王子を救った聖女は、彼を一度も癒やしていない――二十八回の治癒で殺されかけた王太子は、左腕を失って真実を知る
治癒魔法を受けるたび、王太子セドリックは死に近づいていた。
国境で呪いの槍を受けて以来、聖法院による二十八回もの奇跡で傷は消えた。だが、左腕から伸びる黒い荊は心臓へ迫り、治療を重ねるたびに彼の記憶まで奪っていく。
建国祭の大儀式を受ければ、今度こそ完全に治る。
大神官がそう言い続けるなか、王妃が密かに連れてきたのは、八年前に病死したはずの〈灰衣の聖女〉リゼットだった。
「左腕を切らなければ、殿下は夜明けまでに亡くなります」
リゼットには傷を癒やす力がない。彼女が持つのは、神聖魔法も呪いも等しく鎮め、奇跡を終わらせる力だった。
両腕のある死体になるより、片腕で生きる。
そう決断したセドリックは、王太子としての誇りと左腕を引き換えに生還する。
王妃の保護を受けたリゼットとともに調査を始めた彼は、治癒そのものが呪いを育てていた事実へたどり着く。さらに証拠が指し示したのは、聖法院と、兄を案じていたはずの実弟フェリクスだった。
片腕になった自分を受け入れられず、怒りと絶望に沈むセドリック。そんな彼にリゼットは、失った腕を奇跡で戻すのではなく、残った体で生きる方法を教えていく。
そして建国祭の日。
摂政の座へ上がろうとする第二王子と大神官の前に、死にかけているはずの王太子が現れる。
傷を消すことだけが、人を救うことではない。
元の体へ戻れなくても、生きてよい。
彼女は王子を一度も癒やさなかった。
それでも、彼を本当に救ったのは彼女だけだった。
国境で呪いの槍を受けて以来、聖法院による二十八回もの奇跡で傷は消えた。だが、左腕から伸びる黒い荊は心臓へ迫り、治療を重ねるたびに彼の記憶まで奪っていく。
建国祭の大儀式を受ければ、今度こそ完全に治る。
大神官がそう言い続けるなか、王妃が密かに連れてきたのは、八年前に病死したはずの〈灰衣の聖女〉リゼットだった。
「左腕を切らなければ、殿下は夜明けまでに亡くなります」
リゼットには傷を癒やす力がない。彼女が持つのは、神聖魔法も呪いも等しく鎮め、奇跡を終わらせる力だった。
両腕のある死体になるより、片腕で生きる。
そう決断したセドリックは、王太子としての誇りと左腕を引き換えに生還する。
王妃の保護を受けたリゼットとともに調査を始めた彼は、治癒そのものが呪いを育てていた事実へたどり着く。さらに証拠が指し示したのは、聖法院と、兄を案じていたはずの実弟フェリクスだった。
片腕になった自分を受け入れられず、怒りと絶望に沈むセドリック。そんな彼にリゼットは、失った腕を奇跡で戻すのではなく、残った体で生きる方法を教えていく。
そして建国祭の日。
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傷を消すことだけが、人を救うことではない。
元の体へ戻れなくても、生きてよい。
彼女は王子を一度も癒やさなかった。
それでも、彼を本当に救ったのは彼女だけだった。
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