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それぞれの成長 パーティー編
23.初めてのダンジョン周回は効率重視でした(4)
しおりを挟む「はー、相変わらず美味いなー。冗談抜きで毎日食えるぞ」
「だよね。ユーゴが作ってるからなんだろうけど、そもそも味噌汁って美味しいよね」
「酒粕使うと、もっと美味しくなるんだけどね。見当たらなくってさ」
「いや、十分だって。だけど残念だよな。ヤスヒトはこれ食えないんだもんな。そういや、あいつ飯ってどうしてんだろうな?」
「そこはちゃんと準備してるよ。ヤスヒトだし。でも、こんなに美味しくはないだろうから、思い出して涎垂らしてるかもね」
褒められるのは嬉しいが、そろそろ羞恥が上回ってきたので、俺は軽く咳払いして話を変えた。
「それでフィルよ、大体三時間経過したけど、今のところどんな感じ? レアドロップはあった?」
「ないね。『殺人熊の寝間着』が三着取れただけ。休憩挟みながら安全第一で進めて、今は十五回目が終わったとこだけど、通常ドロップでも二十パーセントってとこだから、やっぱり相当な低確率みたいだね」
俺の方も十五回クリアしていたが、通常ドロップ一回のみという惨憺たる状況だった。二人に伝えると目に見えて引かれた。
「試行回数少ないし、実際のドロップ確率も分からないんだから、そんな顔しないでよ。そっちが上振れてるだけかもしれないよ?」
「納得できる試行回数が取れるほど周回したくはないんだけどね。僕はほとんど眺めてるだけだし、本でも読もうかと思い始めてるところだよ」
「まぁ、そう言うな。俺たちの目的は強くなることだったろ? 褒賞値もしっかり増えてるし、能力値も上がってる。そこにドロップアイテムまで付いてきてるんだから言うことなしだろ。これ以上ない効率だと思うぞ」
この後、午後一時から午後六時まで適度な休憩を挟みつつ周回をこなし、トータル集会数は八十四回。トータル入手アイテムは『従魔の勾玉』と『ドールコア』をそれぞれ一個。『殺人熊の寝間着』を十二着。
くたくたになって宿に帰り、食堂で延々と枝豆を食べ続けるフィルを眺めながら先に夕食を済ませて部屋へ。
【光球】を使って明るくし、パンツ一枚になって水球と手拭で清拭。風呂があったら入りたいがない。とっとと寝間着に着替えて床に就く。冗談抜きでくたびれた。
肉体的にはそうでもないが、とにかく精神的にきつかった。一度聞いた説明を何度も聞くのは堪えるものだ。
それに宝箱もなかなか出ない。連続で出ないと何か間違ってるんじゃないかと思い始める。出たと思ったら木箱だったり、高級宝箱が出ても、開けてみたら通常ドロップだったり。今日だけで何度溜め息を溢したことか。
もう一つくらいは従魔の勾玉が欲しかった。最初はサクちゃんの分もと思っていただけだったが、あって困る物ではないのでパーティー全員分が取れるまで粘りたい気持ちが出てきている。それだけの価値が従魔の勾玉にはあると思う。
パーティー全員分か……。ヤス君、今頃どうしてるかな……?
そんなことを考えながら、その日は就寝した。
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