大東亜戦争を有利に

コバンザメ通信

タヌキとキツネの化かし合い

　コバンザメは静かに新型Ｕボートの腹の下にくっついた。　磁力ではなく（磁力は探知されやすい、それに磁石がくっかない金属も多い。）吸盤だ。　水圧でしっかりくっつく。　離れるときは海水を吸盤に入れればＯＫだ。　ムラサメでは、艦長が「おい、ドイツ語わかるやついるか。」　副官が「水谷一等兵曹、艦橋まで。」と放送する。　しばらくして「水谷兵曹まいりました。」　「うむ、艦橋入り許可する。」　「水谷、艦橋に入ります。」　艦長が「おまえは、ここで、コバンザメから来る通信からドイツ語を翻訳しろ。」　「了解です、通信からドイツ語を翻訳します。」　水谷一等兵曹は席につき、ヘッドフォンをカブル。　コバンザメ受信機で、雑音を排除して（機関音や艦内の雑音を音波フィルターで取り除いてヒトの音声のみにする。）メモることとなる。　「水谷、緊急以外はメモでＯＫだ。」　なおコバンザメからは超音波通信で音声が届く。　欠点は、通信距離に制限があることだ。　まあ、５０キロが限度だ。　また運用時間も２４時間がギリだ。　電池がもたない。　時間が来ると潜水艦から離れて秘密保持のため自爆する。　また人為的なものが加わると自爆するのだ。　自身を破壊するだけだから、小さい爆発だ。　・・・・ドイツ語が聞えてきた。　「まだ、ヤツらには感ずかれていないな。」　「ハイ、駆逐艦には動きはありません。」　「ヤツラ１５ノットでドーバーパトロールです。」　「うむ、最高２5はでるからな。」　「逃がしはしませんよ。」　「感づかれたら、最高４００までいけますからね。」　「イワンからチタンを手に入れたことは大きいからな。」　話の様子から、新型Ｕボートは海中を最高２５ノット、深度４００メートルまでＯＫらしい。　船体はチタン合金か。　イワンとはソ連（ロシア）のことだ。　コバンザメは音声を聞き取るだけの装置だ。　音声を超音波に変換して送ってくる。　海中は電波がほとんど使えないからだ。　「もう少し、近づいてみますか。」　「まて、せっかく長時間の連続潜航ができるのだ、ヤツらに感づかれたくはない。」　どうやら、かなり連続で潜航運用できるようだ。　「できるだけ、写真を撮っておけ。」　「ヤ、ボール。」　ドイツ語で了解のことだ。　・・・・数時間後、ムラサメ艦長が「そろそろ、我がほうが気がつかないと、変にかんぐられるな。」　副官が「では、追い払いますか。」　「うむ、コバンザメは離脱させろ。」　「コバンザメ、離れました。」　「爆発させるなよ。」　「了解です。」　後日、回収して再利用する、省エネの日本海軍だ。　「ムラサメはＵボートを、そろそろ追い払うと空母へ連絡。」　アマテラス改のＣＩＣよりＯＫの連絡が入る。　「取り舵いっぱい。」　「速度４０ノットに上げろ。」　「ヨーソロ。」・・・「おい、感づかれた、急速潜航４００、速度いっぱいだ。」　Ｕボートは深度ギリまで潜って逃げる。　　駆逐艦ムラサメの艦長は得られた情報をアマテラス改へ伝送した。　アマテラス改から衛星通信で、日本の防衛省へ直電だ。　防衛大臣は総理に、総理は緊急閣僚会議（非公開）を召集した。　新型Ｕボートが脅威だ、と総理は判断した。　対策を早急に練らねばヤラれる！　トラの子（空母）をヤラれるワケにはいかない。　非公開会議は衛星でリンクして米国、英国とも同時に話し合いが出来る。　日本は早朝の４時だ。　だが、閣僚で遅れた者はいなかった。　議事の進行は山田総理が取る。　これは、非公開で、得られた情報は極秘とする旨、確認した。　米、英は了承した。　「ドーバーでアマテラス改にＵボートが偵察にきました、新型です。」　「すでに、詳細は衛星回線でお送りしました。」　米、英ともレポートを見る。　「かなりの高性能と思われます、フランス侵攻などの例から独逸帝国は前触れ無く進攻するとおもわれます。」　ガーランド大統領が、「これは、この性能はマジなのか。」　「内より深く潜れるとは。」　ガトー級やイ号より限界深度は深いのだ。　速度も最高２５ノットだ。　それにシュノーケルが駆逐艦から発見できなかった。　音声からシュノーケルで蓄電池に充電しているようだったが。　おそらく、深度４００で空母の真下に潜まれたら、発見は難しいだろう。　ソナーや磁気探知機も無敵ではないのだ。　スパイから魚雷以外の潜水艦兵器の開発の情報が英国に入っていた。　しかし、兵器の内容まではナゾだ。　まだ、米国の鎌倉造船での新型空母は進水もしていないのだ。　あと半年はかかりそうだ。　ドーバーで空母がヤラれたら、間違いなく独逸帝国は英国進攻を決めるだろう。　会議はいたずらに空転した。