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それぞれの成長 パーティー編
22.初めてのダンジョン周回は効率重視でした(3)
しおりを挟む「なんなの、この討伐速度は。ヤス君の戦車より早いじゃないの」
「うん、僕もびっくりした。やっぱり異常だよね、その斧」
「とんでもない物を貰ったな。火力が高いのが手応えで分かる。棒とは大違いだ」
サクちゃん、確かに『託す』とは言われたけど、聞いたの俺だけだし、傍目から見れば置き引きだからね。普通に犯罪だからね。
俺と同じことを考えていたのか、フィルがまた、すんっ、となっていた。なんにせよ大丈夫そうなので、俺たちはパーティーを解除し二手に分かれることにした。
目的は勿論、ドロップアイテムの収集効率を上げる為。フィルとサクちゃんの通常ルート組と、俺とサブロのアトラクションルート組の高速周回だ。
だが、自分で提案しておいて疑問が生じてしまった。俺はそれを口に出す。
「ごめん、二手に分かれるって言ったけどさ、階層主の部屋に他のパーティーが入ってるときって、次のパーティーは入れないよね?」
「ううん、確か大丈夫だったはずだよ。並行して部屋が存在してるって、昔読んだ本に書いてあったし。階層主の数も部屋も一つじゃないんだって」
「なるほど。この扉が各部屋への転移装置みたいになってるってことか」
フィルの知識のお陰で憂いが断たれたので、フィルとサクちゃんが階層主の部屋に入り扉が閉まるのを見届けた後で、俺もサブロを連れて中に入る。
そこからは延々とマーダードールベアの長い説明を聞いてアトラクションルームに入り【浮遊】でクリアという周回作業を繰り返した。俺はマーダードールベアの話を聞く時間込みで一時間に約五回。フィルとサクちゃんもほとんど同じペースで周回を行うことができていた。
昼に一旦休憩を取り、情報を交換。【異空収納】から取り出した器に豚汁を注いで、箸と一緒に渡す。
豚汁と言っても、使っているのはワイルドスタンプの肉。一度湯掻いてしっかり野菜と味噌と煮込めば臭みはほとんど気にならない。味も豚汁そのものになるから不思議。色々と試したがこれが一番適していると思う。
主食は塩むすび。バットにずらっと並べてある。具材を入れない理由は米が美味いから。もっとも、入れたら入れたで美味しいんだろうけど。
ただ、入れたい具材がないんだよなー。
おにぎりと言えばシャケ。もしくはツナマヨか昆布の佃煮。それかワカメご飯。どれもまだ見つけていない。
俺は梅干しが白米に合うとは思えないので、そこは譲れない。梅干しが嫌いな訳ではないけども、サラダとか鶏肉と和えたい。
とはいえ梅干しもまだ見つかっていない。想像したら唾液が出てきた。何処かにあれば良いな。と思う。
サクちゃんもフィルも塩むすびを頬張っては豚汁を啜り、眉根を寄せて幸せそうな息を吐く。そうそう、その顔が見たかった。いっぱいあるから、たんとお食べ。
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