デコボコな僕ら

天渡清華

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その1

☆☆☆☆☆☆☆

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「樹、大丈夫? 飲み過ぎた?」
 ふいにそっと、俺の肩に触れる大沼の手。ワイシャツ越しに感じるぬくもり。心配そうな顔。
「ビ、ビール数杯なんて飲んだうちに入らねえよっ」
 見事に声が裏返ってしまい、俺は内心自分にがっかりする。にやりと笑う寺田。応援するとか、絶対面白半分だろ、お前!
「それならいいけどさ……」
 なんか言いたそうな目。黙ってる俺をチラチラ気にしてたってのがマジなら、うれしいやら申し訳ないやら。確かに枝豆に夢中になってる場合じゃなかったな。
「あっ、すんません電話なんで」
 寺田がスマホを尻ポケットから取り出しながら、あわてて個室を出て行く。周りの賑わいが聞こえる中、俺達の間に流れる妙な沈黙。
「寺田君とならいいかなと思ったんだけど、嫌だった?」
 寺田に聞かれることを警戒してか、俺の方に身体を寄せてこそっとささやく大沼。いつでも俺を心配してくれるこいつに、好きだ! って言っちまいたい。でも怖い。俺は膝の上でぐっと拳を握る。
「そんなことねえけど、気遣わせてたならごめん」
 大沼を上目遣いに見ながら言うと、ふんわりと明るい笑みが返ってきた。こいつはホント優しいなあ。笑顔、たまんねえなあ。
「すんません、急に彼女から呼び出しかかったんで俺帰ります」
 引き戸を開けるなり、寺田が言う。さっさと店のタブレットをいじり、会計を確認して財布から千円札を数枚出す。
「これで俺の分は足りると思うんで。無理やり混ざっといて、先帰るとか申し訳ないっス」
 かなりあわてた感じで早口に言い、寺田はバタバタと帰ろうとする。
「いや、さすがに多くね?」
 そんなに食いもんも頼んでねえし、寺田は中生二杯しか飲んでないはずだから、俺は千円札を返そうとした。
「多かったら、その分今度出してくれればいいんで」
 カバンを手にした寺田は、空いてる左手で俺の手を押し戻し、さっさと出て行こうとする。
「お疲れさました! お二人はごゆっくり!」
 寺田の満面の笑みが引き戸の向こうに消える。まさに風のように帰ってった。なにかヤバい呼び出しなのか、よっぽど彼女に惚れてるのか。
「そりゃ俺らより、彼女の方が大事だよな」
 ははっ、と笑って背後の壁にもたれる。あっ、二人だけになったのに横並びのままはおかしいか? でもこのまま大沼の隣にいてえなあ。
「ずいぶん食べたね」
 笑みを含んだ顔で、俺の前にできた枝豆の殻の山を唐揚げが盛られてた空き皿に移す、大沼の手。色白で、指がすらっとした大きな手だ。
 ちっちえ俺の手は、すっぽり包まれちまうだろう。抱きしめても逆に、俺の方が大沼の胸に抱かれるようになるのは確実で。あーあ、なんで俺はこんな小柄に生まれちまったんだろうな。
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