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1巻
1-1
第一話 やべぇ、死んだわこれ
「お、おい。あれ真内零だぜ」
「ヤクザも避けて通るって噂のあれか。やべーな、目が超怖ぇ」
「ちげーよ。バックにヤクザがいるんだってよ」
ちっ。聞こえてんだよくそが。学校から帰るだけでもこれか。
俺はただ道路を歩いているだけだ。取り巻きみたいなのが後ろに何人かいるが、それだけだ。
ムカつきながらも、俺はこそこそと会話してる男共の横を通り過ぎようとした。後ろにいる奴らも、こいつらを相手にせず、俺に続くと思っていたんだがな……。
そうはいかなかった。俺の取り巻き共は、ぼそぼそと噂話をしていた奴らに絡みやがった。
「おい! てめぇら何こっち見てんだ!? あぁ!?」
どうにも我慢ならなかったみてぇだ。
ったく、いちいちどうでもいい奴に絡むんじゃねぇよ。明らかにビビッてるじゃねぇか。
「ひぃっ! すいません! すいません!」
「零さんに用があるんなら、直接こっちに来て言えや!!」
「ないです! すいません!」
俺はただ家に帰りたいだけだ。
なのに、しょべぇ奴らに絡みやがって……。
「いいからこっち来いや!」
「ひいいいいいいい」
「やめろ」
俺は取り巻きの右肩を掴んで止めた。
「で、でも零さん、こいつらが……」
「俺はやめろって言ってんだよ」
俺がギロリと見ると、取り巻きは顔を引きつらせて真っ青になりやがった。
「はい! お前ら運が良かったな。さっさと消えろ!」
「あ、ありがとうございます!」
あいつら、慌てて走って逃げて行きやがる。
ちらちらと後ろを振り返りながら、怯えた目で俺を見てんじゃねぇよ。俺は何もしてねぇだろ。
どいつもこいつも、俺にビビッてデタラメな話をする奴らばっかりだ。
今、俺について来てるこいつらも勝手に付きまとって、俺の名前を出す。つまり俺を利用したいだけなんだろう。
家に帰れば、家族は俺を化け物でも見るかのような目で見やがる。ちょっと目が怖いくらいでビビりやがって。
「いやー、それにしても零さんはすごいっすね! こないだもどっかの馬鹿を、前蹴り一発ノックアウトっしょ! まじリスペクトっすわ! ヤクザだって道を譲りますからね! 最強の高校生っすよ!」
「ちっ。あいつが弱かっただけだ」
「ははっ。トレードマークの茶髪のざんばら髪が今日も決まってますよ! ナチュラルヘアってやつっすかね」
こいつは、地毛を手入れしてねぇだけだと何度言っても聞きゃしねぇな。
それにしても、外を歩けば俺が気に入らねぇとケチつけて来る奴だらけだ。喧嘩売られて悪名ばっかり広がりやがる。俺を理解して愛してくれる奴なんて誰もいねぇ。
この取り巻き共は、ベラベラとどうでもいいことしか話さない。俺は、さっさと家に帰りてぇんだよ。
「そうだ! 零さん公園で一服してきません? 飲み物買ってきますよ!」
「俺は家に帰りてぇんだけどな……」
「ちょっとだけ! ちょっとだけお願いしますよ!」
「ちっ。ちょっとだけだぞ」
断りきれない俺にも問題があるのか、これは。あー、うざってぇ。
俺の返事に、周りの奴らは「さすが零さん」だの「男気が」だの、勝手なことばっか言って盛り上がってやがる。ハイタッチしたり、大声をあげたり……何がそんなに楽しいんだ。
てめぇらちょっと俺が公園に付き合うくらいで、騒いで喜ぶんじゃねぇよ。ちっ。面倒くせぇな。
道路を挟んで向かい側にある公園に、仕方なく足を向ける。
「あれ? 零さん、見てくださいよ。公園からボールとガキが……」
「あぁ? それがどうし……」
音が聞こえた。これはトラックの走ってくる音だ。
ガキは気づかずに、公園から道路へ飛び出す。俺の方へと向かってくるボール目指して、真っ直ぐに走って来る。
やべぇ!
