押しかけ淫魔とサラリーマン

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第15話

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 亮介とゼノが初めてルイセルに出会ってからちょうど一週間。
 カフェへ向かう車内はもちろん、ルイセルの話で持ち切りだった。

「首輪どんなのがいいかな。かっけえやつがいいな!」
「そうか? あんまり厳ついのは似合わないだろ」

 この七日間、二人はたくさん話し合って、ルイセルを迎え入れるための準備を整えてきた。
 しかし、だからこそ気がかりなこともある。

「はあ……」
「どうしたんだよ?」

 亮介がため息をこぼすと、助手席に座るゼノが不思議そうに尋ねる。

「これでルイセルがいなかったら立ち直れんぞ、俺は」

 ここまで真剣に考えてしまった以上、いざ現地に着いてルイセルがいなくなっていたら、正直なところかなりショックだろう。
 里親が見つかるのはめでたいことだが、やはりできることなら自分たちが、というのがこの一週間のあいだに芽生えた本音だった。

「大丈夫だって! 心配性だな~、亮介は」
「だって、あんなに可愛いんだぞ? 心配にもなるさ」

 あれから七日も経ったのだ。カフェを訪れた客の中に、ルイセルのことを気に入る人がいたって何もおかしくはない。
 亮介は期待と少しの不安を胸に車を走らせた。
 亮介たちが店へ着くと、先週ルイセルについて話をしたのと同じ女性のスタッフが明るく出迎えてくれる。

「お待ちしてました! ルイセルのお迎えですよね?」

 覚えられていたことを少し照れくさく思いながら頷く。
 すると、スタッフは一匹の犬を抱いて二人の元まで連れてきてくれた。ルイセルだ。

「ルイセル……! よかった……」

 ほっと安堵のため息をつく。
 亮介が名前を呼んだことに反応したのか、ルイセルのつぶらな瞳がこちらを捉えた。

「元気にしてたか~? 今日は一緒に帰れるからな!」

 ゼノが笑いかけると、ルイセルはまるで言葉が分かっているかのように尻尾を振って喜ぶ。

「ルイセルもきっと、お二人のことを待ってたんだと思います」
「待ってた?」

 譲渡に必要な書類を広げながら、スタッフがふとそんなことを口にする。
 なんでもルイセルのように若い犬は保護犬の中でも特に人気が高く、早ければ二日や三日で新しい家族が見つかるらしい。
 それに加えてルイセルはこれといった疾患もないため、本来ならばすぐに里親希望者が現れるはずなのだとスタッフが話した。

「だけどルイセルは全然いなくならないから、『あの人たちを待ってるんだね』って、ほかのスタッフとも話してたんですよ。だから、迎えに来てくださってよかったです」

 そう言ってスタッフが微笑むのを見ると、運命というのもあながち間違いではないかもしれない、なんて自惚れた気持ちになってしまう。

「オレらのこと待ってたのか~? 偉いなあ、ルイセル!」

 ゼノがわしゃわしゃとルイセルの頭を撫でる。雑な手つきだがルイセルはちっとも嫌がる素振りを見せず、むしろ気持ちよさそうにそれを受け入れた。
 それからすべての手続きを終えた亮介とゼノは、ルイセルという新しい家族を連れて家までの帰途についたのだった。
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