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02.夢の中へ
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「ここが、オルター様の夢の中ね……」
私はスキルでオルター様の夢の中に入ってきた。まだ何もない、真っ白な景色だ。
オルター様にはバクの使い魔を送ると言っておいたけれど、実は私自身が夢の中に入り込んで悪夢を食べなきゃいけない。
私が夢の中に入り込むなんて嫌がられるかもしれないと思って、使い魔設定にしておいた。悪夢をもごもご食べている姿を見られるのも嫌だし。
「変身しておかなきゃね」
脳内で鼻の長いバクを想像すると、私の体はすぐその通りに変化する。
夢の中だから、なんでもありなのよね。
ひとたび夢の中に入れば、そこは私の領域。なんでも自由にできちゃうってわけ。
「あ、オルター様がいたわ!」
白かった世界がオルター様に近づくにつれて、おどろおどろしい魔女がいそうな森へと変化する。
その中で大蛇がうごめき、オルター様を丸呑みにしようと大きく口を開けていた。
「た、大変……!!」
夢の中だからオルター様が死ぬことはないけど、精神的な苦痛は計り知れないもの。
「くそ! 悪夢などには負けん!!」
オルター様は夢の中でも勇敢に剣を振りかざして戦っている。
かっこいい!
じゃなくて、早く助けなくちゃ。
悪夢なら、どれだけ戦っても最後にはやられてしまうに違いないんだから。
大蛇が今まさにオルター様を呑み込もうとした瞬間、私は大蛇に食いついた。
「な……バク?!」
オルター様が目を丸めているそばで、私は大蛇を頭からもぐもぐ食べる。
大きいから、食べるのに時間がかかっちゃうかも。今の私はオルター様の半分くらいのサイズだから、余計に。
大きくなれば一口で食べられるけど、それじゃあまたオルター様を驚かしてしまいそうだしね。
私はもぐもぐもぐもぐと、一生懸命に大蛇を口に運んだあと、ごくんと飲み込んだ。
ああ、この景色も悪いわ。もっと幸せな風景にしてあげないと。
森ももぐもぐと食べてしまって、真っ白でなにもない夢にすることができた。
とりあえず悪夢は消し去れたから、期待には応えられたかな。
白いとはいえ、結婚までして『悪夢が消えませんでした』では、悪夢よりも酷い現実になってしまうものね。
「ありがとう。君がミレイの言っていた、使い魔のバクか?」
夢の中でもやっぱりオルター様は男前。うっとりしちゃう。
「そうでばく。わた……ぼくはミレイの使い魔のバクでばく」
私だとバレないように一人称と語尾を変えてみたけど、不自然じゃなかったかしら?
「ははっ、かわいいな。ありがとう、助かったよ」
オルター様が私の頭を撫でてくれる。
ひゃあ、胸がバクバクしちゃうわ!
嬉しそうなお顔を見られて、私も嬉しい。もっと喜ばせたい。
「夢の中なら、ぼくのイメージできるものならなんでもできるばく。どんな夢を見たいのでばく?」
「そうだな……心の落ち着ける湖畔で、のんびりと猫でも撫でて過ごしたいな」
「湖畔で、猫でばくね。任せるばく!」
私は大きく頷くと、湖畔が煌めく、穏やかな明るい自然をイメージする。
瞬く間に周りの景色は変わり、思い通りの湖畔が目の前に現れた。
柔らかな風を流れさせ、草花をよそがせて、小鳥たちには自由に空を飛び回ってもらう。
「すごいのだな……バクの力というのは……」
「あとは、猫でばくね。変身するでばく」
小さな白猫に変身して見せると、オルター様は目を丸くして私を抱き上げた。
「すごいな、変身できるのか」
「植物や無機物は無理でばくが、生き物でぼくの知っているものなら変身できるでばくよ」
「そうか。できれば、猫の鳴き声も聞きたいのだが」
「あ、そうでばくね。にゃあ、にゃあん。これでいいばくか?」
「ははは、それで良い!」
わぁ、オルター様が大きな口を開けて笑ってくれた。
「こんなに幸せで楽しい夢は久しぶりだ。ありがとう」
オルター様が私を抱き上げて……頬にキス?!
きゃあ!! 猫だと思っているからしたんでしょうけど……!
「ふわふわして、気持ちいいな」
頬擦りを止めてくれない……!
今にも唇と唇が当たりそうで……でも私は猫だから、気にしちゃいけないのよ……!
