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12. それぞれの思惑

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「私が聞いたのは、マーガレット様は国外処か大陸をも出ると仰っていたとか」

 ミリアから聞かされた事は、結構衝撃的だ。
 少なくともアルフォートにとっては。

「た、大陸からも出る?」
 場合によっては2度と会えなくなってしまう。
「マーガレット様は本気で冒険者稼業をするおつもりみたいですわ」
 ミリアの蒼い瞳が妖しく輝いている。
「…、あ、そうだね。だとすると…」
 まただ。頭に霞がかかったみたいで。しかも彼女から漂う甘い香りは?
「まだ、私は婚約者として認めてはいただけませんの、アル❤︎」
「…父上がね」
「嘘、ですわね。アル、陛下はそこまで男爵家の身を慮ってはおりませんわ」
 そろそろ、この理由で結論を先送りするのも無理が生じ始めたか。
 新興貴族であるが故に爵位は低いものの、その財力は下手な伯爵家よりも高いと聞いているし。
「私は、いつだってアルのモノになりたいのですよ。早く奪ってくださいまし」
 寄りかかってくる柔らかな肢体。
 漂う甘い香り。愛おしさを感じて…。

 でも脳裏にはマーガレットと、同じ仕草をする黒目黒髪の異世界の女性~真里。
 彼女が脳裏に浮かぶ度に、頭の中の霞が晴れる感じがする。
 バチっと、その、まるで雷にでも打たれた様な感覚が…。
「今暫く、そう、もう少し時間をくれ、ミリア」

 納得しなさげな、少し拗ねた様子も愛おしく、だから抱きしめて、優しくキスする。

「…アル」
「待っていて欲しい、ミリア」

 再び蒼き瞳が煌めく。
 …ミリア…。

 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

 おかしいわ。
 最近、そう、あの婚約破棄の後から、ミリアの『魅了』が薄れてきている気がする。何度もかけ過ぎたのかしら。
 ボルト男爵家に伝わる『力』。
 お父様は、この力で支持者を、交流を拡げて財をなしてきた。子爵家出身のお母様をも射止め、新たなる貴族家~ボルト家を陞爵なさしめた。

 その次の段階として、私を王太子妃に、国母になさんとあの手この手尽くして下さったのに。

 幸い、王太子殿下とは学園にて近付く事が出来た。この『魅了』は男女問わず味方を作る事が出来たし。
 でもマーガレット様には全く通じなかった。
 あの方には何か耐性があるのでしょうし、私も『魅了』だけでのし上がってきたのではない。
 この学園で嘲られない様、貴族の慣習、徹底的に仕込まれてきたのよ。そう、王太子妃に相応しい教育を受けられる様に!

 此処迄来て。
 一体何がブレーキになっていると言うの?

 私に無くて、あのマーガレットにあるモノって何?高位貴族だから?

 筆頭公爵家って、それが何だと言うの⁉︎

 彼女は国外へ行くつもりって、あの冒険者達は言ってた。
 本当に?何を企むつもり⁉︎ マーガレット‼︎

 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

公爵家令嬢マーガレット達を国外に出す訳には行かぬ。阻止せよ、これは余の命令じゃ。よいな、ニール卿」
「…御意」

 勅命の形を取られては、如何ともし難い。
 許せ、愛娘マーガレットよ。
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