<本編完結!AS開始>【R18】愛するがゆえの罪 ー溜息が出るほど美しくて淫らな叔父と姪の禁断愛ストーリーー

奏音 美都

文字の大きさ
841 / 1,014
私情とビジネス

しおりを挟む
 記者会見の翌日には、ツアースタッフとの顔合わせで集まることになった。

 秀一はウィーンにいる時から着々と来日ツアーに向けて準備し、スタッフ全員を揃え、ツアー内容や日程等の詳細まで決定していた。

 決まっていなかったのは、衣装担当だけ。美姫が衣装デザインを引き受けるものとして、秀一は準備を進めていたのだ。 彼の策略にまんまと嵌められた気がした。

 もしかしたら、来栖財閥がスポンサーとなるであろうことも秀一の計算の内に入っていたのかもしれないと思うと、改めて彼の恐ろしさを感じた。

 顔合わせには、演出家、舞台監督、プロデューサー、音響担当や美術担当、ヘアメイク担当、ツアーマネージャーやイベンター等、ツアーに関わる主要なメンバーが顔を揃える。衣装デザイン担当の美姫だけでなく、特別協賛企業社長である大和も参加した。

 秀一のコンサートに行ったことは何度もあったし、コンサートを準備している様子やリハーサルを見たこともあるので、コンサートに多くの人間が関わっていることは知っている。だが、こうして立ち上げからスタッフの一人として関わるのは初めてなので、今までにない緊張感と高揚を美姫は感じていた。

 顔合わせには、秀一の新しいマネージャーも付き添っていた。

「は、は初めまして......く、黒澤です」
「衣装デザインを担当する来栖美姫です。どうぞよろしくお願いします」

 挨拶しながら、美姫は溜息を吐きそうになった。
 
 どうして秀一さんは、こういうタイプの人をマネージャーにつけるのだろう。

 黒澤はまだ20代で、いかにも気が弱そうな印象だった。秀一が求めているのは優秀で管理能力のあるマネージャーではなく、秀一の指示通りに働き、手足となってくれる下僕なのだ。黒澤もまた、智子のようにいつか心身ともに疲弊してしまうのではないかと、美姫は密かに心配した。

 秀一は思い出したように、指を鳴らした。

「そうそう、今日は都合で来られなかったんですが、スペシャルゲストとしてヴァイオリン奏者もツアーに参加してもらうんですよ。顔合わせですので、彼女の代わりにマネージャーの方に来てもらいました」

 秀一の説明が終わると同時に扉がノックされ、「失礼します......」と声が掛かった。

「智子さん......」

 目を見開く美姫の横で、秀一は艶やかな笑みを浮かべて紹介した。

「ヴァイオリン奏者、青柳えいみさんのマネージャーである上條智子さんです。青柳えいみさんは17歳と高校生でありながら将来を嘱望されている、優秀なヴァイオリニストです。
 上條さんはご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、以前は私のマネージャーを務めて下さっていました。優秀な彼女のサポートにより、青柳えいみの名は一層有名になることでしょう」

 秀一ににこやかに握手を求められ、智子は明らかに動揺を見せた。今まで、こんな風に扱われたことなどなかったからだ。

「あなたにはマネージャー時代、多大な苦労と迷惑をかけてしまい申し訳なく思っています。これからは新人育成に力を注ぎ、青柳えいみを世界に誇るヴァイオリニストに育てあげて下さい。あなたなら、それが出来ると信じています。
 もちろんスペシャルゲストに青柳さんを呼んだのは、彼女の才能を買っているからですが」

 秀一の言葉を聞き、智子は人目も憚らず激しくしゃくり上げながら泣いた。

「ッ......ヒグッく、るすさ......も、申し訳......ありッヒ......ませ、で......ウグッ」

 秀一は、優雅な仕草で胸ポケットからハンカチを差し出した。

「謝らなければいけないのは、私の方ですよ」

 智子は真っ赤な顔でハンカチを受け取り、そっと顔を埋めた。

「ぐる...す、さん......ッグ」

 智子の苦労が報われてよかったと思う一方で、彼女に嫉妬する気持ちが美姫の心を支配する。

 秀一さんは、もう私の恋人ではないのに。
 彼の優しさが他に向けられるのが、こんなにも苦しい。

 私だけに向けて欲しいと、願ってしまう。
 なんて勝手なんだろう......

 美姫は、二人から目を背けた。隣に立つ大和は、そんな彼女の肩をそっと引き寄せた。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる

Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。 でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。 彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

肉食御曹司の独占愛で極甘懐妊しそうです

沖田弥子
恋愛
過去のトラウマから恋愛と結婚を避けて生きている、二十六歳のさやか。そんなある日、飲み会の帰り際、イケメン上司で会社の御曹司でもある久我凌河に二人きりの二次会に誘われる。ホテルの最上階にある豪華なバーで呑むことになったさやか。お酒の勢いもあって、さやかが強く抱いている『とある願望』を彼に話したところ、なんと彼と一夜を過ごすことになり、しかも恋人になってしまった!? 彼は自分を女除けとして使っているだけだ、と考えるさやかだったが、少しずつ彼に恋心を覚えるようになっていき……。肉食でイケメンな彼にとろとろに蕩かされる、極甘濃密ラブ・ロマンス!

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

処理中です...