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第一章

外出③

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「あそこは『ニンフ山』と呼ばれていて、昔から精霊の目撃情報が絶えない場所だ」

「噂によると、自我を持つ精霊が四体も居るらしいよ。細かい場所はそれぞれ違うけど、確か……火の粉の舞う山頂、深淵の見える湖、枯葉のない大木、風の吹く洞窟だったかな?」

 『どれも特徴的だから、行ってみれば分かる筈』と零し、グランツ殿下はニッコリ微笑んだ。

「いやぁ、楽しみだね。ベアトリス嬢の講義のためとは分かっているんだけど、まるで少年のようにワクワクしてしまうよ。私も精霊に会うのは、初めてだからさ」

「えっ?そうなんですか?」

「ああ。一応、何度か召喚魔法・・・・で接触を図ったことはあるんだけど……尽く不発でね」

 ────召喚魔法。
特定の人物を呼び出すもので、精霊も効果対象に含まれる。
ただし、呼び出された側には召喚を拒否する権利があるため、強制力はなかった。

 まあ、無属性の私ではこの方法を試すことすら出来ないけどね。
もし、出来るならこんな回りくどい方法は取らない。
だって、召喚魔法の方がもっと早く確実に精霊との接触を図れるから。
たとえ、召喚を拒否されたとしても『あぁ、精霊師の素質はないんだな』って分かるし。

 『こうやって、地道に精霊を探していくのは結構大変なのよね』と苦笑する中、グランツ殿下は嘆息する。

「今度こそ、会えるといいんだけど……精霊は基本目に見えないから、気づかずスルーしてしまいそうだ」

「あれ?でも、確か自我のある精霊は任意で姿を表せるんですよね?」

 講義で習った内容を思い返す私に、父は小さく頷く。

「ああ、そうだ。ただ、あくまで任意だから気分によっては姿を表さずに終わるだろう」

 『全ては精霊次第』と言い、父はおもむろに紐を引いた。
すると、馬車はゆっくり降下していく。
どうやら、目的地に着いたらしい。
『空から真っ直ぐ来たからか、随分と早かったな』と驚く中、馬車は無事着地した。
と同時に、父は紐を解く。

「降りるぞ」
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