同室のクールな不良に嫌われてると思っていたのに、毎晩抱きしめてくる

ななな

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 それから一ヶ月経って、津田と過ごす時間が増えた。昼休みはそれぞれ別の友達と昼食を食べているけど、朝と夜は一緒だ。

 お互いローテンションだから、ゲラゲラ笑い合うことはない。でも、以前より会話も増えて、距離感はだいぶ近くなったと思う。

「津田、起きて。朝だよ」
「んー………」

 呼びかけただけじゃすぐに起きてくれない。身体を揺さぶったら小さく唸って、俺の腕を掴んで引っ張ってきた。そのまま津田にぎゅっと抱きしめられる。

「ちょっ、な、何して……」
「……………」

 …………寝ぼけてるのか?
 抜け出そうにも力が強くて身動きが取れない。

「ねえ、津田。起きてよ」
「……………」

 …………だめだ、返事がない。どうしよう。くすぐったりしたら怒るかな。

 そう考えてるうちに、ふとある事に気付く。

 …………津田の匂いだ。
 いつもの匂いとは違う。石鹸っぽい感じ。
 同じやつ使ってるのに、いい匂いする……。
 この匂いのほうが好きかも。

 しかも、これ、落ち着くな………。
 津田の体温があったかいし、いい匂いだし、抱きしめられてるの、落ち着く………。
 やばい、俺まで眠くなってきた。

「…………?」

 意識が遠くなっていく途中で、俺を包む腕がピクリと動いた。

「………は? なにしてんの」

 頭上から降ってきた声に、はっとした。津田が驚いたように見ている。

「いや……起こそうとしたら、津田が引っ張ってきたんだよ」
「………俺が?」
「うん。今も抱きしめてるの、津田だからね」

 そう言うと、腕の力が緩まって身体が離れていった。

「……ごめん、寝ぼけてた」

 素直に謝られたけど、別に嫌だとは思っていない。居心地良くて眠りそうだったし。

 何なら今は……津田が離れて寂しいとさえ感じていた。









 夜になって、勉強机で読書をしていたら後ろから肩を叩かれた。

「なあ、なに読んでんの」

 のしっと肩に腕を乗せられる。普段は勉強中や読書をしている時は話しかけてこないのに珍しい。

 伏線回収中の一番盛り上がる場面だけど、津田から声を掛けてくれるのが嬉しくて、本をパタリと閉じた。

「ファンタジー小説だよ。津田も読む?」
「ふーん。本読むの好きじゃねーから、別にいい。それより、腹減った」
「ああ、もうこんな時間なんだ。食堂行こっか」
「うん」

 何を読んでるか気になったんじゃなくて、お腹空いたからだったのか………。

 ほんとマイペースっていうか、自由人だ。
 基本的に津田と過ごす時は、津田のペースに合わせている。振り回されてるって言い方のほうが正しいかもしれない。

 でも、もともと俺は受け身な性格で、人を振り回すよりも振り回されるほうが好きだ。津田のそういうところは、嫌いじゃない。

 …………なんか、猫みたいで可愛いし。
 人に懐きにくいところとか、大事な時に邪魔してくる感じとか、丸まって寝るところとか。

 少し前までは不良で怖いとしか思ってなかったけど、今はそれだけじゃない。俺より身長高いイケメンを可愛いって言うのおかしい気がするけど。
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