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13.奇想天外な伯爵夫妻
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青の間でグレッグ達と朝食を済ませ一階に降りたわたくしはお義母様に呼ばれ食堂に向かいました。
今朝のグレッグはスプーンを使ってスープを飲む事もできましたし、初めてのフォークでほうれん草のキッシュを食べることもできました。
得意満面のグレッグは尻尾がブンブン振れているようで、一口サイズのキッシュを準備してくれた料理長には感謝です。勢い余って飛んでいったひよこ豆を見ながら涙を浮かべたグレッグも可愛さ満点でした。
お義母様の方から呼び出されたのですが食事をはじめたばかりのようで、この場合は声がかかるまでドアの近くで待たなくてはなりません。食事をしておられるのはお義母様とお義父様だけで、ステファン様達はまだお休みのようですね。
表情豊かなグレッグとまだ寝足りなくてグズるチェイスを思い出しながらドアの近くに立ち、話がはじまるのを待っておりました。わたくしの何かがお義母様の琴線に触れたようでナイフとフォークが『カシャン』と音を立てました。
「随分とご機嫌のようねえ。昨夜はわたくしの指示を無視して食事にも現れず⋯⋯一体何様のつもりかしら」
無表情を心がけていたつもりでしたが思い出し笑いでもしていたのでしょうか。随分と恥ずかしい顔をしていたと気付いて思わず顔を赤らめてしまいました。
「申し訳ございません。昨夜は子供達の食事に付き合っておりましたら遅くなってしまいました」
こんな時は頭を下げておくのが賢明です。お義母様の顔色からしてかなり寝不足のようですから、暫く大人しくお話を拝聴すれば終わるはずです。
「自分が石女だから子供達に付き纏ってるのかしら?」
「いえ、そのようなつもりはございません」
この状況で『石女』呼ばわりは納得できませんが⋯⋯ 言い返すと長引くので睡眠不足のせいだと思うことにしましょう。
「今日のパーティーではステファンはビビアンをエスコートします。あなたは子供達の乳母として途中で挨拶にいらっしゃい」
「え?」「奥様!!」
目が点です。流石にこれは⋯⋯。
能面執事が顔色を変える貴重な瞬間を目撃してしまいましたが、多分わたくしの顔色も同じように青くなっていると思います。
結婚して以来他家で行われるお茶会や夜会には参加しておりませんが、マーベル伯爵家で行うお茶会や今日のようなパーティーにはステファン様の妻として参加してまいりました。
突然『乳母のリリスティア』ですとご挨拶しましたらお客様の方が戸惑ってしまわれるでしょう。
「まあ、エマーソンったら! 朝から大きな声を出さないでちょうだい」
お義母様こそ朝から寝ぼけないでください。常識や分別をベッドに置き忘れてしまわれたと勘違いしてしまいそうです。
「ステファン様がビビアン様をエスコートされるのであればわたくしは裏方に回りたいと思います。顔を出さずにいれば混乱を避けることができますから」
「ベスの話では子供達は野獣のように無作法だけど、リリスティアには懐いているとか」
「グレッグ達は新しい環境に慣れずにいますが『野獣』と言うのは言い過ぎだと思います」
「それはどうでも良いわ。昨夜いなかったリリスティアは知らないでしょうが、今日のパーティーにフォルスト公爵がお見えになる事になったの。
フォルスト公爵はステファンの上官だったのだけど、ステファンの為にわざわざお祝いに駆けつけてくださるんですって」
フォルスト公爵様のお父様は王弟でいらっしゃいます。そのような高貴な方がお祝いに来られるのであればお義母様達が舞い上が⋯⋯喜んでおられる気持ちも理解できます。
「お忙しい公爵様がわざわざお見えになるなんて流石ステファン様ですね」
「グレッグ達をフォルスト公爵に認めていただいておけば今後の話がしやすくなる。
グレッグ達の身なりを整えておきなさい。我が家の恥にならないようにお客様に礼儀正しく挨拶させるのがリリスティアの仕事だからな」
身なり⋯⋯直ぐに商会に連絡をしてサイズの合う服を持って来させなくちゃと思いますが、そんなことよりも大勢の人の中で礼儀正しくご挨拶なんてできる気がしません。
なんとか個別でご挨拶する方法を考えなくては。
「お見えになられたお客様のお出迎えはどのようになさいますか?」
「ステファンとビビアンがすると言ってるわ。アリシアも協力してくれるから大丈夫」
「パーティーの最中の料理やお飲み物の手配は」
「その程度のことはエマーソンがいれば問題ないわ。リリスティアは子供達を大人しくさせる事と礼儀を叩き込むことに集中しなさい」
とんでもないことになりました。子供達をパーティーに参加させないようお義母様達の考えを誘導するどころではありません。
フォルスト公爵様ってどんな方なのでしょう。ステファン様をお気に召しておられるなら同じ種類の?
