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第五章 姫達の郷帰りと今代の勇者達
#21 リオ迎撃?
しおりを挟む「おー、空から見るとこんなんなんだな、アタイらの国って」
「なんか森の左側はよく見ると所々穴っぽくなってるな。あれが街みたいなものか?」
「せや。どこの獣人も領主の館を中心にして周りに街を造っとるんよ」
「そうなんだ。で、シータ達の領地はどの辺?ここから見て分かる?」
「んー…ここからやと右半分はフラムのエルフの国で左半分が獣人の国やから…ウチんとこは確か国全体の中心に近い方やったはず…。やとすると、あの辺かなぁ」
相当な標高の山々が連なる竜背連峰も半ばを越えて見えてきた、これまた相当な広さの樹海をリオの背から眺めてると、樹海の左側の方に点々と拓けた─空から見ると穴が空いてるように見える─場所が疎らにある。
シータに確認したら、どうやらその点々としてる所が各獣人種族の街ということだった。
その中で、じゃあシータの狐人族はどの点なんだと聞いたみたら、左半分の中心に近い点がそうなんじゃないかと…まぁ、空から見るのは初めてなんだし、おおよその当たりくらいしか付けられないよな。
その点から割と近くに3つ程点があって、シータの示した点が当たってるなら、恐らくそこがアーネ、マール、ラナの領地なんだろう。
確か皆隣接してるって言ってたし。
「遂に来たっ!モフモフパラダイスにっ!んで、モリーんとこはどこだよっ?」
「シータが指した辺りよっ。アタシのとこはラナの隣だしっ」
「あー、そりゃまた賑やかそうで」
「みんな相変わらずなのかなぁ…」
「そこが変わるわけないでしょっ、昔っからそうなんだからっ」
樹海へ近付くにつれて弘史のテンションが上がってきてる。
そうですね、お前の大好きなケモミミっ娘が沢山いらっしゃるでしょうから。
俺の周りには最初から居たんだよなぁ、狐に虎に兎に犬、そして後から来た狸…は一緒に住んでるだけですけど、今はまだ。
そして狼と鴉、と。
まぁコイツらは想定外もいいところだけど、最早獣人って言っていいよな…種族的にどうなってるのか後でちゃんと確認しとこう。
モリーとラナの所も隣接してるみたいで、それは確かに賑やかそうだと思った。
昔っからの犬猿らしい…けど、モリーとラナは犬猿って程でもないよな、モリーの一方的なライバル視みたいだし。
他の犬人族と猿人族の人達がどうなのか分からないから何とも言えないけど、何となく昔っからそうだから引っ込みがつかなくなってるとか、そんな感じもする。
その辺は行ってみたら分かるかな?全体の雰囲気とかで。
「………どこ、に……降りれ、ば……いい…?………」
「やっぱりぃ~、事情を知ってるぅラーちゃんのぉ所かなぁ~?」
「ま、多分もうアタイらの親も知ってるんだろうけどな」
「もしかしたらみんなロゼはんのとこにいるかもしれへんで?」
「あり得そう、それ…」
「んじゃラナんとこでいいか。こっからじゃまだ分かんねぇから…ちょい左に向かってくれ、リオ」
「……うん………分、かった…………」
どうやらラナの所、犬人族の領地へまず行くことに決めたみたいだ。
ガズのおっさんから話はいってるし、取っ掛かりとしては無難なところか。
アーネがリオにさっきシータが当たりを付けた点へ向かうよう指示して、リオがそっちに軌道修正して進む。
「このまま…リオがドラゴンのまま直接行っても大丈夫か?」
「えっと…多分大丈夫かな、と。それに街の広場とかじゃないとリオが降りられないですし」
確かにそこ以外は木々で埋め尽くされてるから、無理に降りるなら木々を薙ぎ倒さなきゃだし、直接行かないとなると樹海の端から歩いて向かうしかない。
この樹海を歩いて行くとか、いくら姫達の国で道案内出来るとかいってもかなり大変そうだ。
「そっか…みんなをびっくりさせちゃうかもだけど、仕方無いか」
「大丈夫だろ。あー、けど、そー考えるとアタイのとこじゃダメだったな」
「なんで?」
「ドラゴンだろうがいきなり突っ掛かってくるやつらばっかだし。特にオヤジとオフクロ」
「あー、うん、それもあり得そうね…」
「けどぉ~、みんなぁロゼさんのぉ所にぃいたらぁ~、変わらないんじゃぁ~…」
「さすがに他の領地じゃやらんやろ…多分……。いや、でも、イーナはんやしなぁ……」
どんだけ血気盛んなんだ、イーナさん。
ちょっと会うの怖くなってきた…。
アーネの母親だからなぁ…「アタイの娘に相応しいか見極めてやらぁ!」とか言いながらいきなり俺にも突っ掛かってきそうで。
そしてアーネも、「おいナオトっ、遠慮はいらねぇっ、ヤッちまえっ!」とかいう台詞をすっ飛ばしてくるのが容易に想像出来てしまう…。
元の世界じゃ滅多に無いと思われる、お義母さんからの身体的力量測定…魔物の脅威が身近にあるこの世界だからなのかもしれないけど、それでも流石にお義父さんならまだしもお義母さんからとか、ちょっとどうしたらいいか困る。
