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第16話
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ルイセルを引き取ってからというもの、亮介とゼノはすっかり親バカを極めていた。
その親バカっぷりはというと、ルイセルの写真や動画を投稿するための専用SNSアカウントを作成してしまうほどである。
ルイセルがおすわりを覚えたとか、お手を覚えたとか、新しい首輪を買ったとか。そんなことを日記のように書き留めていく愛犬用アカウントだ。
成長の記録も兼ねてルイセルの写真や動画を撮影しては、寝る前にそれを更新するというのが亮介たちの新たな日課になりつつあった。
そんなある日のことだ。天気がよかったため車でルイセルをドッグランへ連れて行き、帰宅後にドッグランでゼノと駆け回るルイセルの動画を投稿してからその日は床に就いた。
そして翌朝起きた亮介がスマホを見ると、妹である彩乃からメッセージと不在着信が鬼のように届いていたのだ。
「なんだなんだ……」
メッセージには、「これお兄ちゃんのアカウントじゃない!?」という文章とともに、ウェブサイトのリンクが貼りつけられている。
そのリンクを確認すると、一本の動画が表示された。
「ん? ああ。昨日のやつか」
ドッグランでルイセルがゼノと遊んでいる様子を撮ったものだ。たしかに昨日の夜、ルイセル用のアカウントでこれと同じ動画を投稿した。
「それがどうかした……うおっ!?」
ふと画面の下部に視線を移して、亮介は思わず声を上げた。
昨日投稿したばかりの動画に、今まで見たことがないほど膨大な数のリアクションがついているのだ。
何かの不具合かと思いアプリを再起動してみたが、表示されている数字は変わらない。それどころか、数字はみるみるうちに増えていった。
「おいゼノ、起きろ!」
「んぁ……?」
「昨日の動画、とんでもないことになってるぞ……!」
あまりの事態に隣でいびきをかいて眠っていたゼノを叩き起こし、スマホの画面を見せる。
しばらく焦点の定まらない目でぼうっと見ていたゼノだったが、やがて頭が冴えてくると亮介のスマホをひったくって何度も画面を確認していた。
「やべーじゃん! ガチ!? なんで!?」
「分からん。ルイセルが可愛すぎるからか……?」
しかし寄せられたコメントを読んでみると、ルイセルに関するものは想像と反してそれほど多くない。
「ええと……。『このイケメン誰?』、『スタイル良すぎ』、『イケメンが一番楽しそうで可愛い』ってこれ、全部お前のことじゃないか!」
なんと、コメントのほとんどがゼノに対する感想だったのだ。
コメントだけでなく、様々なウェブメディアやテレビ番組からゼノ宛に取材依頼のダイレクトメールまで届いている。
「なんだそりゃ。オレ有名人ってこと?」
にゃはは、と当の本人は呑気に笑っているが、予想だにしない出来事に亮介は軽くパニックだ。
たしかにゼノは長身で美形で、話題にならないほうが不思議なほど目を引く容姿をしている。
一緒に街を歩いていても常にゼノへの視線を感じるし、すれ違った女性たちが「今の人かっこよかったね」なんて話している声が聞こえてくることも珍しくなかった。
いくら愛犬用のアカウントとはいえ、そんなゼノがSNSを始めたとなれば注目の的になるのも当然かもしれない。
「はあ……。お前が黙ってれば美形だってこと、すっかり忘れてたよ……」
何気なく投稿した動画がまさかこんなことになるなんて。
驚きを通り越して笑えてきてしまった。ゼノといると思いもよらないことばかり起こる。
それからゼノは「テレビに出たい!」とご機嫌で取材を受け、その天真爛漫なキャラクターがさらに話題を呼ぶことになるのだった。
その親バカっぷりはというと、ルイセルの写真や動画を投稿するための専用SNSアカウントを作成してしまうほどである。
ルイセルがおすわりを覚えたとか、お手を覚えたとか、新しい首輪を買ったとか。そんなことを日記のように書き留めていく愛犬用アカウントだ。
成長の記録も兼ねてルイセルの写真や動画を撮影しては、寝る前にそれを更新するというのが亮介たちの新たな日課になりつつあった。
そんなある日のことだ。天気がよかったため車でルイセルをドッグランへ連れて行き、帰宅後にドッグランでゼノと駆け回るルイセルの動画を投稿してからその日は床に就いた。
そして翌朝起きた亮介がスマホを見ると、妹である彩乃からメッセージと不在着信が鬼のように届いていたのだ。
「なんだなんだ……」
メッセージには、「これお兄ちゃんのアカウントじゃない!?」という文章とともに、ウェブサイトのリンクが貼りつけられている。
そのリンクを確認すると、一本の動画が表示された。
「ん? ああ。昨日のやつか」
ドッグランでルイセルがゼノと遊んでいる様子を撮ったものだ。たしかに昨日の夜、ルイセル用のアカウントでこれと同じ動画を投稿した。
「それがどうかした……うおっ!?」
ふと画面の下部に視線を移して、亮介は思わず声を上げた。
昨日投稿したばかりの動画に、今まで見たことがないほど膨大な数のリアクションがついているのだ。
何かの不具合かと思いアプリを再起動してみたが、表示されている数字は変わらない。それどころか、数字はみるみるうちに増えていった。
「おいゼノ、起きろ!」
「んぁ……?」
「昨日の動画、とんでもないことになってるぞ……!」
あまりの事態に隣でいびきをかいて眠っていたゼノを叩き起こし、スマホの画面を見せる。
しばらく焦点の定まらない目でぼうっと見ていたゼノだったが、やがて頭が冴えてくると亮介のスマホをひったくって何度も画面を確認していた。
「やべーじゃん! ガチ!? なんで!?」
「分からん。ルイセルが可愛すぎるからか……?」
しかし寄せられたコメントを読んでみると、ルイセルに関するものは想像と反してそれほど多くない。
「ええと……。『このイケメン誰?』、『スタイル良すぎ』、『イケメンが一番楽しそうで可愛い』ってこれ、全部お前のことじゃないか!」
なんと、コメントのほとんどがゼノに対する感想だったのだ。
コメントだけでなく、様々なウェブメディアやテレビ番組からゼノ宛に取材依頼のダイレクトメールまで届いている。
「なんだそりゃ。オレ有名人ってこと?」
にゃはは、と当の本人は呑気に笑っているが、予想だにしない出来事に亮介は軽くパニックだ。
たしかにゼノは長身で美形で、話題にならないほうが不思議なほど目を引く容姿をしている。
一緒に街を歩いていても常にゼノへの視線を感じるし、すれ違った女性たちが「今の人かっこよかったね」なんて話している声が聞こえてくることも珍しくなかった。
いくら愛犬用のアカウントとはいえ、そんなゼノがSNSを始めたとなれば注目の的になるのも当然かもしれない。
「はあ……。お前が黙ってれば美形だってこと、すっかり忘れてたよ……」
何気なく投稿した動画がまさかこんなことになるなんて。
驚きを通り越して笑えてきてしまった。ゼノといると思いもよらないことばかり起こる。
それからゼノは「テレビに出たい!」とご機嫌で取材を受け、その天真爛漫なキャラクターがさらに話題を呼ぶことになるのだった。
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