急いでお父様に問い合わせしてみましょう。
今朝のグレッグはスプーンを使ってスープを飲む事もできましたし、初めてのフォークでほうれん草のキッシュを食べることもできました。
得意満面のグレッグは尻尾がブンブン振れているようで、一口サイズのキッシュを準備してくれた料理長には感謝です。勢い余って飛んでいったひよこ豆を見ながら涙を浮かべたグレッグも可愛さ満点でした。
お義母様の方から呼び出されたのですが食事をはじめたばかりのようで、この場合は声がかかるまでドアの近くで待たなくてはなりません。食事をしておられるのはお義母様とお義父様だけで、ステファン様達はまだお休みのようですね。
表情豊かなグレッグとまだ寝足りなくてグズるチェイスを思い出しながらドアの近くに立ち、話がはじまるのを待っておりました。わたくしの何かがお義母様の琴線に触れたようでナイフとフォークが『カシャン』と音を立てました。
「随分とご機嫌のようねえ。昨夜はわたくしの指示を無視して食事にも現れず⋯⋯一体何様のつもりかしら」
無表情を心がけていたつもりでしたが思い出し笑いでもしていたのでしょうか。随分と恥ずかしい顔をしていたと気付いて思わず顔を赤らめてしまいました。
「申し訳ございません。昨夜は子供達の食事に付き合っておりましたら遅くなってしまいました」
こんな時は頭を下げておくのが賢明です。お義母様の顔色からしてかなり寝不足のようですから、暫く大人しくお話を拝聴すれば終わるはずです。
「自分が石女だから子供達に付き纏ってるのかしら?」
「いえ、そのようなつもりはございません」
この状況で『石女』呼ばわりは納得できませんが⋯⋯ 言い返すと長引くので睡眠不足のせいだと思うことにしましょう。
「今日のパーティーではステファンはビビアンをエスコートします。あなたは子供達の乳母として途中で挨拶にいらっしゃい」
「え?」「奥様!!」
目が点です。流石にこれは⋯⋯。
能面執事が顔色を変える貴重な瞬間を目撃してしまいましたが、多分わたくしの顔色も同じように青くなっていると思います。
結婚して以来他家で行われるお茶会や夜会には参加しておりませんが、マーベル伯爵家で行うお茶会や今日のようなパーティーにはステファン様の妻として参加してまいりました。
突然『乳母のリリスティア』ですとご挨拶しましたらお客様の方が戸惑ってしまわれるでしょう。
「まあ、エマーソンったら! 朝から大きな声を出さないでちょうだい」
お義母様こそ朝から寝ぼけないでください。常識や分別をベッドに置き忘れてしまわれたと勘違いしてしまいそうです。
「ステファン様がビビアン様をエスコートされるのであればわたくしは裏方に回りたいと思います。顔を出さずにいれば混乱を避けることができますから」
「ベスの話では子供達は野獣のように無作法だけど、リリスティアには懐いているとか」
「グレッグ達は新しい環境に慣れずにいますが『野獣』と言うのは言い過ぎだと思います」
「それはどうでも良いわ。昨夜いなかったリリスティアは知らないでしょうが、今日のパーティーにフォルスト公爵がお見えになる事になったの。
フォルスト公爵はステファンの上官だったのだけど、ステファンの為にわざわざお祝いに駆けつけてくださるんですって」
フォルスト公爵様のお父様は王弟でいらっしゃいます。そのような高貴な方がお祝いに来られるのであればお義母様達が舞い上が⋯⋯喜んでおられる気持ちも理解できます。
「お忙しい公爵様がわざわざお見えになるなんて流石ステファン様ですね」
「グレッグ達をフォルスト公爵に認めていただいておけば今後の話がしやすくなる。
グレッグ達の身なりを整えておきなさい。我が家の恥にならないようにお客様に礼儀正しく挨拶させるのがリリスティアの仕事だからな」
身なり⋯⋯直ぐに商会に連絡をしてサイズの合う服を持って来させなくちゃと思いますが、そんなことよりも大勢の人の中で礼儀正しくご挨拶なんてできる気がしません。
なんとか個別でご挨拶する方法を考えなくては。
「お見えになられたお客様のお出迎えはどのようになさいますか?」
「ステファンとビビアンがすると言ってるわ。アリシアも協力してくれるから大丈夫」
「パーティーの最中の料理やお飲み物の手配は」
「その程度のことはエマーソンがいれば問題ないわ。リリスティアは子供達を大人しくさせる事と礼儀を叩き込むことに集中しなさい」
とんでもないことになりました。子供達をパーティーに参加させないようお義母様達の考えを誘導するどころではありません。
フォルスト公爵様ってどんな方なのでしょう。ステファン様をお気に召しておられるなら同じ種類の?
急いでお父様に問い合わせしてみましょう。
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