私はずっとオルター様に頬擦りをされて……そして、しばらくすると世界が消えた。
オルター様が目を覚ましたんだ。私も起きなくちゃ。
私はスキルでオルター様の夢の中に入ってきた。まだ何もない、真っ白な景色だ。
オルター様にはバクの使い魔を送ると言っておいたけれど、実は私自身が夢の中に入り込んで悪夢を食べなきゃいけない。
私が夢の中に入り込むなんて嫌がられるかもしれないと思って、使い魔設定にしておいた。悪夢をもごもご食べている姿を見られるのも嫌だし。
「変身しておかなきゃね」
脳内で鼻の長いバクを想像すると、私の体はすぐその通りに変化する。
夢の中だから、なんでもありなのよね。
ひとたび夢の中に入れば、そこは私の領域。なんでも自由にできちゃうってわけ。
「あ、オルター様がいたわ!」
白かった世界がオルター様に近づくにつれて、おどろおどろしい魔女がいそうな森へと変化する。
その中で大蛇がうごめき、オルター様を丸呑みにしようと大きく口を開けていた。
「た、大変……!!」
夢の中だからオルター様が死ぬことはないけど、精神的な苦痛は計り知れないもの。
「くそ! 悪夢などには負けん!!」
オルター様は夢の中でも勇敢に剣を振りかざして戦っている。
かっこいい!
じゃなくて、早く助けなくちゃ。
悪夢なら、どれだけ戦っても最後にはやられてしまうに違いないんだから。
大蛇が今まさにオルター様を呑み込もうとした瞬間、私は大蛇に食いついた。
「な……バク?!」
オルター様が目を丸めているそばで、私は大蛇を頭からもぐもぐ食べる。
大きいから、食べるのに時間がかかっちゃうかも。今の私はオルター様の半分くらいのサイズだから、余計に。
大きくなれば一口で食べられるけど、それじゃあまたオルター様を驚かしてしまいそうだしね。
私はもぐもぐもぐもぐと、一生懸命に大蛇を口に運んだあと、ごくんと飲み込んだ。
ああ、この景色も悪いわ。もっと幸せな風景にしてあげないと。
森ももぐもぐと食べてしまって、真っ白でなにもない夢にすることができた。
とりあえず悪夢は消し去れたから、期待には応えられたかな。
白いとはいえ、結婚までして『悪夢が消えませんでした』では、悪夢よりも酷い現実になってしまうものね。
「ありがとう。君がミレイの言っていた、使い魔のバクか?」
夢の中でもやっぱりオルター様は男前。うっとりしちゃう。
「そうでばく。わた……ぼくはミレイの使い魔のバクでばく」
私だとバレないように一人称と語尾を変えてみたけど、不自然じゃなかったかしら?
「ははっ、かわいいな。ありがとう、助かったよ」
オルター様が私の頭を撫でてくれる。
ひゃあ、胸がバクバクしちゃうわ!
嬉しそうなお顔を見られて、私も嬉しい。もっと喜ばせたい。
「夢の中なら、ぼくのイメージできるものならなんでもできるばく。どんな夢を見たいのでばく?」
「そうだな……心の落ち着ける湖畔で、のんびりと猫でも撫でて過ごしたいな」
「湖畔で、猫でばくね。任せるばく!」
私は大きく頷くと、湖畔が煌めく、穏やかな明るい自然をイメージする。
瞬く間に周りの景色は変わり、思い通りの湖畔が目の前に現れた。
柔らかな風を流れさせ、草花をよそがせて、小鳥たちには自由に空を飛び回ってもらう。
「すごいのだな……バクの力というのは……」
「あとは、猫でばくね。変身するでばく」
小さな白猫に変身して見せると、オルター様は目を丸くして私を抱き上げた。
「すごいな、変身できるのか」
「植物や無機物は無理でばくが、生き物でぼくの知っているものなら変身できるでばくよ」
「そうか。できれば、猫の鳴き声も聞きたいのだが」
「あ、そうでばくね。にゃあ、にゃあん。これでいいばくか?」
「ははは、それで良い!」
わぁ、オルター様が大きな口を開けて笑ってくれた。
「こんなに幸せで楽しい夢は久しぶりだ。ありがとう」
オルター様が私を抱き上げて……頬にキス?!
きゃあ!! 猫だと思っているからしたんでしょうけど……!
「ふわふわして、気持ちいいな」
頬擦りを止めてくれない……!
今にも唇と唇が当たりそうで……でも私は猫だから、気にしちゃいけないのよ……!
私はずっとオルター様に頬擦りをされて……そして、しばらくすると世界が消えた。
オルター様が目を覚ましたんだ。私も起きなくちゃ。
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