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もう一人の渡り人編
16.レノアイザベラニーナエリーゼ(5)
しおりを挟む「面白い! これは痛快だ! やはり伝説の英雄だな! 古の説話を聞いているようだ! おお、そうだ! 良ければだが、術を見せてもらえんか⁉ それとな、これもリンドウ殿から聞いたんだが、飯を食わせてもらえんだろうか⁉」
俺は一瞬、何を言われたのか分からず呆然としてしまった。が、理解すると笑いが込み上げてきた。まったくリンドウさんという人は。
「分かりました。それでは、まずは術から」
俺は【陰陽盾】を出し、吸い込んだままにしてあったエリーゼの長剣を危険がないように吐き出させた。そして術の説明を行った。
イワンコフさんは【陰盾】に手を突っ込んで【陽盾】から出てくることに驚愕し、女子たちも含めて興奮した様子を見せた。
次に【冷涼薄霧】と【殺菌光】を見せ、最後に【過冷却水球】を披露した。やはり【過冷却水球】は別格の術らしく、見せた瞬間に全員が絶句した。
「とまぁ、こんな感じです。まだ実際に試したことはありませんが、例えば【過冷却水球】を適当な場所に設置して、敵の物理攻撃を【陰盾】で吸い込み【陽盾】を【過冷却水球】の前で発動させれば、狙わずに氷結させることが可能です」
他にも【陰盾】に向かって【剛力砕破】を打ち込み、敵の死角に出した【陽盾】から放つことも可能などの説明をする。別に手の内を明かしたとしても不利にはならないものなので、気兼ねなく話せた。
イワンコフさんは一度大きく息を吐いた後で、額に浮いた汗を手の甲で拭った。それから腕組みして唸り、俺の顔をじっと見て口を開いた。
「ユーゴ、わしはリンドウ殿から聞かされた話を理解しとらんかったようだ。まさかここまでの術師だとは思っておらなんだ。もはや神の域だ。正直に言うと、怖ろしい。それで、一つ聞くが、お前のパーティーには、カナンの遊牧部族の口伝にある白き貴人、青き賢人、黒き武人の三人もいるということか?」
「ええ、いますよ。ちなみにですが、ダンジョンの四十階層までは賢人に当たる者がほぼ一人で攻略しました。他三人は後について歩いていただけです」
「何だと⁉ ユーゴは手を出しておらんのか⁉」
「強すぎて手を出す暇もないんですよ」
そう返答すると、脳裏にダンジョン攻略時の光景が甦った。
あれは苦痛だったよなー。
自然と肩が落ちて溜め息が溢れた。
「貴人と武人も、やはり強いのか?」
そう問われたときに、今朝のドゴンたちとの戦いを思い出した。俺はルードの一件からチエとドゴン、戦乙女隊のことを含め、すべてをイワンコフさんに話した。
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