「おいガキ止まれ!」
「え?」
しまった――そう思ったが、遅かった。
俺と目が合ったガキは、道路の真ん中で止まりやがった。
くそがっ! まだ間に合うかもしれねぇ!
「くそがああああああ!」
咄嗟に地面を蹴った俺の手はギリギリで届き、なんとかガキを突き飛ばす。
後は、俺もこのまま避ければ大丈夫だ。
だが……そんな時間はなかった。トラックは、もう真横にいやがる。
やべぇ、死んだわこれ。
そう思った、次の瞬間だ。
ドンッ! と強い衝撃が、俺の全身に走った。
トラックに吹っ飛ばされ、地面に落ちるまでの短い時間のはずなのに、世界がスローモーションに見えやがる。
これがあれか、走馬灯ってやつか。
俺を見てビビッてる奴と、泣いてる奴しか見えねぇぞ。
これで終わりか。ビビられ泣かれて、嫌われて終わるのか……。
そこで俺の意識は落ちた。
◆◇◆◇◆◇
「くそが……」
あん? 手が動く? 痛みもねぇ。体も問題ねぇ。
俺は体を起こし、周囲を見回した。
見渡す限りの大量の本に、漂う埃臭さ。
なんだこりゃ。トラックに吹っ飛ばされたと思ったら、図書館にいるじゃねぇか。
……いや、普通の図書館じゃねぇな。どこまで続いてるのかも分からねぇし、異常なくらい本がありやがる。
バサバサッ。
本の崩れる音に、俺は慌てて振り向いた。
「ごほっ、ごほっ。うえー、やっぱり掃除係を雇ったほうがいいかな。……おや? お客さんかな?」
ほっそい体をした、眼鏡で黒髪の兄ちゃんがいた。
司書ってやつか? 青白い顔や雰囲気が、まんまそれだ。
じっと見ていると、当然のように目が合う。だが、すぐに逸らされた。……いつものことだ。
「え、えーっと……」
兄ちゃんは俺にビビッてやがるが、そんなことはどうでもいい。俺は自分の知りたいことを聞くことにした。
「おい、ここはどこだ」
「はい! 記憶や記録の集まるところです!」
何言ってやがるこいつは。記憶? 記録? 図書館じゃねぇのか。
「意味が分からねぇ。俺はなんでここにいる」
「え? なんでって……。ちょ、ちょっと調べさせてもらってもいいかな。いえ、いいですかね?」
「ちっ。好きにしろ」
何やら本を開いたり閉じたり、取ってきたり戻したり。
なんだこいつ。俺のことが本の中に書いてあるわけねぇだろ。
それともこんな頼りねぇ感じだが、実は医者かなんかなのか?
「あー。はい! ありました! 真内零。高校二年生。子供を助けようとし、トラックに轢かれ死亡。合ってます……かね?」
いちいち俺の顔色を窺ってんじゃねぇよ。イラつく『もやしメガネ』だ。
「合ってるけど、合ってねぇ。俺は生きてんだろ。それとガキは無事だったのか」
「は、はい。子供は擦りむいたくらいで無事でした! 後、その……あなたは間違いなく死亡しています」
「だから生きてんだろ」
なんなんだこいつは。頭おかしいんじゃねぇのか? 話が通じる気がしなくなってきたぞ。
「えっと、ここは生きている人間は来られないんです。ですから、あなたは本当に死亡しています」
「生きてる人間は来れねぇ? 死亡してる? つまり死後の世界ってやつか」
「は、はい。そんな感じです」
ちっ。死後の世界とか本当にあったのか。どうせ死んだら、みんな消えるだけだと思ってたんだがな。
……死んだ、か。そうか、俺は死んだのか。改めて言われても、あまりショックはねぇ。
どうせ嫌われ者だったしな。ガキが無事だったんなら、これで終わりでも上等か。
「分かった。もういい。あんまり信じられないが、俺は死んだ。で、俺はこの後どうしたらいい」
「理解が早いですね。認められない人のほうがすごく多いんですけどね」
「どうせ生きてたって、ろくでもなかったからな。ガキを助けて死んだなら……まぁ悪くねぇよ」
