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宿場町~裏社会編

29.初絡まれテンプレ展開とダンジョン特急探検隊(7)

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「一回出てトイレ休憩にします?」

 ヤス君の提案にフィルが賛成。俺とサクちゃんはフラストレーションを溜め込んでいたので反対したが、一度転移装置の感覚も味わっておきたいという言葉で「それもそうだ」と二人同時に納得。転移装置に階層登録がてら、一旦外へと出ることにした。

 転移装置は黒い小型の石柱で、各階層の数字が書かれたスイッチが付いている。何も書かれていない箇所が地上。それを押すと、スイッチが白く点灯し、ブゥン、という稼働音がする。音もスイッチの点灯も僅かの間。ほぼ一瞬。

 しばらく棒立ちになる。

 風景が変わらない。稼働は終了しているのだが、成功したのかどうなのか分からない。皆で顔を見合わせて首を傾げつつ扉を開ける。ちゃんと外だった。

 転移装置の小部屋は内装がほぼ同じな為、扉を開けるまで風景が大きく変わることはないようだと覚る。

「転移酔いみたいなのはなかったね」

「エレベーターの方が気持ち悪いかもっすね」

「いつ転移したのかまったく分からんかったんだが」

「俺も。はいはい、早くトイレ休憩済ませて戻ろう。今日中に十層は越えたいからねー。俺とサクちゃんは蜘蛛と戦いたいからねー」

 俺が手を叩いて呼び掛けるとフィルとヤス君が「はーい」と手を上げて返事をし、トイレの方へと向かった。が、その後を追う者の姿がある。

 男女合わせて四人。俺が気づいたってことは、ヤス君は確実に気づいている。サクちゃんへ目を向けると頷いた。

「四人だったな。どうする?」

「多分、放っておいても大丈夫な気がするけど、念の為追いかけようか」

 慌てず急がずゆっくりと進んだ後に見たのは、取り押さえられた若い男二人と、取り押さえている冒険者らしき中年の男女。側にはフィルとヤス君。

「何これ? どういう状況?」

「あ、ユーゴ。えーっと、僕らが変なのに追われてることに気づいて、彼らが捕まえてくれたんだよ」

 フィルが二人を紹介してくれた。ノッゾさんのパーティーメンバーのイゴールさんとミルリナさん。

 イゴールさんは大柄な男性で、ミルリナさんは細身で背の高い女性。多分、二人とも人族。礼を言うと、苦笑された。

「俺たちが手を貸す必要もなかったみたいだな」

「本当に。余計なお世話だったね」

 二人は躊躇ちゅうちょなく若い男二人の腕を捻り上げて折り、手を払って立ち上がる。

「後は自分たちでやんな」

 ミルリナさんが手をひらひらしながら歩き去る。イゴールさんは俺たちをぐるっと見てから満足げに頷いて「いいパーティーだな。頑張れよ」と笑ってミルリナさんの後をのしのし追った。背中に背負った大盾がまたでかい。

「なるほど確かに、ノッゾさんのパーティーメンバーらしい雰囲気だな」

「いやー、強かったっすよ。取り押さえるまで一瞬でした」

「へー、それは見たかったな。それで、こいつらどうしよっか?」

「衛兵に突き出す前に、雇い主とかいるなら知っておきたいね」

 フィルがそう言うものだから仕方なく腕を折られた若者二人に動機や目的を訊くが、予想通り何一つ答えない。
 
 
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