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元令嬢、ギルドで絡まれる
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テミスが目を覚まし、そしてラミスが一度休息をとった後2人は再度辺境の街へと歩き始めた。
途中、テミスが何故か顔を真っ赤にしてラミスと話せないという異常が起こったものの、それ以上の問題が起こることはなく、2人は割合順調に街へと進んでいた。
そして問題が起きたのは2人がギルドに入ってからだった。
メリハリのついた豊満な身体つきと気の強めだが整った顔立ちのラミスと、少女とも間違われる容貌のテミス。
その2人は普通にむさ苦しい男たちがいる冒険者ギルドでは浮いたのだ。
明らかに貴族だとわかる2人、それも美人だということでギルドの中にいる男達の視線が全てラミス達に集められる。
「テミス」
「えっ、ラミス様?」
そしてその視線をラミスはテミスに向けられたものだと勘違いした。
というのも、戦場で常に戦っていたラミスには自分の容姿が整っているという自覚はない。
いや、無いわけではないのだがそれでも普通の人よりは上程度の認識しかない。
ー テミスが狙われてます!
よってラミスはテミスを守るために自分の身体を前に出し、テミスを男達の視線から遠ざけようとする。
だが、それは逆効果にしかなっていなかった。
今現在、テミスもラミスも2人とも鎧を着た状態で歩いている。
それは普通に持ち運ぶことが出来ないという理由なのだが、周りから見れば貴族のお嬢様方が夜逃げ同然でここまで来たような姿にも見えなくはない。
さらに、鎧を着ているせいでテミスは執事であるとは分からず、ラミスに庇われる形で立っているとまるで2人は姉妹のように見える。
そしてラミスがテミスを庇うという行為は逆に恐怖に怯えながらも気丈にも妹を守ろうとする姉という光景に見え、逆に注目をさらに集めることになる。
ーーー だが、それでも誰1人2人に声をかけようとするものはいなかった。
ただ1人、大柄な男がラミス達の様子をニヤニヤと笑みを浮かべながら見ていたが、他のものは横目で2人の様子を伺うだけ。
そのことにラミスは不信感を覚えつつも、だが辺境ではこんなものかとそう思考を止めた。
ただ、今自分がやるべきなのはギルドの受付嬢にギルド長からの手紙を差し出すことであると思い出し、視線を無視してラミスは真っ直ぐ歩き出す。
「本日はどのようなご用件で……っ!」
そしてそこにいた受付嬢は酷く可憐な少女だった。
おそらく年の頃としてはテミスと変わらない程度の、受付嬢としては珍しいくらいの年齢。
受付嬢になるには魔物の素材鑑定など様々な知識が必要になるので、大体が20を超えた女性になる。
つまり目の前の呆然とした少女はとてもそうは思えないがこの年齢でギルドの受付嬢となれるほどの知識を持っていることになるのだ。
人は見かけによらないと言うが……とラミスは目の前の少女に内心感心する。
「………綺麗な人」
「あの……」
「ひ、ひゃい!」
だが、次の瞬間顔を真っ赤にして慌て始めた少女の姿にその揺らいだ。
ー 大丈夫かな……
一瞬、胸に心配がよぎるがだが直ぐに手紙を渡してこのギルドの支部長に渡して貰うだけだと思いなおす。
「おい、あんたその子供は役に立たないぞ」
「っ!」
その時、突然後ろから声をかけられ受付嬢の女の子は悲痛そうな表情で俯く。