「そ、そんなことはありません! あなたが死んで、悲しむ人だっています!」
いねぇよ。
だが、口には出せなかった。それはすごく悲しい言葉で、言ったら事実だと認めることになる気がしたからだ。知ってたつもりでも、自分では言えねぇもんだな。
「ちっ。それはいいからよ。俺はこの後どうしたらいいかって聞いてんだ」
「良くありません! これを見てください!」
もやしメガネは、懐から丸っこいものを取り出して俺に突き出した。
あんだ? 水晶か? 占い師とかが使うあれだよな。
「よく見てください」
「お、おう」
さっきまでは俺にビビッてたくせに、凛とした態度で俺に話し始めやがった。『もやしメガネ』から『メガネ』に昇格させてやるか。
覗き込むと、水晶の中に何かが浮かび上がってくる。
ん? なんだこりゃ。水晶に映っているのは……俺の葬式? なんであいつら泣いてやがんだ。
「見えますね。あなたが死んで、悲しんでいる人たちの姿が」
俺は、何も言えなかった。
俺を利用してると思ってた取り巻きの数人。いつも俺にビビッてた妹。学校の何人か。
「零さん! 零さんなんで死んじゃったんすか! 無敵だったじゃないすか!」
「おにいちゃん! おにいちゃあああああああん!」
あんだよ。俺が嫌いだったんじゃねぇのかよ。
あいつら、何勝手なこと言ってんだよ。
荷物を持ってくれた? 自分から手を出すような人じゃなかった? 目が怖い? うるせぇ!
あんだよ、これ……。
「あなたは怖がられていたかもしれません。でも、嫌われてはいなかったんです」
「そんなこと、今さら知ってどうすんだよ。もう俺は死んじまったじゃねぇか。それに両親は、肩の荷が下りたような顔をしてるぞ」
「ええ、そういう人もいるでしょう。でも、それだけじゃないということを知って欲しかったんです」
「……おう」
くそっ。目にゴミが入りやがった。視界が歪んできやがる。
……俺が気づいてなかっただけなのかよ。
でも、もう死んじまった。今の俺には、どうもできねぇ。
このメガネになら、なんとかできるんだろうか。なんとなくそんなことを思ってしまい、俺は聞いてみることにした。
「なぁ」
「はい」
「何か、なんでもいいんだ。あいつらに、何か伝える方法はないのか」
「すみません……」
メガネは申し訳なさそうに頭を下げた。
「そうか。無理言ったな、悪かった」
まぁ、そりゃそんな都合のいいことはねぇよな。
でも、少しだけ救われた気がしやがる。水晶の映像が本当かも分からないのに、俺も単純なもんだ。
「ありがとよ。もういい」
「分かりました。すいません、見せることしかできなくて。でも、知って欲しかったんです」
「おう、十分だ。ありがとよ」
俺はメガネと目を合わせないようにして、涙を拭った。ばれてねぇよな?
深呼吸をして自分を落ち着かせる。後はメガネに聞くべきことを聞こう。
「で、俺はこの後どうなるんだ」
「はい。そのことで一つ提案があります」
提案? 提案って、天国か地獄に行くだけじゃねぇのか? まぁ今はいい気分だからな、どっちでも構わねぇや。
「あなたには転生をしていただこうと思います」
「転生?」
転生ってなんだ? 生き返るってことか?
「残念ながら、元の世界に戻すことはできません。ですが、異世界にあなたを転生させることができます」
「そうか、よく分かんねぇ。どういうことだ?」
「えっと……第二の生を歩むということです」
「第二の生? もしかして、みんな死んだら別の場所で生き返るのか?」
メガネはクスクス言いながら首を振ってやがる。何笑ってんだこいつ。
「本当は厳密な審査があるんですがね。あなたに関しては、僕の権限で転生を許可します」
権限とか、メガネが何偉そうなこと言ってんだ。
それとも偉いメガネだったのか?
いや、このなよっちぃ面は下っ端だ。間違いねぇ。
「さて、それでは転生させますね」
「おい、俺の返事とかそういうのは……」
「聞いてません! 転生してもらいます!」
「提案じゃなくて強制じゃねぇか!」
俺の話を無視して、書類? ファイル? を開いて、なんかダイスみてぇなもんを振ってやがる。
まぁ、あとで説明くらいはしてくれんだろ。
それに、第二の生か。そういうのも悪くないかもしれねぇ。……今度はもうちょっとうまくやる努力をしねぇとな。
「はい! 決まりました!」
「おう。どこに行くことになったんだ。アメリカか? フランスか? それとも東京から北海道になるとかか?」
行ったことねぇ場所でも、それはそれで楽しめるだろ。旅に出る気分で、少しわくわくするな。
「いえいえ、魔法と精霊の関係が密な異世界です」
「は?」
「転生者には一つスキルを渡すことになっています。愛されたかったあなたにあげるスキルは、これです! 『精霊に愛されし者』!」
「いや、だから待てって」
「では、いってらっしゃい!!」
「待てって言ってんだろ!?」
全身に走る悪寒。地面に体が引っ張られていく。いや、これは引っ張られてるんじゃねぇ!
穴? 穴かこれ!? 足元に穴!?
落ちる、落ちる、落ちる!
「説明なさすぎだろおおおおおおおおお! お前は何者だったんだああああああああああああ!」
力を振り絞り、落下しながら質問を投げかけるが――
うおおおおおおお! まじで落ちてるぞこれ! こんなに落ちたら、結局死ぬじゃねぇか!
「すみません。自己紹介もしていませんでしたね。一応自分は、死後の世界の最高責任者。あなたに分かりやすく言うと、神様ですかね。では頑張ってください!」
は? 神様? お前は下っ端メガネじゃねぇのか?
そんなことを考えながら、俺の意識は体と一緒に闇へ落ちていった。
第二話 なんだこいつら、可愛すぎだろ
――なんだ、俺は寝てんのか?
体が動かねぇ。何かが体の上を動いてやがる……。虫? 虫か!?
「あぁ!? んだこら!!」
「!!」
俺は、気合を入れて体を起こした。
あぁ? 何か走って隠れたぞ。虫か? まだ体についてんのか?
体をあちこち確認してみるが……いや、もう何もついてねぇ。
てか、どこだここは。
辺りを見渡して目に入るのは、木と草ばっかり。
森? 草むら? あんで俺はこんなとこに寝てんだ。
……やべぇ、夢遊病ってやつか?
確か俺は、学校から帰るとこで……。そういや、公園からガキが出てきて、トラックに……? 俺は死んだ? 神だの転生だの聞こえたような?
「体も痛くねぇ。つまりここが、異世界ってとこか?」
ところで異世界ってなんだ? メガネはなんて言ってやがったっけ。
「えーっと、海外がなんとかって……違ぇ、それは俺が言ったんだ」
分かんねぇ。異世界ってなんだ?
そうだ、いきなり穴に落とされたんだ。
あのメガネ、説明くらいしろや! 大体、神ってなんだ! 本当にそんなのいたのかよ。
「ちっ。これからどうすりゃいいんだ」
周りは森しかねーしなぁ。とりあえず森を出て……うぉっ! 背筋がぞくっとした。虫か!?
「くっそ、まだ残ってやがったのか! どこだ!? 背中? 違ぇ! ……首元か! 捕まえたぞ、おら!!」
首の後ろ側に右手を回し、鷲掴みにしてやった。
……あんだこりゃ。虫? 違ぇな、なんだこれ。石? なんか白いもんが生えてるな。
とりあえず引っ繰り返してみっか。くるっとな。
「は?」
はあああああああ!? なんだこれ! なんだこれ!
石を被ってるガキ!? ……違ぇ! 手のひらサイズのガキはいねぇ! 小人!?
「は? なんだてめぇ! あんで俺にくっついてたんだ!」
顔を手で隠してふるふるしてやがる。なんだこいつは。
「おい、聞いてんのか? 話せるか?」
うぉ、今度は首をすげぇ勢いで横に振りやがった。どうやら、話せないみてぇだな。
「あー。俺の言ってることは分かるか?」
何度も頷いている。分かるってことか。
それにしても、こいつなんでこんなに震えてんだ?
……そうか、そりゃそうだ。俺の目ぇ見てビビッてんだ。忘れてた。
そうだよ。これからは、もうちょっと頑張って周りの奴と仲良くなるって決めたんだったな。
目を隠して話してみるか。悪いことしちまったな。
とりあえずこいつを膝の上に置いて、両手で目を隠してっと。
「おい。これで怖くねぇか?」
……いや、だめだろこれ。こいつ話せねぇのに、俺が目を隠しちまったら何も見えないじゃねぇか。
くそっ。これがあれか、異文化交流ってやつか。噂通り、難しいもんだな。
とりあえず指の隙間から覗いてみっか。直接見るよりはいいだろ。そーっとな。
「……は?」
ちょっと待て、なんだこれ。
もう一回見るぞ。そーっと……。
「はあああああああ!? なんでお前増えてんだよ!」
すげぇたくさんいるじゃねぇか! 十体くらいいるんじゃねぇか?
はっ、もしかして俺の体に最初くっついてたのはこいつらか?
よく見りゃ、俺の真似して手で目を隠してる。
なんだこいつら、可愛すぎだろ。やべぇな、かなりやべぇ。くっそ可愛いぞ。
よく見ると、石だけじゃなくて木や花とか水滴みたいなのを頭に被ってる奴もいるな。
すげぇ可愛いじゃねぇか。
でも、まだ震えてんな。……もしかして俺が怒鳴ったからか?
よし、優しく話してみっか。とりあえず、自分なりに笑顔を作って……。
「おう。……おう」
優しくってどうやってやんだ。分かんねぇ。
笑顔作ろうとしたら、頬がひくひくしやがる。だめだな。
まぁ、優しく話してるつもりで頑張ればいいな。よし、そうするか。
「俺はあれだ、零っつーもんだ。お前らはなんだ? 俺になんか用事でもあんのか?」
うぉ、両手広げてぴょんぴょん飛び跳ねてやがる。
とりあえず頭でも撫でてみるか? 確か、頭ぁ撫でたらどんな女でもイチコロだとか、俺の周りにいた奴らが言ってやがったよな。
そもそも、こいつら女なのか? ……まぁいいか。
「おう、悪ぃな。何言ってるか分かんねぇわ」
とりあえず撫でてっと。
あん? なんでこいつら急に近づいてきてんだ。
そうか、異文化交流ってやつも頭を撫でればうまくいくのか。あの馬鹿どもの話もたまには使えるじゃねぇか。それにしても首傾げてる様子が可愛すぎるだろ。
てか、俺のこと怖くねぇのか? 聞いてみるか。
「あー。お前ら、俺のこと怖くねぇのか? 目、怖ぇだろ? よく言われるからよ。無理して近づかなくてもいいぞ」
すげぇ勢いで全員首を横に振ってやがる。俺のこと怖くねぇのか。……やべぇ、なんか泣きそうだ。
「そうか、ありがとな。頭撫でてやるよ」
俺、一生この森にいてもいいわ。
神様も粋な計らいをしやがる。あのメガネが神様ってのは信じねぇけどな。
ん? なんか石の被り物した奴の様子が変だな。ふるふるしながら、指をこっちに突き出してやがる。
あー、これあれか。ガキの頃になんかの映画で見たな。友達だっけか? くそっ、嬉しいじゃねぇか。
「ははっ、おらよ。これでいいか」
ん? なんだ? 他の奴らも俺に指を突き出してやがる。
けっ、いいぜ。こうなったら全員やってやるよ。ついでに頭も撫でてやらぁ!
「おし! いいぞ、全員やってやる! 手は二本あるからな、二列に並べ!」
おぉ、とてとてと歩いてきちんと並びやがった。
あんだ、保育士ってやつはこんな気持ちなのか? 俺、今回の人生は保育士になるのも悪くねぇわ。
とりあえず片っ端から頭を撫でて、指を合わせりゃいいな。たかだが十体くらい……。
「あん? なんか、お前ら増えてねぇか。いや、増えてるよな!? 倍くらいになってねぇか? 分裂したのか!? あー、まぁいい。構わねぇ! 男に二言はねぇ! 全員かかってこい! ただし列は乱すんじゃねぇぞ」
倍になったくらいでガタガタ言う俺じゃね……。
いや待て。増えてる。
「お前らどんどん増えてねぇか!? どんだけいるんだよ! くそっ上等だ! やってやらぁ!」
感想 4
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