11 / 13
10
しおりを挟む
今日は軍本部の公開訓練の日だ。
全く行く気の無かった私にユミエール先輩が言った。
「あんただけ閣下と婚約して玉の輿なんて許さないわ!私にも閣下の七光りでいい男を紹介しなさい!」
言われた私はしばらく意味がわからなかった。なぜ私がユミエール先輩のお相手探しを手伝わなきゃならないのだろうと首を傾げるとユミエール先輩はまるで私の心を読んだみたいに「グダグダ考えて無いで行くわよ!」と強引に引っ張ってこの場所に連れて来られた。
せっかくの休みだったのに。なぜ私は自己主張の激しいあのノックに応じたのだろう。あぁ、後悔。
「ちょ、ユミエール先輩!なんですか、そのドレス姿は!?」
腹に回された腕はか細かったが怪力持ちのユミエール先輩は私を荷物の様に抱えて私を部屋から訓練所まで運んで来た為私は爽やかな陽の下で目にしたユミエール先輩の毒々しい紫に黒のレースをふんだんに使用したグラマラスなドレス姿を見て驚きを漏らした。
「ふふん、こんなドレスを着こなせるのは私くらいでしょう?」
艶やかな笑みを浮かべるユミエール先輩は夜の蝶の様に美しく、非常に浮いていた。
「…いや、それだと遊び慣れた女性の様に勘違いされて男性は忌避するらしいですし、遊び相手探しには良いかも知れませんけど。結婚相手探しには逆効果では無いかと思いますが。」
「……………な、んですって…」
愕然としたユミエール先輩の顔を見て視線を逸らしながら。
「いえ、なんでも」
「逆効果ですって!?なぜ早く教えてくれなかったのよ!!」
ばしばしと黒いモワモワした羽付きの扇子で私の頭を叩き出した。
地味に痛い。
ご乱心中のユミエール先輩にひぇー!と怯えつつ「すいません!でも、迫力ありすぎますよ!」と心の声を口に出してしまっていた。
ピタリと動きを止めたユミエール先輩はショックを受けた顔をしてよろめいた。
「……は、迫力…」
そんな魂の抜けたユミエール先輩にチラチラと視線を向けては、クスクス笑いをする王宮侍女達が背後に現れて私はビクつき身構えた。
「やだぁ、ユミエール様ったら。あんな下品なドレスを着て来るなんてよっぽど遊び相手が欲しかったのね。」
「あらっ、あんなケバケバしい方を相手にする勇気のある方がいるかしら?」
二人は私も見た事のある王宮侍女の、ユミエール先輩とよく一緒に仕事をサボってこの訓練所に来ていたユミエール先輩の仲間………
「アリーシャ…、ニーナ…」
隣りのユミエール先輩から二人の名前を呟く呆然とした声がこぼれ落ちた。
あぁ、きっとこの二人はユミエール先輩が邪魔だったんだ。
ユミエール先輩は黙っていれば肉感的で少しキツめの顔つきをした美女だ。黙っていれば!
だから、普通の見た目の二人はユミエール先輩を蹴落としたかったのかも?
「……あなたは、あなたもユミエール様と同じ救護班の方ですか?」
値踏みをする様に目を細めてこちらを見る侍女その1が気に食わないと言いたげに険しい顔になり、私を睨む。
「ええ、そうですが?」
名を言わない私に彼女達は貴族の令嬢では無いと結びつけたのだろう、馬鹿にした様に笑って一歩前に出た。
「今日は上位貴族の騎士様達や軍部の幹部が訓練所にいらっしゃるのに、庶民が居ては邪魔だと思うのだけど…」そう言って馬鹿にしたように嗤った。
「…軍部の幹部が。では、私の婚約者が出場するかもしれませんね!ありがとうございます。さぁ、行きましょうユミエール先輩!ご挨拶に一人だと不安なんです!絶対に、ついてきてくださいね!」
私は二人の呆気に取られた顔をスルーしてユミエール先輩の手を掴むと捲し立てる。ユミエール先輩は未だにショックらしく無反応だ。私はユミエール先輩の背後に風魔法でゆっくりと頷いた様に見えるくらいの力加減で風圧を駆使した。
ふぅ、疲れた。
「幹部に?まさか、婚約者が?」とヒソヒソ話し出した二人は完全に無視して私はグイグイとユミエール先輩を引っ張って移動する。
ユミエール先輩のバックを勝手に漁り、中から白いストールを取り出すとユミエール先輩に被せて髪をゆる編みに見えて愛らしい結びに変えるべく、必死に編み込んだのだろうユミエール先輩の髪に指を差し込みゆるゆるになる様、引っ張って行く。
崩れかけてるくらいの所にピンを刺すと完成だ。
「大丈夫です!ユミエール先輩可愛く出来ましたよ!さぁ、未来の旦那様をゲットなさるんでしょう?」
さぁさぁ、とユミエール先輩に言っているとユミエール先輩は漸く覚醒したようで「…ありがとう、プリュム」とちょっと潤んだ眼差しを向けられた。
ヤバイ、綺麗な肉食系美女だ。んで、ちょっと弱ってますってとこもあざとすぎる可愛さだ。ユミエール先輩には本当のあざとさは無いけどね!
