王妃の手習い

桃井すもも

文字の大きさ
47 / 52

傾聴の一族

「傾聴の一族」

オールブランス一族は、そう呼ばれている。

大層な事ではなく、文字通り、人の語りによく耳を傾けることを旨とする、唯それだけの話しなのだが。

一族領民、皆、当然の事と捉えているが、彼等は、代々続く傾聴の積み重ねから、状況を適切に把握し、必要に応じて最適解を導き出す能力に抜きん出ていた。 

そして、その副産物なのか、耳が利く。
オフィーリアの耳が優れているのは、一族の特性でもあった。

交易による諸国との繋がりに、地の利に恵まれた領地。内包する力が多大であればあるほど、立ち位置には影響力が生まれる。

政権に於いて中立を貫くオールブランス一族は、海洋の民らしくいつの時代に於いても政局を見誤る事が無かった。船の舵を取るが如く、政(まつりごと)の舵を取る。
彼等が右に寄れば政勢は右に傾き、左に寄れば左に倣う。

侮ってはならない一族であった。

そこに女児が産まれた。

王家に取り込めれば、そこからは考えるまでもない。

一族が固い結束で護る総領娘であるから、王家とはいえ無理を通す事は出来ずとも、常に関心を寄せられる存在がオフィーリアであった。

嫡子セシルが産まれた事は、王家にとっても僥倖と言えた。


そんな、父王が関心を寄せる娘を、アンドリューもまた関心を寄せるのは自然な事であろう。

どんな娘であるのだろう。

幼い頃より心を惹きつけられていた。

娘の噂を聞けば耳をそばだて、父侯爵が登城すると聞けば、その姿を確かめた。
ブルネットの髪に深碧の瞳が父親と同じだと聞いていたから。

海を渡る彼女。
領地を廻る彼女。

どんな娘なのだろう。
いつか、会える日が来るのだろうか。

潮風を受ける髪は、きっと美しいのだろう。
そして、瞳は深い海の色なのだろう。




あなたにおすすめの小説

君に愛は囁けない

しーしび
恋愛
姉が亡くなり、かつて姉の婚約者だったジルベールと婚約したセシル。 彼は社交界で引く手数多の美しい青年で、令嬢たちはこぞって彼に夢中。 愛らしいと噂の公爵令嬢だって彼への好意を隠そうとはしない。 けれど、彼はセシルに愛を囁く事はない。 セシルも彼に愛を囁けない。 だから、セシルは決めた。 ***** ※ゆるゆる設定 ※誤字脱字を何故か見つけられない病なので、ご容赦ください。努力はします。 ※日本語の勘違いもよくあります。方言もよく分かっていない田舎っぺです。

心の中にあなたはいない

ゆーぞー
恋愛
姉アリーのスペアとして誕生したアニー。姉に成り代われるようにと育てられるが、アリーは何もせずアニーに全て押し付けていた。アニーの功績は全てアリーの功績とされ、周囲の人間からアニーは役立たずと思われている。そんな中アリーは事故で亡くなり、アニーも命を落とす。しかしアニーは過去に戻ったため、家から逃げ出し別の人間として生きていくことを決意する。 一方アリーとアニーの死後に真実を知ったアリーの夫ブライアンも過去に戻りアニーに接触しようとするが・・・。

【完結】生贄になった婚約者と間に合わなかった王子

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
フィーは第二王子レイフの婚約者である。 しかし、仲が良かったのも今は昔。 レイフはフィーとのお茶会をすっぽかすようになり、夜会にエスコートしてくれたのはデビューの時だけだった。 いつしか、レイフはフィーに嫌われていると噂がながれるようになった。 それでも、フィーは信じていた。 レイフは魔法の研究に熱心なだけだと。 しかし、ある夜会で研究室の同僚をエスコートしている姿を見てこころが折れてしまう。 そして、フィーは国守樹の乙女になることを決意する。 国守樹の乙女、それは樹に喰らわれる生贄だった。

私のことを愛していなかった貴方へ

矢野りと
恋愛
婚約者の心には愛する女性がいた。 でも貴族の婚姻とは家と家を繋ぐのが目的だからそれも仕方がないことだと承知して婚姻を結んだ。私だって彼を愛して婚姻を結んだ訳ではないのだから。 でも穏やかな結婚生活が私と彼の間に愛を芽生えさせ、いつしか永遠の愛を誓うようになる。 だがそんな幸せな生活は突然終わりを告げてしまう。 夫のかつての想い人が現れてから私は彼の本心を知ってしまい…。 *設定はゆるいです。

無価値な私はいらないでしょう?

火野村志紀
恋愛
いっそのこと、手放してくださった方が楽でした。 だから、私から離れようと思うのです。

婚約する前から、貴方に恋人がいる事は存じておりました

Kouei
恋愛
とある夜会での出来事。 月明りに照らされた庭園で、女性が男性に抱きつき愛を囁いています。 ところが相手の男性は、私リュシュエンヌ・トルディの婚約者オスカー・ノルマンディ伯爵令息でした。 けれど私、お二人が恋人同士という事は婚約する前から存じておりましたの。 ですからオスカー様にその女性を第二夫人として迎えるようにお薦め致しました。 愛する方と過ごすことがオスカー様の幸せ。 オスカー様の幸せが私の幸せですもの。 ※この作品は、他投稿サイトにも公開しています。

すれ違う思い、私と貴方の恋の行方…

アズやっこ
恋愛
私には婚約者がいる。 婚約者には役目がある。 例え、私との時間が取れなくても、 例え、一人で夜会に行く事になっても、 例え、貴方が彼女を愛していても、 私は貴方を愛してる。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ 女性視点、男性視点があります。  ❈ ふんわりとした設定なので温かい目でお願いします。

行き場を失った恋の終わらせ方

当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」  自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。  避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。    しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……  恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。 ※他のサイトにも重複投稿しています。