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第4章 アイシャの章
第3話 カイト・ジーフ視点
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カイト・ジーフ家は男爵家であっても、優秀な騎士を生み出す家系である。しかし弱小貴族のため、基盤が危うかった。いつ奪われるかわからない家である。そのため今回のアレフ・ノーラン家のネリア姫との婚約はまたとない絶好の機会だった。
アレフ・ノーラン家は正義感の強い者なら唾棄すべき貴族の後ろ暗い事や汚い仕事も請け負う貴族の影を担う家だった。その分、貴族の弱点や情報を誰よりも掌握している一家だった。
カイトはかまわなかった。一族のためなら、奪われない力が欲しかった。そのためにはアレフ・ノーラン家と盟約を結ぶ必要がある。きれいごとでは済まされない。権力闘争は厳しいのだ。
ネリア姫は妖艶で静かな姫だった。なるほど確かに海の女神と言われるだけはある。
カイトは別に、愛とやらはなかったが、大事にしようと思っていた。妻として丁重に扱おうと思っていた。
カイトはあくまでアレフ・ノーラン家の権力が欲しかった。姫はそのついでにすぎない。
しかし、交際を重ねるにつれて少しは情も芽生えたが・・ある日、婚約破棄は唐突になされた。
ネリア姫も驚愕していただろう。
カイトの父が、何か高位の貴族の不興をかって不始末をしたらしい。こんな時に・・とカイトは不運を嘆いたが、高位の貴族の機嫌を直すために、我が家の家宝などを捧げたり謝罪したが、願いは届かなかった。
カイト家は呆気なく潰れた。
父は衝撃のあまり、酒に依存するようになった。母は慣れない仕事やいかがわしい仕事にもつくようになって一家の生活の糧になるように必死に働いた。母のふくよかな顔はみるみる痩せていった。
数か月後、あっけなく母は亡くなった。こうも人間は呆気なく死ぬのか・・と母の命を削った父を許せなかった。
カイトも勿論、働いて母を助けようとしたが、運が悪すぎた。
父はますます嘆いて酒におぼれるようになった。カイトは冷ややかに父が崩れゆく様を見ていた。
だが、父が死の間際にカイトに告白した言葉には驚愕した。
「あれは冤罪だ。高位貴族は恐らくハリアン公爵だ・・おそらく目的はネリア姫だ。お前のような弱小貴族の男が
あの妖艶な花を手に入れるのが気に入らなかったのだろう。俺は身に覚えのない罪を着せられた。
公爵の息子に暴行をしたと・・とんでもない。俺がそんなことをするはずないだろう。
だが、俺の冤罪を晴らす証拠や証人はいなかった。俺は権力に負けた。
俺の予想していた通り、ハリアン公爵は婚約破棄がなされてから、ネリア姫を己の寵妃にした。
ネリア姫もそれを受け入れた。相手は高位貴族だ。逆らえまい。
今は、ネリア姫はハリアン公爵の元に暮らしている・・
すまなかった。弱い父で・・。」
父は嘆き、母の名を呼んで死んでいった。
カイトは驚愕の真実に体を震わせた。
姫が目的で、俺の家を潰したのか?だとしたら異常だ。そんな欲望を満たすためだけの公爵は・・
姫から、婚約破棄が為されたごろ、カイトは一通の手紙を渡されたことが或る。
婚約破棄は残念なことになったけど、貴方の幸福をお祈りいたします・・
姫は知っていた?否。深窓の令嬢がそんな裏を知るはずがない。唯、彼女は何か事件が起きて婚約が反故にされたとしか伝わっていないだろう。お父様に従って姫は破棄を受け入れた。それは仕方がない事だ。娘は親の所有物でもあったからだ。
でなければ俺の幸福をお祈りしますと無知な思いを抱くはずがないだろう・・
悔しいが、父の証言だけでは、真偽がわからない。だが、カイトは直感的に真実を感じていた。
