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Past4(ローランド)
episode53
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「まだ、間に合うかな」
息を切らせた男が、ヨレた招待状を城門の警護兵に差し出す。
「・・・少々お待ちを」
招待状を受け取った兵士のあからさまに怪しむ視線に思わず視線を下げた。
疑われるのも仕方ないだろう。
馬車にも乗らず従者もおらず、たった一人馬に乗ってやってきた男は招待状こそ持っているものの、服装も小綺麗だが何処か洗練されておらず、王直々の披露宴に招かれる様な格好をしていなかったからだ。
奥に引っ込んでいってしまった若い兵士を待ち、結局ここまで来てしまったなと城を仰ぎみる。
頑丈な建物からは微かに男女の笑い声が漏れ聞こえ、華やかで盛大なパーティが開かれている事がうかがい知れた。
最期にもう一度だけ、遠くからでもいいからその姿を見たい。
その一心でここに立ったが、やはり場違いかもしれない。
「俺は、彼の人生には邪魔なんだ。そんな事、わかっていただろ・・・」
「フィリップ殿ッ!」
苦しげに吐き捨てた男の声が自分を呼ぶ別の声に掻き消され、男が声のした方に顔を向けた。
「・・・フィリップ殿!おいっ、お通ししろ!」
エドウィンが短く声を張ると、弾かれたように人形の様に突っ立っていた兵士達が動き出す。
「・・・驚いた。君が警護の監督を?」
「無礼を許してやって下さい。この度はローランド陛下の披露宴ですから、兵士たちもピリピリしていて」
エドウィンが人懐っこそうに眉を下げて苦笑する。
「いや、いいんだ。それよりも、アルマ様は・・・」
「・・・・」
隣を歩く男の表情が強ばる。
「・・・ジョージ・ロペスの処刑は、俺と父が担当しました。・・・憎いですか?」
「いや」
憎いどころか、自分はまた懲りずにこの場に立っている。
兄の様に慕ってくれたローランドの悲痛な叫びを無視し、自分の欲望に駆られて無理に関係を持った。
挙句の果てにはずっとお互い想い合っていると淡い夢に浸り、このザマだ。
「・・・私も、処刑されるべきだった」
「・・・」
「・・・やっぱり帰るよ。今更、合わす顔もない」
俯き嘲るフィリップをじっと見つめたまま黙って聴いていたエドウィンが、ふと足を止める。
「・・・貴方を試すような事をして申し訳ない。陛下が、あのローランド様があんな顔をするんで少し気になったんです」
「・・・ローランド様が?」
「アルマ様や俺の周りで危険があれば、容赦はしません。例え、貴方の父であろうとね。しかし、貴方とあの男は違う」
「・・・」
「ローランド様は必死に貴方を庇っていましたよ。・・・あんなひねくれた性格だったってのに耳を真っ赤に染めて泣かれちゃあな。あっ、これは内緒ですよ?俺がローランド様に殺されちまうんで」
墓地で会った時はそんな素振りは一切見せなかった。
「これでもまだ帰ると言うのなら、俺は止めませんよ。俺は警護に戻ります。それでは」
エドウィンが中庭で呆然と立ち尽くすフィリップに招待状を押し付けると、持ち場へと戻っていった。
息を切らせた男が、ヨレた招待状を城門の警護兵に差し出す。
「・・・少々お待ちを」
招待状を受け取った兵士のあからさまに怪しむ視線に思わず視線を下げた。
疑われるのも仕方ないだろう。
馬車にも乗らず従者もおらず、たった一人馬に乗ってやってきた男は招待状こそ持っているものの、服装も小綺麗だが何処か洗練されておらず、王直々の披露宴に招かれる様な格好をしていなかったからだ。
奥に引っ込んでいってしまった若い兵士を待ち、結局ここまで来てしまったなと城を仰ぎみる。
頑丈な建物からは微かに男女の笑い声が漏れ聞こえ、華やかで盛大なパーティが開かれている事がうかがい知れた。
最期にもう一度だけ、遠くからでもいいからその姿を見たい。
その一心でここに立ったが、やはり場違いかもしれない。
「俺は、彼の人生には邪魔なんだ。そんな事、わかっていただろ・・・」
「フィリップ殿ッ!」
苦しげに吐き捨てた男の声が自分を呼ぶ別の声に掻き消され、男が声のした方に顔を向けた。
「・・・フィリップ殿!おいっ、お通ししろ!」
エドウィンが短く声を張ると、弾かれたように人形の様に突っ立っていた兵士達が動き出す。
「・・・驚いた。君が警護の監督を?」
「無礼を許してやって下さい。この度はローランド陛下の披露宴ですから、兵士たちもピリピリしていて」
エドウィンが人懐っこそうに眉を下げて苦笑する。
「いや、いいんだ。それよりも、アルマ様は・・・」
「・・・・」
隣を歩く男の表情が強ばる。
「・・・ジョージ・ロペスの処刑は、俺と父が担当しました。・・・憎いですか?」
「いや」
憎いどころか、自分はまた懲りずにこの場に立っている。
兄の様に慕ってくれたローランドの悲痛な叫びを無視し、自分の欲望に駆られて無理に関係を持った。
挙句の果てにはずっとお互い想い合っていると淡い夢に浸り、このザマだ。
「・・・私も、処刑されるべきだった」
「・・・」
「・・・やっぱり帰るよ。今更、合わす顔もない」
俯き嘲るフィリップをじっと見つめたまま黙って聴いていたエドウィンが、ふと足を止める。
「・・・貴方を試すような事をして申し訳ない。陛下が、あのローランド様があんな顔をするんで少し気になったんです」
「・・・ローランド様が?」
「アルマ様や俺の周りで危険があれば、容赦はしません。例え、貴方の父であろうとね。しかし、貴方とあの男は違う」
「・・・」
「ローランド様は必死に貴方を庇っていましたよ。・・・あんなひねくれた性格だったってのに耳を真っ赤に染めて泣かれちゃあな。あっ、これは内緒ですよ?俺がローランド様に殺されちまうんで」
墓地で会った時はそんな素振りは一切見せなかった。
「これでもまだ帰ると言うのなら、俺は止めませんよ。俺は警護に戻ります。それでは」
エドウィンが中庭で呆然と立ち尽くすフィリップに招待状を押し付けると、持ち場へと戻っていった。
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