声をかけてきた男、それは先程からラミスを見つめていた大柄な男だった。
男は受付嬢に蔑む視線を送りながらラミスへと近づいてくる。
ラミスは戸惑いながらも、それでも男に害意は無いかと話を聞くことにする。
「そこのガキは素材の鑑定も明らかに低い値段にしたり、受付嬢になったことが何かの間違いだったようなやつ……」
「いえ、それは貴方の勘違いです」
「っ!」
………だが、ラミスは次の瞬間普通に男性の言葉を否定してしまってしまう。
「まず素材というのは傷が付いているかではなく、魔力伝道、加工性、それから硬さなどの素材としての価値を見ます」
気持ちよく話していた時に自分の言葉を否定された男の顔が引き攣るが、ラミスは気づかない。
というか、善意のつもりでさらに言葉を重ねる。
「ほら、1つも分からなかったでしょう。それらを確かめるには専門の器具が必要で……」
「ラミス様……」
「何ですか?テミス………あっ、」
そして数分後、ラミスはテミスに止められ、いつの間にか男の肩がプルプルしていることに気づく。
「ぷっ、」
「くふふ……」
当たり前だろう。ラミスは前にギルド長から聞かされた話をしただけだが、男は得意げにラミスの元へと駆け寄ってきた癖して逆に思いっきり鼻柱を折られ、周囲から笑われることとなったのだ。
普通に考えて怒らない方がおかしい。
「そ、そうなのか。だがあのガキが受付嬢として役に立たないのは本当だ!だから依頼とかなら俺に言えば……」
しかしそれでも男は必死に顔に笑顔を貼り付けて、そう告げる。
「いえ、お断りします」
「っ!」
だが再度あっさりとラミスに断られることになる。
その理由はラミスが受付嬢に頼もうとしていることは受付嬢じゃ無いと出来ないことであったのが1つ。
「貴方、自分を大きく見せたいのなら人を貶めるのはやめなさいな。逆に卑小に見えますわよ」
そしてもう1つはぷるぷると涙目で震えながらも、それでも堪えようとしている受付嬢の姿が目に入ったからだった。
彼女は酷く頼りなく見えて、男の言い分も分からなくは無い。
「少なくとも私には」
「くそっ!」
だが、それでもラミスは不当な評価を少女に押すことを是とはしない。
少なくともそれは自分の目で確かめてからするべきことだ。
「頑張りなさいな」
だから男が去った後、ラミスはそう少女に告げて何だか嬉しそうなテミスとともにギルドを去っていった。
「…………すいません。これ、ギルド支部長に渡しておいて下さい……」
………だが数分後、手紙を届け忘れたことに気づき、手紙を渡しに来たラミスの顔は真っ赤に染まっていたという……
途中、テミスが何故か顔を真っ赤にしてラミスと話せないという異常が起こったものの、それ以上の問題が起こることはなく、2人は割合順調に街へと進んでいた。
そして問題が起きたのは2人がギルドに入ってからだった。
メリハリのついた豊満な身体つきと気の強めだが整った顔立ちのラミスと、少女とも間違われる容貌のテミス。
その2人は普通にむさ苦しい男たちがいる冒険者ギルドでは浮いたのだ。
明らかに貴族だとわかる2人、それも美人だということでギルドの中にいる男達の視線が全てラミス達に集められる。
「テミス」
「えっ、ラミス様?」
そしてその視線をラミスはテミスに向けられたものだと勘違いした。
というのも、戦場で常に戦っていたラミスには自分の容姿が整っているという自覚はない。
いや、無いわけではないのだがそれでも普通の人よりは上程度の認識しかない。
ー テミスが狙われてます!
