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116話 佐々木

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 ホテル街に帰った俺達はいきなり防衛者たちに囲まれた。


「えっ、みんなどうしたの!?」

「どうしたも何も無いだろ! ウルフとゴブリンを無力化したのってお前達なんだろ!?」

「え、あぁ、そうだけど…………。」

「お前らはこの街の英雄だよ!」


 その言葉にそこに居た人々が湧き上がる。

 どうやら俺達がダンジョンを無力化した事により、この人達は俺達のことを英雄視しているらしい。


「あっそっか、あはは、それ程でも…………あるかもね!」


 陽夏はそう言って思いっきり調子に乗っている。

 コナーは流石の落ち着きで、みんなに対して冷静に対処している。

 対した俺は…………。

 全力で逃げている!

 俺は適当な部屋に逃げ、様子を伺っていた。

 危ない危ない。

 あのままだったらあの波に飲まれて死んでしまうところだった。

 俺はまだ人馴れしてないので、あんなところにいると気が狂いそうになるんだ。

 あんなところにいるくらいならチヤホヤなんてされなくったっていい。

 前まではチヤホヤされたいという願望とかはあったが、今はそんなものはかなりなくなっている。

 だってあんな不特定多数の人にチヤホヤされても実際意味ないし、女の子もゆうちゃんが居るからそれで十分だ。

 食べ物とかも俺には必要無いし、優雅な暮らしだってこんな状況で望めるものじゃない。

 つまり、今の俺にとってチヤホヤされるなどただの苦行なのだ。

 陽夏やコナーに褒められるくらいでいいんだ。

 俺は汗を拭った。

 しかし、みんなものすごい感謝してたな。

 やっぱりそれ程モンスターの脅威というのは人々にとって恐ろしいものだったんだろうな。

 それに、あのダンジョンが無力化された事によってこの場所は実質安全地帯となった訳だ。

 つまり生活の質が向上する。

 故にみんな喜んでいるのだろう。

 今まで出来なかった農業だって再会できるだろうから食事が薬に頼りきりじゃなくなるし、何より美味しい。

 そりゃ嬉しいよな。

 俺は外をちらっと伺う。

 相変わらず陽夏とコナーは揉みくちゃにされている。

 2人ともあれを捌けるなんてすごいな、俺には絶対にできない事だ。

 少し羨ましいが、俺はここでほとぼりが冷めるまで隠れていよう。

 俺は近くにあった椅子に座った。

 その時、外からざっざっざっという靴の音が聞こえた。

 まずい、このままでは見つかってしまう。

 どこかに隠れなくては!

 そう思ったのもつかの間、部屋の扉が開かれる。

 扉の先から出てきたのは佐々木さんだった。


「あれ、晴輝なんでこんなところに居るんだ?」

「えっと、それはかくかくしかじかで…………。」

「ん? なんだ? かくかくしかじかって。まぁ、いいか、おーい、ここに晴輝が居るぞ…………。」

「待て待て待て!」


 俺は慌てて佐々木さんの口を塞ぐ。


「むぐっ、お、おい晴輝何するんだよ!」

「ちょっと黙ってくれ! 俺は外の人にはバレたくないんだよ!」

「お、おう、別にいいが。」


 そう言って佐々木さんは黙ってくれた。

 ふぅ、良かった。

 あのままだと佐々木さんの声を聞いた人がこっちにも来てしまうかもしれない。

 佐々木さん1人ならそこまででは無いが、何人も人が居るとなると俺は無理になってしまうからな。


「みんなお前の事を探していたぞ? なんせこの街の英雄の1人だからな。みんな感謝を伝えたがっている。勿論俺もな。」

「そうなのか、だけど俺はあの人数と話すのはちょっと無理なんだ。あまり人が得意じゃなくてな…………。」

「ふっ、英雄様の意外な弱点見つけちまったな。」

「おいおい、やめてくれよ、マジで苦手なんだ。それこそいっその事そこにいる人たちを全員殺して俺も死のうか迷うくらいにな。」

「くくく、まぁ、苦手なのは分かった。だからそんなことはしないでくれよ?」


 佐々木さんは俺の言ったことが冗談だと思ったのか快活に笑いながら話続ける。

 いや、冗談抜きで本当にやってしまいそうなんだけどな?

 まぁ、ちょっとやそっとじゃやらないが、何かあったら本当にやってしまいそうなんだ。


「まぁ、人が苦手なら俺に着いてきてくれ、お前がいつも使ってる部屋まで案内するから着いてきてくれ。」

「いや、今外に出たら見つかるんじゃ…………。」

「いいからいいから、絶対に見つからないから大丈夫だ。」

「…………本当だな?」

「あぁ、任せてくれ。」


 俺は佐々木さんのその言葉を信じて外に出た。

 直後佐々木さんが魔力を使った。


「これで周りからある程度分からなくなったはずだ。」

「分からなくなった?」

「そう、俺のスキルの隠遁によってお前の姿を隠したからな。まぁ、俺から離れたら効果も切れるから部屋まで案内ついでについていってやるよ。」


 まじか、この人有能すぎないか?

 もうなんか突然この人が超絶イケメンに見えてきた。


「佐々木さん、ありがとう。」

「はは、気にするな、お前には感謝してるからな。それに俺の方が少し年下だし、敬称も要らないぞ。なんならさっきーって呼んでくれてもいいんだぞ?」

「…………それ普段から言われてるのか?」

「…………普段は佐々木だ。」

「じゃあ、これからは佐々木って呼ぶことにするよ。」


 俺は佐々木さん改め佐々木と少し仲良くなれたような気がした。

 俺はそんな超絶イケメンの佐々木と部屋に向かった。
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