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第二章

ジェラルドの過去を知って③

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 あら?ルカがどうして、ここに?グランツ殿下達の話し合いに同席した筈じゃ……?

 『もしかして、もうお開きになったのか』と困惑する中、ルカは人差し指で何かを弾くような動作をした。
その途端、私の額に僅かな衝撃が走る。
まるで、おでこを指で弾かれたような痛みだ。

「な、何……?」

 思わず声を上げると、ルカは心底呆れた様子で肩を竦めた。

「バーカ、何許しそうになってんだよ」

「えっ?」

「その顔にバッチリ書いてあんぜ。『ジェラルド第二皇子にも事情があったんだ、なら仕方ない』って」

「!?」

 ハッとして大きく目を見開く私は、自身の胸元に手を添え心境の変化を悟る。
『無意識のうちに恐怖や不安を呑み込もうとしていた……』と愕然とする中、ルカはスッと目を細めた。

「確かにあいつの生い立ちは、可哀想だ。情状酌量の余地くらいは、あるかもしんねぇ。でも、それだけだ」

 キッパリとした口調でそう言い放ち、ルカは少しばかり顔を近づけてきた。
かと思えば、私の額あたりを指さす。

「いいか?お前はあくまで被害者。あいつにとっての加害者は親であり、お前じゃない。だから、その事情を汲んでやる必要はどこにもないんだ」

 “許さない”ことによる罪悪感や後ろめたさを解消するように、ルカは『それとこれは違う』と諭した。
大きく息を呑む私の前で、彼はおもむろに体を起こす。

「ベアトリスはもっと、自分の嫌だったことや悲しかったことに目を向けるべきだ。自分の痛みより他人の痛みに共感するのは、やめろ。そっちを優先するな」

 『自分中心に考えろ』と言い聞かせ、ルカは自身の腰に手を当てた。
と同時に、大きく肩を竦める。

「他人のお涙ちょうだいエピソードなんて、『へぇー。そうですかー。それは大変でしたねー』くらいの温度感ノリで流せばいいんだよ。所詮、他人事なんだから」

 『そこまで真剣に取り合う必要はない』と主張し、ルカはフッと笑う。
どこか呆れたような……でも、こちらを思っていることが分かる笑みに、私は肩の力を抜いた。

「ありがとう、ルカ。おかげで、少し冷静になれたわ。ちょっと、ジェラルドの過去に共感し過ぎたみたい」
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