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第5章 家族のかたち
第38話 竜の血と聖女1
しおりを挟む竜を始祖とすると伝えられているエスト・グランテ一族――。
彼等は銀の髪に紫色の瞳を特徴に持っている。
髪の色、瞳の色、そのどちらかが欠けると、王族ではないとみなすものさえいる。
将軍デュランダル・エスト・グランテは、王家の人間だったが藍色の髪の持ち主であり、先王の妾の子であることは周知の事実だった。
デュランダルの兄であり、愚王と評されるジョワユース・エスト・グランテは、王の器ではないと昔から言われている。
彼の母は、元々王族の分家出身の女性である。彼女は、自身が贅を尽くすためや私利私欲のために国民に圧政を強いる――それこそ愚かな女性だった。
愚かな国母に、彼女の愚行に何も言えない愚王――彼らに対して、民たちの不満は募る一方である。だが、彼らはそれに気づくことが出来ない。
始祖の妻とされる聖女と同じ金の瞳を持つ、隣国の姫君フィオーレ・オルビス・クラシオンを妻にした、将軍デュランダル。彼の髪色が藍ではなく銀に生まれていたら、彼こそがエスト・グランテ王国の「真の王」だったのではないか――。
そう嘆く国民たちが後を絶たなくなる――。
そうして、民衆たちの間で「竜の聖女」の再来を求める声が高まっていったのだった。
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