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明かされる真実編
29.卵が先か鶏が先かという話(2)
しおりを挟む二年前のあの日、というか十二時間ちょっと前。坑道の奥に着いた俺たちは、そこで待っていたイノリンから可愛らしいポージング付きの挨拶を受けた。
「やあ皆! イノリンだよ! 今日も楽しく、インドア系アイドルらしくやってくからよろしくね! 荒らしはお断りだよー!」
「あの、最後にそれ言うと、余計に荒らされる感じがするんすけど」
「え⁉ そうなん⁉ まぁ、ええわ。取り敢えず、行こかー!」
まさか『行こかー!』の後に、突然足元が抜けるとは思っていなかった。
その場にいた全員が、地面に開いた出入口から【箱庭】の中に落とされたのである。
出会って一分で高度四五百メートルからのダイビング強行。ルードとサブロがいなければ、ほとんどが墜落死していたところ。イノリン、とんだサイコパス。
久し振りの言葉遊び。もう随分とやってなかったな、と思う。
どうでもいいな。
さてこのイノリン版【箱庭】、名前こそ同じだがヤス君の【箱庭】とはものが違った。時間の流れが外より早く、六時間で一年が過ぎる。体感二年なのに、ステボの時刻が十二時間ちょいしか経過していないのはそういう訳だ。
規模も段違いで、百倍の広さがある。あとは、殺風景でもない。
真っ白な壁と天井はあるし、一日中明るいが、中には土が敷かれていて、草木が生えている。それに加えて家が数軒建っており、驚いたことに、そのうちの一軒にはリンドウ一家が住んでいた。俺たちを放り込む少し前に、迎え入れられていたとのこと。
少しと言っても、現実世界では三十分前。【箱庭】内部換算だと一ヶ月ほど過ごしていたことになる。その前の日から、イノリンと行動を共にして、色々と話を聞いていたらしい。何を話したかまでは聞いていないが、おそらく、今後のことだろう。
俺たちが地面に着地後、誂えたような和風の邸宅から出て来たリンドウ一家の面々は、素早く移動して俺たちを出迎えてくれた。
サイネちゃんは相変わらず飛びついてきて、ウイナちゃんはサクちゃんに一直線。サツキ君はヤス君のところへ。大人三人は、俺たちの姿を見て微笑んでいた。
その後、紹介をする運びになったのだが、途中でリンドウさんから驚愕の事実が明かされた。なんと、リンドウさんは赤ん坊の頃、嘆きの森に捨てられていたところをイノリンに拾われ、三歳まで育てられていたらしい。関西弁なのはその所為だった。
道理で、リンドウさん以外に関西弁を話す人と会わない訳だ。
「まったく覚えてへんかった。おかん、て呼んだら殺されかけたわ」
「当たり前だろうが!」
スズランさんのツッコミ炸裂。リンドウさんの後頭部が張られるのを見るのは二度目なので俺は大丈夫だったが、ヤス君とサクちゃんは青褪めていた。
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