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第4章 結婚後の求婚
第30話 お互いが初恋の人(前編)4
しおりを挟む仕事を終えて屋敷に帰ってきたデュランダルは、フィオーレが待っているはずの寝室へと向かう。
『オルビスのお姫様達には、幼い頃から必ず、剣の一族と呼ばれる者たちの中から護衛騎士がつくんだよ。彼らの特徴は紅い髪に碧の瞳だと言われている』
シュタールの発言が、デュランダルの頭の中から消えない。
だが、彼は一度頭を振って、そのことは考えないようにしていた。
寝室に入ると、部屋の中には西日が差し込んでいた。
「フィオ――?」
ベッドを見ると、フィオーレはすやすやと夕寝をしていた。
「フィオ、今寝たら、夜眠れなく――」
ふと、デュランダルの目に、フィオーレのブレスレットが目に入る。
朝になると、いつもフィオーレが口づけている装飾品だ。
ちょうど、花の形をしたチャームの部分が開くようになっている。
そうして――。
――今日はチャームが開放されたままだった。
「なんか、ざわつくな……」
胸騒ぎのするデュランダルは、中身を見てはいけないと思いつつも、その中身をみてしまう。
彼の表情が曇る。そうして、自嘲気味に笑った。
チャームの中にあった絵姿には――。
「なんだよ――マジで俺、馬鹿みたいだな……浮かれて……当然、フィオーレも俺のこと好きだって思って……」
――亜麻色の緩やかな髪をしたフィオーレによく似た姿をした少女と――
「確かにずっと、俺のことを好きになれるかは分からないとか、フィオは言ってたっけな……」
――紅い髪に碧色の瞳をした少年の姿が描かれていたのだった。
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