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一章
有頂天から絶望へ…
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「王様からのお使者ですって?」
エリオット様がお姉様との婚約を破棄し、私を婚約者にすると宣言してから五日目。やっと王様の使者が我が屋敷を訪れたと聞き、私は嬉しくて思わず声を上げて立ち上がってしまった。
あの婚約破棄の後、私は直ぐにエリオット様と引き離され、夜会への出席も止められて屋敷に戻るようにと言われてしまった。しかも、連絡があるまでは自宅で謹慎しているように、とのお達し付きで。
せっかくエリオット様と婚約したのだから、お友達にも自慢したいし、エリオット様ともお会いしたかったのに…そう不満を漏らしたら、お父様もお母様も今は大人しくしているべきだと仰ったのだ。どうして?いつも私のやる事を止めたりなんかしないのに…
でもお母様が、エリオット様とお姉様の婚約は王様の命令だったのに、エリオット様が王様に許可を取らずに勝手に婚約を破棄してしまったから、王様がお怒りになっているのだと教えてくれた。
でも、私だってセネット侯爵家の娘なのよ。どっちがエリオット様のお妃様になったっていいんじゃない?むしろ地味で色気もなく真面目だけが取り柄のお姉様よりも、美人で愛嬌がある私の方が絶対にいいのに。
そうは思うのだが、それは王家との取り決めだったからとお母様は難しい事を仰って、王様からの許可が出るまでは大人しくしていなさい、ですって。今回はお父様も何も仰らないし、馬車も勝手に使えない様にされてしまって、私はお忍びで出かける事も禁じられてしまった。
エリオット様も以前は二日と開けずに会いに来てくださったのに、あれからは手紙が一通来たっきり。お手紙には王様と王妃様を説得しているから、メイベルも今は大人しくしてほしいと書いてあった。
そんな中にご使者様がいらっしゃったのだ。きっと自宅謹慎は終わって、これからエリオット様のお妃様として結婚式の準備が始まるんだわ。王族の結婚は最低でも一年の準備期間が設けられると言うし、ドレスやアクセサリーだって最高のものを準備する必要があるから、直ぐにその準備が始まるのね。
「国王陛下からのご伝言です。
セネット侯爵令嬢メイベル嬢には、明日より王子妃教育を命じる。期間は半年。もし半年以内に王子妃教育が終了しなかった場合、エリオット第二王子の王位継承権を剥奪し王族から追放した上で、臣下として結婚を命じる。
以上です。こちらが王子妃教育のスケジュールです」
期待に胸を膨らませていた私は、ご使者様の言葉に目を丸くした。王子妃教育ですって?しかも半年間も。それに…出来なかった場合、エリオット様の王位継承権の剥奪と王族から追放って…冗談よね…?
「あ、明日から…ですか?」
「はい。エリオット様の婚姻は他国にも周知されているので、あまり期間を延ばす事は出来ません。半年内に終了が婚姻の条件です」
「そ、そんな!たった半年で…」
「ご心配は無用です。王子妃教育と言っても、通常の淑女教育が終わっていれば十分に終わる内容ですので」
「そ、それは…でも…」
「出来なかった場合、エリオット様は臣籍降下となります。エリオット様のためにもお励み下さい」
「…」
ご使者様の言葉に、私は何も言えなかった。どうしてって、私は淑女教育を終えていなかったから。だって、勉強もマナーも難しくて面倒くさいだけじゃない?私は可愛いから出来なくても、みんなが許してくれたわ。
「あと、王子妃教育は王妃様が直々にお選びになった講師が付きます。また、各課題終了後の試験も王妃様がご覧になるとの事。これは大変名誉なことです」
「王妃様が…」
ご使者様の言葉は、更に私を絶望へと落とした。王妃様って、あの冷たくてとても厳しいと言われているお方よね。確かエリオット様も苦手で頭が上がらないと仰っていた様な…そのような方が課題の試験を自ら…?そ、そんなの無理に決まっているじゃない!ど、どうしよう…
「あと、教育を受ける態度も王子妃に相応しいかどうかの判断基準となります。ご自重下さい」
「ひぃ!」
ご使者様の言葉は、どうやって誤魔化そうかと考えていた私の心を見透かしているようで、私は小さく悲鳴を上げた。そんな…逃げる事も出来ないなんて…それに…王子妃教育のスケジュールを見て私はもっと驚いた。朝から晩までびっしりで、休憩時間なんて殆どない。しかも、課題が終わらなければ次に進めないし、エリオット様とのお茶の時間も削られるなんて…嘘よ、こんなの、絶対に…ムリ…
