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28.ナターシャが話すこと②
しおりを挟むその様子を見て妖精は告げた。
「あれは本物の母、リズリラじゃない。それにシャーロットも妹なんかじゃない」と。
どういうことかナターシャが尋ねると、難しそうな顔をしながらも話してくれた。
妖精は基本的に人間界の事情に関わってはいけない。
ただ妖精姫を愛するだけ。
妖精が人間界のことに関わることで大きな影響力を与えてしまったことがあり、それからは人間の事情には関わらないことにしている。ただひとつの例外を除いて。それが妖精姫なのだ。
妖精の拠り所でもある妖精姫とのつながりを切る事は難しかった。だから妖精姫との関わりは断ってはいない。
しかし人間同士の問題に関しては別だった。だから妖精たちもシャルルたちが来たとき、すぐに異変は感じたが、それでもナターシャに言う事はしなかった。だがそれでナターシャが悲しむのなら黙っていられなかった。だからナターシャに事実を話した。
その話を聞いてナターシャは納得した。
急に変わってしまった大好きだった母の態度。
顔は同じはずなのに雰囲気、話し方、所作まで違うように感じる。
そう、まるで人が変わってしまったようだった。
それが気のせいではなく本当だったなら納得できる。
でもそれなら母は?
妖精に聞いたがわからないという。元々リズリラが養生していた部屋は妖精が近づきにくい部屋だった。匂いなのか、雰囲気なのかわからないが、なぜか妖精が入れなかった。
でもあのリズリラが姿をあらわしてからその部屋の雰囲気が解かれた。そしてその部屋にもうリズリラの匂いは残っていなかった。
ナターシャは一晩中涙を流した。
大好きな母にもう会えない。
妖精の話しが事実ならきっともう母はいないのだろう。
その事実に、耐えられないほどの悲しさが襲ってきた。
どうしてかまではわからない。
それでもきっと父が何かしらの理由を知っている。
一晩中泣いた翌日からナターシャはできる限り普通に過ごした。
あんな仕打ちをするのが母ではなく他人だと思えば、耐えることも難しくはなかった。
妖精と話し、笑い、夜に母を想って泣いた。
だがそんな生活も長くはもたなかった。
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