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二章 外伝

外伝10

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外伝10 とある奴隷③
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 新しい主人に連れられ、スラムを歩く。

 ゾロゾロと。
 ローブを深く被った人間を先頭に奴隷が5人ほど。
 異様な光景だろう。

 久しぶりの外。
 太陽ってのはこんなにも眩しいものだっただろうか?

 ここはスラム街だ。
 だというのに、空気が澄んでいるような気すらしてくる。
 牢屋から出てたというだけでこれほど気持ちがいいとは。

 実情は変わっていない。
 俺は奴隷のままだ。
 それでも、幸福を心の底から感じている。

 しかし、周囲を見渡す。
 スラム街の雰囲気、それが以前来た時とは様変わりしているような気がする。

 別に、普段から用があって来ていたわけではない。
 足を踏み入れたのなんて、借金をしに来た時と借りていた金を返そうとしてそのまま奴隷にされた時の2回だけ。
 あとはずっと牢屋の中だったので、これが普段のスラム街だと言われればそれまでだ。

 だが、どうにも違和感を感じる。
 それが久しぶりに外に出て強烈に感じた、偽りざるものであった。

 もともと、活気なんて物とは無縁の街ではあったのだ。
 ただ、ここまで死臭が濃い場所でも無かったはず。
 人々の視線が、空気が、やけに重いように感じるのだ。

 スラム街っていのは、別に犯罪者の巣窟ではない。
 もちろんその面が無いとは言わないが。
 住人のほとんどは、社会から弾き出された弱者の集団なのだ。

 彼らに、怯えの様なものが見える。
 特定の何かにではない。
 それならばあそこまで恐怖していてそこに止まっているわけない。

 見えない何か。
 正体のわからない何かに怯えているのだ。

 やはり、何かあったのだろうな。
 昨日、やけに騒がしかった牢屋の外側。
 様変わりしたスラム街。

 ご主人に怯えが見えないのは、きっと外の人間だからだろう。
 スラムの人間は奴隷を売る事はあっても買う事はない。

 そんな余裕があるのなら、よほどの事情を除けば外に行ってしまうだろうし。
 その事情がある人間は闇ギルドには近づかないだろう。
 仲間なら奴隷なんて買うまでもないし、他組織ならそんなリスクを犯すはずがない。

 ご主人に買われて都合が良かった。
 いや、あのままではどのみち死んでいただろうし選択肢がある立場ではないのだが。
 街の人々が怯える何かから逃げることが出来る。

 それに、闇ギルドの人間がご主人をやけに丁重に扱っていた。
 相手はまだ子供だ。
 ギルドの人間も少年でおそらくは下っ端であろうが、それでもだ。

 表か裏かは知らないが、相当の権力者の子供と見た。
 どう使われるのかは不明だが。
 以前の扱いより悪いって事はないだろう。

「あ、ボスじゃん」

 すれ違った誰かに声をかけた。
 ……ボス?
 この子の上司って事か。

 言い方的には裏社会の人間。
 スラムであったってのはそういうことだろう。
 クリーンな人が良かったな。

 それは贅沢か。

 予想が外れた。
 まぁ、ちょっと願望込みの予想だったし仕方がない。
 ただ、この人どこかで見たことがあるような。

 ちょっと、思い出せない。
 しかし、俺が見たことあるようなスラムでの権力者なんてほぼ居ない様な気が……

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