悪役令嬢のafter story〜王子に婚約破棄されて公爵家からも勘当された少女は好きに生きていく事にしました〜

※外伝1以降、現在推敲中

外伝14

外伝14　闇ギルドの頭領　後編
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

　後片付け、後片付けか。
　現状を誤魔化すようにと指示だけ出して、あの女はどこかに消えた。
　……これを片付けるのか。

　ま、頻繁に衛兵が見回りに来るわけでもない。
　多分大丈夫だろ。

　ただ、俺は終わったな。
　生き残っただけだ。
　仮に女の魔の手から逃れても、俺について来る奴は少ないだろう。

　やり直したとて、他の闇ギルドに吸収されるのがオチだ。
　もう最大派閥率いて我が者顔で歩けたスラムはないのだ。
　考えてても仕方ないか。

　とりあえず行動しよう。
　美化にはどう誤魔化したものか。
　幸い現状を正しく認識してる奴はほぼいない。

　ほとんど殺されたのだから。
　知ってるのはそこに倒れてるやつぐらい。
　ただの誤魔化しでも、いったんこいつは隔離だな。

　後は、

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「やあ」

「！？　誰だ」

　突然、背後から声をかけられた。
　振り返るとローブをきた人物がいた。
　誰だ？

　まさか、もう他の闇ギルドから刺客でも送られてきたのか。
　俺が立て直す前に殺してしまおうと、そういう。
　それもいいかもしれない。

　色々考えたが、どうせ先なんてないんだし。
　やり直す手立てもない。
　ならこのまま殺されて、楽に……

「じゃん、私でした！」

「……っ、あんたか」

　例の女だった。
　そんな俺を嘲笑うように。
　別に、そんな気もないのだろうけど。

　だが、何しにきたんだ。
　少しでも早くスラムを出たいって感じだったのに。

「しばらくはスラムに来る気はないって言ってなかったか？」

「そうなんだけど、ちょっと話があって戻ってきたんだよ」

「話？」

「悪い話じゃないと思うよ」

　嫌な予感しかしない。
　でも、断る事はできない。

　これまでの人生、こんなふうに話しかけられていい話だった試しがない。
　相手も相手だし。
　俺はなぜこんなにも不幸なのだろうか。

「配下についてもらうって話したでしょ」

「ああ、」

「あれ、納得してた？」

「チッ、俺にそれ以外の選択肢が無いことぐらい理解してる」

「ボスに戻れるって言ったら、どうする？」

「……」

　戻れる？
　ボスに？
　不可能だ。

　咄嗟にそう思った。
　でも、話を聞いてちょっと考えが変わった。
　それならいけるかもしれない。

　俺が上手いことやってこの女を用心棒に、ね。
　実際に用心棒として動かす事は不可能で、名前がしみたいのもの。
　それでも、他の闇ギルドも迂闊には手をせないか。

　部下の離反も最低限に抑えられる。
　ギルドの維持は可能か。

　ただ……、

「いくら吸い取られるのか、怖いったらありゃしないな」

「捕まりたくないし、長いをする気はないよ」

「どうだか、あんたからは裏社会の匂いがする」

「それは気のせい」

　気のせいね。
　普通の人間は躊躇いもなく人を殺したりは出来ない。
　その時点で……

「そもそも、お前に選択肢はない」

「だから、そういうところがこっち側の匂いがするって話だ。……生娘の癖に」

「何か言った？」

「いや、なんでも」

　まぁ、自覚はないのか。
　それはいい事なのかもしれない。
　裏社会を占めるとか言い出したら、本当に出来てしまいそうだから。

　御伽話に存在するような魔王。
　こんな存在なんだろうな。

「じゃあ、俺が配下に収めたことにしていいんだな」

「もちろん」

「それで、事情を知ってる奴は？」

「そっちで判断しな。自分の部下だろ」

「そりゃそうだ」

　地位も名誉も興味はない、のか。
　元公爵令嬢ってことは元々持ってただろうし、執着がないのかもしれない。
　叩き上げの俺みたいなのと違って。

　ありがたいことだ。
　金は搾り取られるかもしれない。
　でも、他はくれるって事だろ？

　事情を知ってる奴ら。
　……殺すか。
　そんなの、邪魔でしかない。

　ただ、幸いほとんどがこの女に殺されてる。

　生き残り。
　確か、あの時女に拘束されてたやつが居た記憶がある。
　残ってるのも混乱を避けるために地下に集めた。

　俺は案外運を持ってるのかもしれない。
　上手くやればスラムを統一することも。
　いや、それ以上にだってなれる

　そうすれば、俺は……

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【第一章外伝】ー完ー