全く行く気の無かった私にユミエール先輩が言った。
「あんただけ閣下と婚約して玉の輿なんて許さないわ!私にも閣下の七光りでいい男を紹介しなさい!」
言われた私はしばらく意味がわからなかった。なぜ私がユミエール先輩のお相手探しを手伝わなきゃならないのだろうと首を傾げるとユミエール先輩はまるで私の心を読んだみたいに「グダグダ考えて無いで行くわよ!」と強引に引っ張ってこの場所に連れて来られた。
せっかくの休みだったのに。なぜ私は自己主張の激しいあのノックに応じたのだろう。あぁ、後悔。
「ちょ、ユミエール先輩!なんですか、そのドレス姿は!?」
腹に回された腕はか細かったが怪力持ちのユミエール先輩は私を荷物の様に抱えて私を部屋から訓練所まで運んで来た為私は爽やかな陽の下で目にしたユミエール先輩の毒々しい紫に黒のレースをふんだんに使用したグラマラスなドレス姿を見て驚きを漏らした。
「ふふん、こんなドレスを着こなせるのは私くらいでしょう?」
艶やかな笑みを浮かべるユミエール先輩は夜の蝶の様に美しく、非常に浮いていた。
「…いや、それだと遊び慣れた女性の様に勘違いされて男性は忌避するらしいですし、遊び相手探しには良いかも知れませんけど。結婚相手探しには逆効果では無いかと思いますが。」
「……………な、んですって…」
愕然としたユミエール先輩の顔を見て視線を逸らしながら。
「いえ、なんでも」
「逆効果ですって!?なぜ早く教えてくれなかったのよ!!」
ばしばしと黒いモワモワした羽付きの扇子で私の頭を叩き出した。
地味に痛い。
ご乱心中のユミエール先輩にひぇー!と怯えつつ「すいません!でも、迫力ありすぎますよ!」と心の声を口に出してしまっていた。
ピタリと動きを止めたユミエール先輩はショックを受けた顔をしてよろめいた。
「……は、迫力…」
そんな魂の抜けたユミエール先輩にチラチラと視線を向けては、クスクス笑いをする王宮侍女達が背後に現れて私はビクつき身構えた。
「やだぁ、ユミエール様ったら。あんな下品なドレスを着て来るなんてよっぽど遊び相手が欲しかったのね。」
「あらっ、あんなケバケバしい方を相手にする勇気のある方がいるかしら?」
二人は私も見た事のある王宮侍女の、ユミエール先輩とよく一緒に仕事をサボってこの訓練所に来ていたユミエール先輩の仲間………
「アリーシャ…、ニーナ…」
隣りのユミエール先輩から二人の名前を呟く呆然とした声がこぼれ落ちた。
あぁ、きっとこの二人はユミエール先輩が邪魔だったんだ。
ユミエール先輩は黙っていれば肉感的で少しキツめの顔つきをした美女だ。黙っていれば!
だから、普通の見た目の二人はユミエール先輩を蹴落としたかったのかも?
「……あなたは、あなたもユミエール様と同じ救護班の方ですか?」
値踏みをする様に目を細めてこちらを見る侍女その1が気に食わないと言いたげに険しい顔になり、私を睨む。
「ええ、そうですが?」
名を言わない私に彼女達は貴族の令嬢では無いと結びつけたのだろう、馬鹿にした様に笑って一歩前に出た。
「今日は上位貴族の騎士様達や軍部の幹部が訓練所にいらっしゃるのに、庶民が居ては邪魔だと思うのだけど…」そう言って馬鹿にしたように嗤った。
「…軍部の幹部が。では、私の婚約者が出場するかもしれませんね!ありがとうございます。さぁ、行きましょうユミエール先輩!ご挨拶に一人だと不安なんです!絶対に、ついてきてくださいね!」
私は二人の呆気に取られた顔をスルーしてユミエール先輩の手を掴むと捲し立てる。ユミエール先輩は未だにショックらしく無反応だ。私はユミエール先輩の背後に風魔法でゆっくりと頷いた様に見えるくらいの力加減で風圧を駆使した。
ふぅ、疲れた。
「幹部に?まさか、婚約者が?」とヒソヒソ話し出した二人は完全に無視して私はグイグイとユミエール先輩を引っ張って移動する。
ユミエール先輩のバックを勝手に漁り、中から白いストールを取り出すとユミエール先輩に被せて髪をゆる編みに見えて愛らしい結びに変えるべく、必死に編み込んだのだろうユミエール先輩の髪に指を差し込みゆるゆるになる様、引っ張って行く。
崩れかけてるくらいの所にピンを刺すと完成だ。
「大丈夫です!ユミエール先輩可愛く出来ましたよ!さぁ、未来の旦那様をゲットなさるんでしょう?」
さぁさぁ、とユミエール先輩に言っているとユミエール先輩は漸く覚醒したようで「…ありがとう、プリュム」とちょっと潤んだ眼差しを向けられた。
ヤバイ、綺麗な肉食系美女だ。んで、ちょっと弱ってますってとこもあざとすぎる可愛さだ。ユミエール先輩には本当のあざとさは無いけどね!
応援ありがとうございます!
10
お気に入りに追加
593
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる