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ウェズリーの街編
23.半月斧を持つ赤い鎧の青年はかく語りき(4)
しおりを挟む一人残されたルードは、音を聞きつけてやってきた鉱夫たちに叱られ、鉱石の回収を行うことになった。なんで自分がと思いながらも、長い時間を掛けて拾い集めて掻き集めて、ようやく作業を終えた頃には日がとっぷりと暮れていた。
それでもどうにか終えることができた。肩の荷が下りた気分で冒険者ギルドに赴き事の次第を報告すると、少年たちが帰っていないと言われてしまう。
そこでまた例の職員がしゃしゃり出てきてルードに責任を押しつけた。止むなくルードは坑道に戻り、一晩中少年たちを探したのだという。
「結局、見つける、こと、が、できなくて。でも、サラマンダーは、どうにか、捕獲、できたんです。それが、その子たちが、持っていってしまって」
「その子たちって、引率してた新米冒険者?」
ルードが頷き、悔しげに続きを話した。
「何故か、坑道の、外に、いたんです。それで、サラマンダーを、見せてくれ、と。僕は、怪我を、しないような、作りの罠に、掛けて、木製の、檻に、入れて、丁寧に、きちんと、捕獲できて、たんです。それが、どうしても、見せてくれと」
ルードは嫌な予感がして渡すのを拒否した。ところが、少年たちは大声で泣き出してしまったという。それで、躊躇いながらも仕方なく檻を渡したところ、途端に駆け出し、まるでキャッチボールをするように、檻で遊び始めてしまった。
「キャッチボールだと⁉ そんな目に遭わされたのかサブロ⁉」
サブロに訊くと「ピギッ!」と頷いて手のひらで地団駄を踏んだ。
「なんだと! よくも俺のサブロを! 許さんぞクソガキ共め!」
「はいはいユーゴもサブロも落ちついて。続きどうぞー」
ルードは少年たちを追い掛け、サラマンダーは生き物だから乱暴にしてはいけないと言って聞かせた。だが、少年たちはまるで言うことを聞かない。いい加減にうんざりして、本気で止めようとしたが、そこで隘路に逃げ込まれてしまった。
「体の大きさが仇になったか。ルードで無理なら俺たちも無理だな」
「ちょっと情操教育が必要なようですね。見つけたらコテンパンっす」
「うん、たっぷりお灸を据えてあげないとね。それで、見失って終わり?」
ルードがかぶりを振る。逃げられはしたが、街中にいるのは分かっていたので、徹夜明けの状態で延々歩き回って探したところ、空き地で楽しげに笑いながら遊んでいる少年たちを発見したのだという。
相変わらず檻を乱暴に扱っていたので、流石にルードもブチ切れてしまったらしく、手にしている半月斧を振るい、手近にあった瓦礫を粉砕した。不運だったのは、少年たちが驚きのあまり檻を放り投げてしまったこと。
飛んでいった檻は地面に落下し、衝撃で全壊。捕らえていたサラマンダーが近くにあった鍛冶屋の中に逃げ込んでしまった。ルードは逃げ出す少年たちを放置し、その鍛冶屋の中へと駆け込んだのだが、サラマンダーの姿がない。
店主に頼んで店の中を隈なく調べさせてもらったが見つからず、痺れを切らした店主に「何を探しているんだ」と問われたルードがサラマンダーだと答えると、さっきまで店にいた作務衣の男に引っ付いていたと教えられたという。
「あんな、大きな、ものが、くっついてる、のに、知らん顔、して出て行った、から、てっきり、あの男の、従魔だと、思って、たって」
「サクちゃん……」
「サクやん……」
「サクヤ……」
「よし! 坑道に行くぞ! サラマンダーを捕獲する!」
俺たちの残念なものを見るような目に耐えかねたのか、サクちゃんは高らかに宣言して冒険者ギルドを出て行った。だが残念なことに誰もついていかなかった。
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