よってラミスはテミスを守るために自分の身体を前に出し、テミスを男達の視線から遠ざけようとする。
だが、それは逆効果にしかなっていなかった。
今現在、テミスもラミスも2人とも鎧を着た状態で歩いている。
それは普通に持ち運ぶことが出来ないという理由なのだが、周りから見れば貴族のお嬢様方が夜逃げ同然でここまで来たような姿にも見えなくはない。
さらに、鎧を着ているせいでテミスは執事であるとは分からず、ラミスに庇われる形で立っているとまるで2人は姉妹のように見える。
そしてラミスがテミスを庇うという行為は逆に恐怖に怯えながらも気丈にも妹を守ろうとする姉という光景に見え、逆に注目をさらに集めることになる。
ーーー だが、それでも誰1人2人に声をかけようとするものはいなかった。
ただ1人、大柄な男がラミス達の様子をニヤニヤと笑みを浮かべながら見ていたが、他のものは横目で2人の様子を伺うだけ。
そのことにラミスは不信感を覚えつつも、だが辺境ではこんなものかとそう思考を止めた。
ただ、今自分がやるべきなのはギルドの受付嬢にギルド長からの手紙を差し出すことであると思い出し、視線を無視してラミスは真っ直ぐ歩き出す。
「本日はどのようなご用件で……っ!」
そしてそこにいた受付嬢は酷く可憐な少女だった。
おそらく年の頃としてはテミスと変わらない程度の、受付嬢としては珍しいくらいの年齢。
受付嬢になるには魔物の素材鑑定など様々な知識が必要になるので、大体が20を超えた女性になる。
つまり目の前の呆然とした少女はとてもそうは思えないがこの年齢でギルドの受付嬢となれるほどの知識を持っていることになるのだ。
人は見かけによらないと言うが……とラミスは目の前の少女に内心感心する。
「………綺麗な人」
「あの……」
「ひ、ひゃい!」
だが、次の瞬間顔を真っ赤にして慌て始めた少女の姿にその揺らいだ。
ー 大丈夫かな……
一瞬、胸に心配がよぎるがだが直ぐに手紙を渡してこのギルドの支部長に渡して貰うだけだと思いなおす。
「おい、あんたその子供は役に立たないぞ」
「っ!」
その時、突然後ろから声をかけられ受付嬢の女の子は悲痛そうな表情で俯く。
声をかけてきた男、それは先程からラミスを見つめていた大柄な男だった。
男は受付嬢に蔑む視線を送りながらラミスへと近づいてくる。
ラミスは戸惑いながらも、それでも男に害意は無いかと話を聞くことにする。
「そこのガキは素材の鑑定も明らかに低い値段にしたり、受付嬢になったことが何かの間違いだったようなやつ……」
「いえ、それは貴方の勘違いです」
「っ!」
………だが、ラミスは次の瞬間普通に男性の言葉を否定してしまってしまう。
「まず素材というのは傷が付いているかではなく、魔力伝道、加工性、それから硬さなどの素材としての価値を見ます」
気持ちよく話していた時に自分の言葉を否定された男の顔が引き攣るが、ラミスは気づかない。
というか、善意のつもりでさらに言葉を重ねる。
「ほら、1つも分からなかったでしょう。それらを確かめるには専門の器具が必要で……」
「ラミス様……」
「何ですか?テミス………あっ、」
そして数分後、ラミスはテミスに止められ、いつの間にか男の肩がプルプルしていることに気づく。
「ぷっ、」
「くふふ……」
当たり前だろう。ラミスは前にギルド長から聞かされた話をしただけだが、男は得意げにラミスの元へと駆け寄ってきた癖して逆に思いっきり鼻柱を折られ、周囲から笑われることとなったのだ。
普通に考えて怒らない方がおかしい。
「そ、そうなのか。だがあのガキが受付嬢として役に立たないのは本当だ!だから依頼とかなら俺に言えば……」
しかしそれでも男は必死に顔に笑顔を貼り付けて、そう告げる。
「いえ、お断りします」
「っ!」
だが再度あっさりとラミスに断られることになる。
その理由はラミスが受付嬢に頼もうとしていることは受付嬢じゃ無いと出来ないことであったのが1つ。
「貴方、自分を大きく見せたいのなら人を貶めるのはやめなさいな。逆に卑小に見えますわよ」
そしてもう1つはぷるぷると涙目で震えながらも、それでも堪えようとしている受付嬢の姿が目に入ったからだった。
彼女は酷く頼りなく見えて、男の言い分も分からなくは無い。
「少なくとも私には」
「くそっ!」
だが、それでもラミスは不当な評価を少女に押すことを是とはしない。
少なくともそれは自分の目で確かめてからするべきことだ。
「頑張りなさいな」
だから男が去った後、ラミスはそう少女に告げて何だか嬉しそうなテミスとともにギルドを去っていった。
「…………すいません。これ、ギルド支部長に渡しておいて下さい……」
………だが数分後、手紙を届け忘れたことに気づき、手紙を渡しに来たラミスの顔は真っ赤に染まっていたという……
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