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第二部 少年期のはじまり

SS 注文の多い○○……?③

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※2017/11/1 内容を一部変更しました。


・シャイナの場合

 
 ジュディスの望む茶番劇が終わり、次はシャイナの番……ということで、シュリは現在、シャイナ自作のシナリオと共に渡されたランドセルをその背中に背負っている。
 水着にランドセル。何ともシュールな光景である。
 しかしなぜ、ランドセルなのか?
 シュリは小首を傾げてシャイナを見上げる。


 「えっと、何でランドセル??」

 「ランドセルって言うんですか?その背負いカバン。シュリ様は物知りですね。すばらしいと思います!」

 「うん……ありがと。で、何でランドセルを??」

 「あ~、えっとですね?シュリ様の衣装や私達の衣装を手に入れる際に、店主の人に勧められまして。ショタにはこれに限るよって。よくわからなかったんですけど、まあ、おすすめの品なら、と。でも、購入して正解でした。シュリ様、よくお似合いですよ♪」

 「そ、そう……あ、ありがと?」


 ややひきつった表情で疑問形のお礼を言いつつ、シュリは再び心の中で強く思う。
 なにがあっても、その微妙な品ぞろえのアイテム屋には行くまい、と。どんなに日本を恋しいと思う日が来たとしても。

 決意を込めて頷き、シュリは改めて与えられたシナリオに目を落とし、小さくため息をもらした。
 ジュディスのシナリオも厚かったが、シャイナのも厚い。
 更に言えば、ジュディスのものに負けず劣らずマニアックである。

 だが、ジュディスの寸劇におつきあいした以上、シャイナのを断るという選択肢はなく、だったらさっさと終わらせようとシュリはシャイナを見上げて頷いた。

 シャイナの寸劇のテーマ、それはズバリ『お姉ちゃんが大好きな弟と、弟が大好物なお姉ちゃん』である。

 シュリの、はじめるよ?という視線での合図に応えて、シャイナはシュリのお姉ちゃんの仮面をかぶる。
 そしてシュリも、シャイナの弟の仮面をかぶった。お姉ちゃんが大好きで仕方ない、甘えっ子で純情な弟の仮面を、だ。
 場面は、弟の帰宅から。





 「お姉ちゃん、ただいまぁ~」

 「お帰り~、シュリ」


 大きなランドセルを背負ったシュリが帰ってくると、大好きなお姉ちゃんが迎えにでてきてくれた。
 シュリは、お姉ちゃんの姿を見て、にっこりと嬉しそうに笑う。
 シャイナは、そんな可愛らしい弟の頭を撫でて、その身体をぎゅっと抱きしめてほっぺたにキスをした。
 お帰りなさいのキスだ。大好きな姉からの口づけに、顔を真っ赤にするシュリ。
 シャイナはそんな弟を愛おしそうに見つめ、


 「シュリ?」

 「な、なぁに??お姉ちゃん」

 「ほら、シュリからもして??」

 「えっと、なにを??」

 「お姉ちゃんに、ただいまのキス」

 「ただいまの……って、えええっ」


 シュリが思わず驚いて声を上げると、シャイナは不満そうに唇を尖らせる。


 「なによぅ?お姉ちゃんにキスするの、シュリはイヤなの??」

 「そ、そんなことはないけど」

 「いっつも、いっつもキスはお姉ちゃんからで、シュリからはしてくれたこと、ないもんね。そっかぁ。シュリはお姉ちゃんのこと、好きじゃないんだね」

 「ちっ、ちがうよ!!僕、お姉ちゃんのこと、大好きだよ」

 「え~??ほんとにぃ??」

 「ほっ、ほんとだよ。大好きだもん」

 「じゃあ、お姉ちゃんにキスしてくれる??」

 「う……わ、わかったよ。キス、する」

 「やった!じゃあ……はい。ん~~~」


 嬉しそうに破顔したシャイナが唇を突き出す。
 それを見たシュリは首を傾げた。突き出された唇を心底不思議そうに見つめながら。


 「あの、キスって、ほっぺだよね??」

 「ううん。男の子からのキスは、唇にって決まりがあるの」

 「え~?うそだぁ。僕、そんなの聞いたことが無いよ??」

 「聞いたことが無くてもそうなのよ。さ、遠慮はいらないから。ね?」

 「う~、どうしても??」

 「うん♪どうしても」

 「し、しかたないなぁ」


 どうしても引かない姉に、シュリは顔を真っ赤にして唇を近づけていく。
 恥ずかしくて仕方がないけれど、大好きなお姉ちゃんにキスをするんだと思うと、なんだかすごくドキドキした。
 それが、いけないことだとわかっていても。

 もう少しでお姉ちゃんの唇というところで、シュリは目を閉じた。目を閉じたまま、唇を押し当てる。
 お姉ちゃんの唇は思っていたよりずっと柔らかくて、シュリは夢中で自分の唇を押しつけた。
 もっとしっかり、お姉ちゃんの唇の感触を感じたくて。
 だが、その願いはすぐに叶えられる事になる。
 他ならぬ、お姉ちゃんによって。

