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第68話 (アリミナ目線)
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「なん、で……」
愚かだと、私を蔑んだ目で見つめた後去っていたライルハート様の背中。
それに縋り付くような視線を向けながら、私は呆然と言葉を漏らした。
何故、あんな視線をライルハート様に向けられたのか、私はまるで理解できていなかった。
先ほどまでは、たしかに状況は最悪だった。
お姉さまを溺愛するライルハート様が怒りの目を向けるのなら、私も理解は出来たかもしれない。
だが、ライルハート様は私に対して怒りを向けることはなかった。
まるで私を哀れむような、そんな視線を向けただけ。
その態度の理由がどうしても私には理解できなかった。
……なのに、私の胸からはなにか大切なことを見落としているような焦燥感が消えることはなかった。
「すべてがうまくいったのになんで?」
そう、全ては終わったのだ。
お父様の暴走も終わって、お姉さまも救われた。
だったらもう、ハーピーエンドではないか。
ライルハート様の態度を見た限り、私が責められることも、もうないはずだ。
そう考えてもなお、消えることのない焦燥感の正体を私は探るのをやめた。
「……考えても仕方がないことよ」
そう呟いた私は、後ろ向きな考えを頭から振り払い、王宮の廊下を引き返し公爵家へと歩き出す。
例え家名を奪われても、自分の能力なら生きることに苦労することなどないと信じ込んで。
「そうよ。私の未来は明るいはずだわ」
──それが大きな間違いだと、その時の私は気づいていなかった。
転生して手にした能力はたしかに強力だった。
しかし、強力な能力は必ずしも幸せに繋がる訳がない。
それは一度私が身に染みて理解したはずのことで、けれど今の私はそんな当たり前のことさえ忘れていた。
それが一体どんな状況をもたらすかなんて、今の私は想像さえしていなかった……。
愚かだと、私を蔑んだ目で見つめた後去っていたライルハート様の背中。
それに縋り付くような視線を向けながら、私は呆然と言葉を漏らした。
何故、あんな視線をライルハート様に向けられたのか、私はまるで理解できていなかった。
先ほどまでは、たしかに状況は最悪だった。
お姉さまを溺愛するライルハート様が怒りの目を向けるのなら、私も理解は出来たかもしれない。
だが、ライルハート様は私に対して怒りを向けることはなかった。
まるで私を哀れむような、そんな視線を向けただけ。
その態度の理由がどうしても私には理解できなかった。
……なのに、私の胸からはなにか大切なことを見落としているような焦燥感が消えることはなかった。
「すべてがうまくいったのになんで?」
そう、全ては終わったのだ。
お父様の暴走も終わって、お姉さまも救われた。
だったらもう、ハーピーエンドではないか。
ライルハート様の態度を見た限り、私が責められることも、もうないはずだ。
そう考えてもなお、消えることのない焦燥感の正体を私は探るのをやめた。
「……考えても仕方がないことよ」
そう呟いた私は、後ろ向きな考えを頭から振り払い、王宮の廊下を引き返し公爵家へと歩き出す。
例え家名を奪われても、自分の能力なら生きることに苦労することなどないと信じ込んで。
「そうよ。私の未来は明るいはずだわ」
──それが大きな間違いだと、その時の私は気づいていなかった。
転生して手にした能力はたしかに強力だった。
しかし、強力な能力は必ずしも幸せに繋がる訳がない。
それは一度私が身に染みて理解したはずのことで、けれど今の私はそんな当たり前のことさえ忘れていた。
それが一体どんな状況をもたらすかなんて、今の私は想像さえしていなかった……。
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