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それぞれの成長 元戦乙女隊編

6.凸凹フィットアドベンチャーと家電系術師(2)

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「おい兄ちゃん!」

 呼ばれて我に返り、顔を向けるとドワーフの鉱夫が三人眉根を寄せて立っていた。どうにも分かりにくいが怒っている訳ではなさそうだ。

「見たところ冒険者だろう? 悪いが中を見てきちゃくんねーか?」

「竜神様が坑道ん中を焼き払ってくれたでよう、魔物は一匹もおらんはずだ。転がっとる魔石やら石やらは持っていってくれて構わんから頼む」

「いや、あの、中を見ろと言われても、何を見てこれば良いのかが分からないんですけど」

「なぁに、奥に行きゃ分かる。さぁ、行った行った!」

「ちょ、ちょっと」

 ドワーフの鉱夫三人に背を押され、坑道の中へ押し込まれる。三人は出入口前で仁王立ちし、手振りで俺に早く行けと急かした。

 まぁ、悪ガキ共を探しに入るつもりだったから良いけども。

 どこか腑に落ちない気分で【光球】を二つ浮かべ【浮遊】と風術推進で坑道内を進む。

 崩落防止の木枠と柱に備え付けられているランプ、壁際に放置されたツルハシやハンマーと小石の詰まったバケツ。中央に敷かれたレールと鉱石を積載中のトロッコ。

 それらすべてが先程の浄化の息吹とやらで焼け焦げ、煤けていたが、それでも完全に破壊されている訳ではなさそうで、ランプもしっかりと機能を果たしている。

 木枠の方も表面が焦げた程度だろう。と、思うことにした。

 崩落するなんて嫌な予感は考えないに限る。とっとと悪ガキ共を見つけて退散しよう。
 
 ある程度進んだが、探知に反応はない。ドワーフの鉱夫が言った通り、魔物は一匹もおらず、鉱石らしき物や魔石が通路に転がっていた。

 持っていって良いって言ってたし、遠慮なく頂いていくか。

 それらを【異空収納】に収めながら進もうとしたが、時間が掛かって仕方がなかった。それで自分に集まるようにするのはどうかと考えた。

 風を利用すればできなくはないはずだ、と安易に考える。イメージは掃除機。駄目元で眉間が痛くなるほど念じた結果、カチリと嵌まる感覚が訪れた。

「マジか⁉ できたぞ⁉」

 俺、大興奮。感覚が消え去る前にすぐに使う。そうしないと習得できない。焦る気持ちを抑えて、手近にあった鉱石に試す。すると手元に飛んできた。

「よっしゃー!」

 嬉しくてたまらなくなってガッツポーズ。もう、どんとこいだ。

 だが、俺は馬鹿だった。このとき、有頂天になっていると自覚していれば、あんな怖ろしい事故は起きなかっただろう。どんとこいと、対象を複数選択して術を使ってみたのだが、選んだ鉱物すべてが全方位から凄まじい速度で飛んできたのである。

「あぶぁはっ⁉」

 防ぎきれずに体に直撃。本当は「危なっ」と言いたかった俺はよく分からない叫びを上げて落下し、真下に落ちていた魔石の上に尻もちをついた。
 
 
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