 ぐいっと強く押し付けられ、深く重なる唇。
 驚いて、思わず頭を引こうとしたシュリの後頭部をやんわりと押しとどめ、シャイナは弟の唇を思う存分味わった。
 少々味わい過ぎではないかと思うほどに。
 そして、やっと唇を解放されたシュリが真っ赤な顔でぼんやりと見上げると、シャイナはそんな弟を見つめて満足そうに目を細めた。
 それから弟の細い身体をぎゅうっと抱きしめて、柔らかい髪を撫で、頬をすり寄せ、その耳元へ唇を寄せる。


 「いい子ね、シュリ。良くできました♪」

 「ん……お姉ちゃん、くすぐったいよ」


 甘い声音が耳元をくすぐり、くすぐったそうに首をすくめた弟の頬を愛おしそうに撫で、シャイナは何かを思いついたように笑みを深めた。


 「ね、シュリ。お風呂入ろっか?お姉ちゃん、汗をかいちゃった♪」

 「汗……?」

 「そ。シュリも、汗、かいちゃったんじゃない?ね、一緒に入ろ?」

 「ん~……うん。いいよ」


 ねだるように見つめられ、どうしようかちょっぴり迷った後、シュリは結局うなずいた。 
 いつだって、お姉ちゃんのおねだりを断れたためしがない。シュリはとにかく、お姉ちゃんには弱々の弟だった。

 るんるんと上機嫌のお姉ちゃんに引きずられるようにして、舞台を風呂場に移動する。
 (といっても、実際の場所は最初から最後まで風呂場なのだが)

 お風呂場に移動したというお約束の下、シュリは水着を引きずり降ろされ、シャイナもいそいそとスク水を脱ぎ捨てた。
 そして、ものすごい勢いでスポンジを泡立てはじめた。嬉しそうに、妙にニヤニヤとしながら。
 泡立ちまくったスポンジを手に、目をキラキラさせて振り向いたシャイナを見て、思わず笑顔を引きつらせるシュリ。
 だが、そんなことは全く気にせず、シャイナ……お姉ちゃんはとにかくぐいぐい押せ押せでシュリに迫って来る。


 「さっ、じゃあ、身体を洗おっか」

 「や、いいよ?じ、自分で洗えるよ??」

 「洗おっか?ほら、座って」

 「あの、だからね?」

 「洗うから!!」

 「ハ、ハイ……」


 有無を言わせないシャイナの迫力に負けて、シュリはちょんとお風呂イスに腰を下ろす。
 それを待っていたかのように即座に当てられたスポンジが優しく背中をこすっていく感触が意外と気持ちよく、シュリは顔がゆるんでいくのを感じた。
 だが、安心して疑似お姉ちゃんのご奉仕を受けていられたのはそこまでだった。

 シュリが、そうなるだろうな~と危惧していた通り、当然のごとくシャイナの泡だらけの手が身体の前の方へ回ってきた。


 「ふふ。お姉ちゃんの手、気持ちいい??」

 「きっ、気持ちいいけど……だめだよ、お姉ちゃん……兄弟で、こんなこと、したら……」

 「んん~?でも、シュリの身体は正直だよ?ほら、ココも固くなってきた。ね、お姉ちゃんの中に入れて……」


 みる?と言おうとした言葉を皆まで言わせず、シュリはJrに延びてきた泡泡の手をぱしっと掴んだ。
 そして、


 「や、固くなってないし、入らないし」


 にっこり良い笑顔で、そろそろおしまいねと微笑む。
 その笑顔に、シャイナはむうっと唇を尖らせた。


 「そこは、嘘でも固くして、私の中につっこんでくれる場面じゃないかと……」

 「いやいや、嘘で固くなるモンでもないし、つっこもうにもつっこめないし」

 「むむ~……シュリ様のいけず……」

 「もう十分つきあったでしょ?シャイナお姉ちゃん?」


 言いながら、さっさとさっき脱がされた水着を履き直すシュリ。
 シャイナはそれを恨めしそうに見つめた。


 「ほら、シャイナも早く水着きて?もう夜も遅いし、後ろもつかえてるんだから。ね?」


 シュリに正論で促され、シャイナは渋々水着をもう一度身につけた。
 不満顔のシャイナに苦笑しながら、シュリは背伸びをしてちゃんと水着を着直した彼女の頭にそっと手を伸ばす。


 「……まあ、機会があったら、また。ね?」

 もちろん、そんな機会はないと助かるなぁと思いながら。
 だがそんなシュリの本音など知らないまま優しい言葉をかけられ、頭を撫でられてなお不機嫌でいることは難しく、シャイナは以外とあっさり機嫌をなおした。
 その様子をみたシュリは再び苦笑をこぼし、さあ、最後はカレンだ、と気合いを入れ直すのだった。

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