そうならないことを祈りたい…けど、皆のイーナさん像を聞いてたら無理そうな気もするなぁ…。
「モリー、んなワケだからラナんとこで降りるけどいいよな?」
「しょうがないわね…こっちは乗せてもらってるわけだしっ。そこから歩いて行くわよっ」
「ラナちゃんの故郷かぁ…さぞかし可愛いイヌミミっ娘ちゃん達がいっぱいいるんだろうなぁ…。やっべ、チョー楽しみだっ!」
そういやコイツ、最初ラナにご執心だったんだよな…まぁ、シータ達にもだったみたいだけど、受付嬢やってたラナに一番絡んでたんだろう、多分。
犬人族の所になんか行ったら速攻で誰彼構わず絡んでいきそうなんだけど。
「…なぁ、これ先にモリーの所へ降ろした方がいいんじゃないか?」
「わ、私もなな、何となく、そ、それがいいようなき、気がしてま、す…」
「トモミに同感だな。また暴走でもしたら厄介だ…」
「何でだよっ!俺の楽しみを奪わないでくれって!」
「だったら暴走しないって誓えるか?」
「ぐっ…ど、努力する…」
何とも頼りない返事を寄越す弘史。
自覚があるだけまだマシになったか、最初の頃に比べると。
イケイケモードはこっちの世界じゃ通用しないって理解はしてるみたいだけど、嬉しくてはしゃぐのは抑えられないかもってところか。
気持ちは分かる、俺もこっちに来て姫達と一緒に居るようになってから、ケモミミとか尻尾とか大好きになっちゃったもんな…。
触るともう最高だし、何より皆のあの気持ち良さそうな顔と反応が堪らなくいいんだよなぁ。
「大分落ち着いた気ぃしたけど、あんまし変わっとらんなぁ」
「おいヒロシ、お前にはもうモリーがいんだからそれで我慢しろ」
「アーネっ!それって何よっそれって!うっきーっ!」
「はいはい、ヒロシさんもそうだけどモリーもおとなしくしててよ?」
「ラナまで何さっ!」
「だってあなた、わたしといると周りに誰がいようが騒ぎまくるじゃない」
「そっ、それは…しょうがないでしょっ!そこにラナがいるんだからっ!」
なんだその、そこに山があるからみたいな言い方…。
ラナさえ居れば周りを顧みず突っ掛かっていくのかモリーは。
そりゃ身内の前とかでやられるとうんざりしちゃうのも分かるな。
他の人、ラナの両親や兄姉は猿人族のモリーのことどう思ってるんだろう?
そこら辺も行ってみたら分かるか。
「……大分…近付い、て……きた……よ………」
「おー、やっぱ速ぇな。どれ、ラナんとこは、と…」
「あそこね。リオ、あの辺で塔が建ってるとこ分かる?」
「……分、かる……。……あそ、こ…が……ラナ、の…とこ……?………」
「うん、そう。あそこまで行って広い場所に降りてもらえる?」
「……了、解………」
リオが順調に飛んで眼下の点がかなりはっきりと見えてきたところで、ラナが目的地である犬人族の街の目印を教える。
犬人族の街には塔が建ってるらしく、目印にするにはお誂え向きだった。
いよいよ到着か…リオに乗ってからは早かったな、やっぱり。
「もう着いちゃうんだね…リオのおかげで」
「ほんまリオには感謝やな」
「わ、私もこ、こんな体験、さ、させてもらっちゃって…。ほ、本当にああ、ありが、とう…リオちゃん」
「私もだな。同胞に自慢したいくらいだ」
うん、本当にリオには感謝しかない。
こんな素敵な旅をプレゼントしてもらって、俺は何を返せばいいんだろう。
魔力補充は当然として、他に何かあるかな…ちゃんと考えとこう。
また乗せてもらおうと思ってるし、しっかりお返ししないと、な。
「さぁて、とりあえず着いたらあれだ、アタイがオフクロを超えたってのを証明しねぇとな」
「帰ってぇ最初にぃすることがぁ~それなのぉ~?アーちゃんはぁ…」
「相っ変わらず脳筋ねっ、アーネはっ」
「うっせー、アタイはこれでいいんだよっ」
アーネさんや、その前に俺をちゃんと紹介してくれませんかね。
いや、でもあれか?紹介されるとさっき思ってた展開になっちゃうのか?
だったらまずアーネの好きなようにしてもらった方が…って、違う違う、ちゃんと挨拶しに来たんだからどういう展開になろうとまずは俺からだろう。
とりあえずあれだな、着いたらまずアーネを押さえ付けよう、うん、そうしよう。
と、着いた時の行動方針を固めた所でリオが高度を下げ着陸態勢に入る。
丁度いい感じの広場があって、これならリオが降りても大丈夫だろう、なんて思ってたら、その広場に二人程走り込んでくる人影がここからでも見えた。
リオが速度を落とし、広場真上で滞空して徐々に地面へ降りて行く途中ではもうはっきりと見えて、走り込んできた二人は迎撃態勢を取って待ち構えている模様です。
あ、これ真っ先にアーネ降ろさないとダメかも…。
応援ありがとうございます!
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