これが貴族なのだ。欲しいものがあったら手段は選ばない。高位貴族程、欲望を制御できない奴らが多い。
カイトは心の奥に真っ黒なものがじわじわと溜まっていくのが感じられた。
それは復讐の花だ。
アレフ・ノーラン家は正義感の強い者なら唾棄すべき貴族の後ろ暗い事や汚い仕事も請け負う貴族の影を担う家だった。その分、貴族の弱点や情報を誰よりも掌握している一家だった。
カイトはかまわなかった。一族のためなら、奪われない力が欲しかった。そのためにはアレフ・ノーラン家と盟約を結ぶ必要がある。きれいごとでは済まされない。権力闘争は厳しいのだ。
ネリア姫は妖艶で静かな姫だった。なるほど確かに海の女神と言われるだけはある。
カイトは別に、愛とやらはなかったが、大事にしようと思っていた。妻として丁重に扱おうと思っていた。
カイトはあくまでアレフ・ノーラン家の権力が欲しかった。姫はそのついでにすぎない。
しかし、交際を重ねるにつれて少しは情も芽生えたが・・ある日、婚約破棄は唐突になされた。
ネリア姫も驚愕していただろう。
カイトの父が、何か高位の貴族の不興をかって不始末をしたらしい。こんな時に・・とカイトは不運を嘆いたが、高位の貴族の機嫌を直すために、我が家の家宝などを捧げたり謝罪したが、願いは届かなかった。
カイト家は呆気なく潰れた。
父は衝撃のあまり、酒に依存するようになった。母は慣れない仕事やいかがわしい仕事にもつくようになって一家の生活の糧になるように必死に働いた。母のふくよかな顔はみるみる痩せていった。
数か月後、あっけなく母は亡くなった。こうも人間は呆気なく死ぬのか・・と母の命を削った父を許せなかった。
カイトも勿論、働いて母を助けようとしたが、運が悪すぎた。
父はますます嘆いて酒におぼれるようになった。カイトは冷ややかに父が崩れゆく様を見ていた。
だが、父が死の間際にカイトに告白した言葉には驚愕した。
「あれは冤罪だ。高位貴族は恐らくハリアン公爵だ・・おそらく目的はネリア姫だ。お前のような弱小貴族の男が
あの妖艶な花を手に入れるのが気に入らなかったのだろう。俺は身に覚えのない罪を着せられた。
公爵の息子に暴行をしたと・・とんでもない。俺がそんなことをするはずないだろう。
だが、俺の冤罪を晴らす証拠や証人はいなかった。俺は権力に負けた。
俺の予想していた通り、ハリアン公爵は婚約破棄がなされてから、ネリア姫を己の寵妃にした。
ネリア姫もそれを受け入れた。相手は高位貴族だ。逆らえまい。
今は、ネリア姫はハリアン公爵の元に暮らしている・・
すまなかった。弱い父で・・。」
父は嘆き、母の名を呼んで死んでいった。
カイトは驚愕の真実に体を震わせた。
姫が目的で、俺の家を潰したのか?だとしたら異常だ。そんな欲望を満たすためだけの公爵は・・
姫から、婚約破棄が為されたごろ、カイトは一通の手紙を渡されたことが或る。
婚約破棄は残念なことになったけど、貴方の幸福をお祈りいたします・・
姫は知っていた?否。深窓の令嬢がそんな裏を知るはずがない。唯、彼女は何か事件が起きて婚約が反故にされたとしか伝わっていないだろう。お父様に従って姫は破棄を受け入れた。それは仕方がない事だ。娘は親の所有物でもあったからだ。
でなければ俺の幸福をお祈りしますと無知な思いを抱くはずがないだろう・・
悔しいが、父の証言だけでは、真偽がわからない。だが、カイトは直感的に真実を感じていた。
これが貴族なのだ。欲しいものがあったら手段は選ばない。高位貴族程、欲望を制御できない奴らが多い。
カイトは心の奥に真っ黒なものがじわじわと溜まっていくのが感じられた。
それは復讐の花だ。
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