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5章:魔王領編

魔王討伐直後

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まだ勇者一行は戻ってない。
俺はアーサーに呼ばれて、執務室にいる。 いるのは暗部の長だけだ。

「ギース、この4年ちかく勇者一行の補助、魔物の氾濫、疫病やらいろいろ、そして悲劇の魔王の討伐ご苦労だったね。」っていうアーサー。 どことなく疲れていてやつれてる。 もう40代後半近いけど、それにしてもな。

「まぁ真実を知った時は、何とも言えなかったがな。 殺してくれっていう奴を殺すのは嫌だったよ。」って正直に言った。

「魔王を殺したのがギースだって、僕も暗部も上層部も知っている。 悲劇の魔王の事もね。 
 ただ、何処から情報つかんだのか、僕達が秘匿にしてたギースがスラム出身ってことが、貴族の間で広まっているんだ。」

「ようは、スラム出身者が、傭兵かつ今の立場、そんでもって魔王討伐したとなったら、各国にも国民にも示しがつかないってことか?」

「いや、今の立場は僕が維持する、ただ魔王討伐したのはユウトになるかもしれない。
 本人が否定してくれればいいんだけど。」

「それはないな。 あの時、あいつら喜んでたし。 俺は、理解できなかったがな。」

「そうか。 きっとこのまま行くと僕の死後、アルタイト王国の国王はユウトになる。 
 僕の死後は、僕との契約は終わりだ。 この国にいる必要はない。 
 トリマ町は、ちょうどアウドス国の近くで、この町の存在をしっているのは、僕と長だけだ。 
 もし今後なにかあれば、ギース、お前達はトリマ町へいくんだ。 
 そして、アウドス国で保護してもらうなり、自由に生きてほしい。 
 これぐらいしか君にできない僕を許してくれ。」そう言ったアーサー。

そしてアーサーから、もしもの時のアウドス国、国王宛の手紙も預かった。

「平気だ。 いざとなったら、ヴォルでひと飛びだからな。 
 それに、俺はこの国嫌いじゃないしな。 
 まぁ魔王と吸血鬼貴族の最後の願い、残された魔族達が安住することを願うよ。」って言っておいた。

「ああ、僕も同じだ。」そう言ったアーサーは苦笑いしつつ目は哀しそうだった。


…今思うと、アーサーと直接会話したのがこれが最後だった。
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