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『ヴィランという存在』⑧

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『ヴィランという存在』⑧
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「つまり、ただの内輪揉めってこと?」

「身も蓋もなくまとめやがって」

「でも、間違ってる?」

「……いや、その通りだな」

 彼らは異星人、宇宙人って奴らしい。

 なるほど、驚きだ。
 だが、全くの想定外かって言われるとそういう訳でもない。
 ただ、その説が正しかったのかってだけだ。

 ついさっき、この街に来るまでに見つけた魔法少女やらマスコットなんて存在に違和感を覚えていた人々。
 そのコミュニティーとなっていたアングラな匿名掲示板。
 そこで交わされていた議論とはとても呼べないレベル、自分の妄想発表会にしかなっていない文字の羅列の中にそんな様な言葉があった。

 彼らの正体に関してはいくつか有力な仮説があるらしい。
 マスコットや魔法少女たちが言ってるような人の悪意の塊なんて話、信じてるのは頭お花畑の連中だけみたいだった。
 まぁ、僕もその頭お花畑な連中の中の1人だったんだけど。

 悪魔か、
 魔族か、
 異世界人か、
 宇宙人か、

 僕が見た場所ではそこら辺が有力視されていた。
 さっき見た時はそんなの創作の世界の話だろとしか思えなくて詳しく見る気になれなかったが、上の世代は突然魔法少女やヴィランなんて空想上の存在が現実になった時代を生きてきたんだ。
 常識は否定する材料にはならなかったのだろう。

 実際、ヴィランからも異星人なんて言葉が出てきた訳で。
 鵜呑みにするわけではないが、その僕が妄想の産物としか思えなかった説は正しい可能性が結構高い訳だ。
 自分の常識なんてまるで当てにならない。

 それで言えば悪意という説明も否定する材料はないわけだが、マスコットを信じないのならそれが言ってる言葉というだけで信憑性が落ちるという話だ。
 マスコットを信じるのなら疑問の余地なく悪意で決まりだ。
 あの場所はそうで無い人間ばかりが集まっていたのだから、理由は無くとも否定されなければならないという感情だけでその説は排除されていた。

 それでだ、そんな宇宙人がなぜわざわざ地球なんかにやってきたのかと言えば……
 ゴールドラッシュ、かな?
 その言葉が一番しっくりくる。

 アメリカのカルフォニア州。
 始まりは、とある大工が川で金を見つけたというものだった。
 その知らせはあっという間に各地に広がる。
 そして、世界中から数十万人もの人が金を求めてアメリカへ渡った。

 同じ様なことが宇宙人の間で起こったという事だ。
 ただ、ゴールドラッシュほどは広まらなかった。
 何処かが情報を遮断し、その資源を、地球という星を、独占しようとしたから。

 それをやったのがマスコット。
 僕らを魔法少女にした存在。
 そこのトップがやった、とヴィランは考えてるらしい。

 そして、広まらなかったと言っても同じ宇宙人同士。
 地球ほど情報を統制出来る訳でもない。
 それに地球は元々流刑地の一つであり、たまに犯罪者が送られてくる場所でもあった。

 その情報を手にいれ地球までやって来た者。
 もしくは、地球にたまたま送られた犯罪者。
 それが、ヴィランという訳だ。

 昔から世界中に存在した妖怪やらUMAの伝承。
 その一部もヴィランの仕業という可能性も高いのだろうか?
 随分と勝手な話だ。

 そして、資源の存在を知っているかどうかに関わらずヴィランの存在はマスコットにとって邪魔でしかない。
 ただ、大量の兵隊を送り込んで他勢力に目をつけられても困る。
 だからマスコットは正義を歌って現地人を味方につけ、その上で現地人を魔法少女なんて兵隊に仕立て上げることにした、と。

 地球の資源を巡っての、宇宙人同士の小競り合い。
 それが、魔法少女とヴィランの戦闘の正体。

 ……ヴィランの話を信じるなら、そういう事らしい。

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