。
性的指向は引き継いでいるらしいが、気づいたら男性としてこの世界に転生していたので図らずも性同一性障害は克服したことになる。ちなみに死因は不明とのこと。
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