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4話 アルヴィドの後悔 

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(アルヴィド侯爵視点)


「アルヴィド、紅茶をどうぞ」

「ああ、ありがとう。ライナ」


 私は本日も優雅に私室で過ごしていた。愛すべき婚約者のライナと共に。そうだ……優雅に過ごしているはず。だが、なぜだろうか……? 何かが物足りないのだ。私は一体、何を求めている?

「どうかしましたか、アルヴィド?」

「いや……ライナ、なんでもない。心配を掛けたな」

「いえ、何もなければ良いのですが……」


 彼女との生活をして1カ月以上が経過している……ライナはなかなか気の利く女性だ。紅茶や軽食の用意といった面から、勉学まで幅広く行うことが出来る。私に相応しい女性と言えるだろう。そうだ……特にその辺りに不満はないのだが、強いて言えば話していてつまらないと感じる点だろうか?

 私は必要ないと思って切り捨てたシルヴィアと再び話したいと思っているようだった。あり得ない……なぜ、シルヴィアのことが頭から離れないのだ? ライナとの相違点はなんだ……そうか、彼女と話している方が自然体でいられるのだ。話が合うとでも言えばいいのだろうか……シルヴィアとの会話は確かにライナとのそれよりも充実していた。


「ライナ、済まないが本日はもう帰ってもらえないか? 少し用事を思い出したのでな」

「用事でございますか、アルヴィド?」

「そうだ。済まないな」

「畏まりました、それでは失礼します……あの」

「ん?」


 ああ、キスをねだっているのか。彼女は別れ際にキスを私に必ずねだる傾向にあった。私は仕方なく合わせてはいるが、ハッキリ言って面倒なことだ。さっさとキスを済ませるか……。

「ん……ありがとうございます、それでは失礼いたします」

「うむ。ではまたな」


 ふう、ようやく帰ってくれたか。ライナはそう言えば、何日も私の屋敷に泊まることが多い。シルヴィアはその辺り、さっぱりしていたのだがな。私はソファに座りながら、気付いた時にはシルヴィアのことばかり考えていた。これは一体、どんな感情から出て来るのだ? 

 私はライナのことが好きだと思っていたのだが……だからこそ、彼女と一緒になる為にシルヴィアとは強引に婚約破棄をしたのだからな。ライナは幼馴染……よくよく考えれば、シルヴィアとは8歳も離れているんだったな。

 ライナは美人の為にわかりづらいが、年齢は20代半ばを過ぎているのだ。

 現実的に考えると、シルヴィアを手放したのは勿体なかったか……私の子を産ませるのであれば、出来るだけ若い女性の方が良いだろうしな。しかし、あれだけ啖呵を切って婚約破棄を告げてしまったのだ。さて、どうするか……。


「仕方がない……慰謝料を追加で支払い、特別に誠心誠意謝罪をしてやるとするか。こうして考えると、なんとしてもシルヴィアが欲しくなってきたぞ……! 絶対に元の鞘に納めてくれる!」

 既に慰謝料は支払っている。そこに追加で、と言う意味だ。

 どのみち、私の実力であれば難しいことではないはずだ。シルヴィアは所詮、小娘といえる年齢だ。少し甘い言葉をささやけば、すぐに陥落するだろう。シルヴィアは元々、私に一生を捧げるつもりだったと言っていたのだからな。仕方がないのでその願いを聞き遂げてやるとするか。

 まあ、それでもシルヴィアを手に入れることが難しい場合は……ふふん、侯爵家の力の出番ということだ。本意ではないが侯爵の権力を使うと言うのも考えておかねばならないか。
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