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目覚めの時

2・夢の中で

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 そっけない返事と共にいつもの母とは違うとアウスは感じた。それでも母の目を見てやると,目の奥にはいつもと変わらない優しい笑みがそこにはあった。 
 けれど,どうしてもアウスは違和感を覚えてしまい,その笑みが少し怖いとも思ってしまっていた。

「ねぇ,お母さん。本当に,お母さん?」

 アウスは不安になりながら、一応母に聞いて見た。母だと信じて。

「何言ってるの?お母さんよ」 

 アウスの頭を撫で,優しく抱きしめながら母は言った。その温もりと声はやはり母のものだとアウスは確信をする。 

「よかった。お母さんは,お母さんだよね」

 アウスは緊張から解き放たれて,胸を下ろしてもう一度母の温もりを確かめるために,抱きついた。

「いい子ね。アウスは。でもね。アウス,アウスは……」

 母はアウスを抱きしめ返しながら,ゆっくりと口を開き,言葉を続けた。しかし,その声が次第に母のものではなくなり,低く,そして怖いものへとなっていく。

「え……?お母さん」
 
 アウスはその瞬間・恐怖を感じて,母から離れようと手で母を押した。けれど,母の方が何倍も強くアウスを抱きしめてくる。
 離れようにも離れられなくて,アウスはますます恐怖を感じて,涙をこぼしていた。

「やめて……ごめんなさい」

 何度もそう謝ったけれど,母がそれに反応することはなく,次第に母の形すら保たなくなって,黒い霧へと変わっていく。
 そんな頃,母の形をしていた何かが話しかけてきた。

「アウス,アウスがいけないんだからね。隠れていなさいって言ったのに勝手に飛び出して……」

 その声は,とても低く,アウスに恨みがあるようだった。

 「ねぇ,アウス,アウスのせいでお母さん痛い思いしたの。アウスがいなければ,お母さん,痛い思いしなかったのよ……ねぇ,わかる?アウス」

 母ではなくなったそれが,アウスのことを持ち上げ,アウスの首を絞めながら言ってくる。
 アウスは呼吸が苦しくなりながらもどうにか息をしようとした。けれど,やっぱりその握力から逃れることなどなく、意識を失いそうになる。
 
(僕は,どこにいくんだろう?)

 消えゆく意識の中で,アウスそう思った。 
 きっと母と同じところにも父と同じところにもいくことはできない。きっと,悪いことをしたから,地獄を見るんだと。

 涙が溜まってぼやけている視界が完全に暗くなった時,アウスが別の世界に来たのだと悟った。
 
「おい,おい……大丈夫か?」

 急に,大人の男の人の声をアウスは感じた。

(え,今度は,何?)

 怖くなりながらも声のする方へとアウスは向かった。
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