エリオット様がお姉様との婚約を破棄し、私を婚約者にすると宣言してから五日目。やっと王様の使者が我が屋敷を訪れたと聞き、私は嬉しくて思わず声を上げて立ち上がってしまった。
あの婚約破棄の後、私は直ぐにエリオット様と引き離され、夜会への出席も止められて屋敷に戻るようにと言われてしまった。しかも、連絡があるまでは自宅で謹慎しているように、とのお達し付きで。
せっかくエリオット様と婚約したのだから、お友達にも自慢したいし、エリオット様ともお会いしたかったのに…そう不満を漏らしたら、お父様もお母様も今は大人しくしているべきだと仰ったのだ。どうして?いつも私のやる事を止めたりなんかしないのに…
でもお母様が、エリオット様とお姉様の婚約は王様の命令だったのに、エリオット様が王様に許可を取らずに勝手に婚約を破棄してしまったから、王様がお怒りになっているのだと教えてくれた。
でも、私だってセネット侯爵家の娘なのよ。どっちがエリオット様のお妃様になったっていいんじゃない?むしろ地味で色気もなく真面目だけが取り柄のお姉様よりも、美人で愛嬌がある私の方が絶対にいいのに。
そうは思うのだが、それは王家との取り決めだったからとお母様は難しい事を仰って、王様からの許可が出るまでは大人しくしていなさい、ですって。今回はお父様も何も仰らないし、馬車も勝手に使えない様にされてしまって、私はお忍びで出かける事も禁じられてしまった。
エリオット様も以前は二日と開けずに会いに来てくださったのに、あれからは手紙が一通来たっきり。お手紙には王様と王妃様を説得しているから、メイベルも今は大人しくしてほしいと書いてあった。
そんな中にご使者様がいらっしゃったのだ。きっと自宅謹慎は終わって、これからエリオット様のお妃様として結婚式の準備が始まるんだわ。王族の結婚は最低でも一年の準備期間が設けられると言うし、ドレスやアクセサリーだって最高のものを準備する必要があるから、直ぐにその準備が始まるのね。
「国王陛下からのご伝言です。
セネット侯爵令嬢メイベル嬢には、明日より王子妃教育を命じる。期間は半年。もし半年以内に王子妃教育が終了しなかった場合、エリオット第二王子の王位継承権を剥奪し王族から追放した上で、臣下として結婚を命じる。
以上です。こちらが王子妃教育のスケジュールです」
期待に胸を膨らませていた私は、ご使者様の言葉に目を丸くした。王子妃教育ですって?しかも半年間も。それに…出来なかった場合、エリオット様の王位継承権の剥奪と王族から追放って…冗談よね…?
「あ、明日から…ですか?」
「はい。エリオット様の婚姻は他国にも周知されているので、あまり期間を延ばす事は出来ません。半年内に終了が婚姻の条件です」
「そ、そんな!たった半年で…」
「ご心配は無用です。王子妃教育と言っても、通常の淑女教育が終わっていれば十分に終わる内容ですので」
「そ、それは…でも…」
「出来なかった場合、エリオット様は臣籍降下となります。エリオット様のためにもお励み下さい」
「…」
ご使者様の言葉に、私は何も言えなかった。どうしてって、私は淑女教育を終えていなかったから。だって、勉強もマナーも難しくて面倒くさいだけじゃない?私は可愛いから出来なくても、みんなが許してくれたわ。
「あと、王子妃教育は王妃様が直々にお選びになった講師が付きます。また、各課題終了後の試験も王妃様がご覧になるとの事。これは大変名誉なことです」
「王妃様が…」
ご使者様の言葉は、更に私を絶望へと落とした。王妃様って、あの冷たくてとても厳しいと言われているお方よね。確かエリオット様も苦手で頭が上がらないと仰っていた様な…そのような方が課題の試験を自ら…?そ、そんなの無理に決まっているじゃない!ど、どうしよう…
「あと、教育を受ける態度も王子妃に相応しいかどうかの判断基準となります。ご自重下さい」
「ひぃ!」
ご使者様の言葉は、どうやって誤魔化そうかと考えていた私の心を見透かしているようで、私は小さく悲鳴を上げた。そんな…逃げる事も出来ないなんて…それに…王子妃教育のスケジュールを見て私はもっと驚いた。朝から晩までびっしりで、休憩時間なんて殆どない。しかも、課題が終わらなければ次に進めないし、エリオット様とのお茶の時間も削られるなんて…嘘よ、こんなの、絶対に…ムリ…
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