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第六章 偽装恋人宅の訪問

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 ミレー公爵邸へ到着する頃には、私はすっかり気持ちを切り替えていた。

(何を、贅沢なことを考えているの? そもそもこの恋愛は、全てお芝居じゃないの。迎えに来ていただいただけでも、感謝しなくちゃ……)

 それよりも、アルベール様のご家族に、失礼の無いようにせねば。使用人たちにうやうやしく案内されて、私はアルベール様と共に、応接間へ入った。そこにはすでに、ミレー公爵と夫人がいらっしゃった。満面の笑みを浮かべておられる。

「これは、モニク嬢。ようこそ、おいでくださった。お会いするのを、楽しみにしていたのですよ」

 私がご挨拶申し上げるよりも早く、ミレー公爵はつかつかと歩み寄られると、そう仰った。私も、慌ててカーテシーでお応えする。

「この度は、お招きいただきありがとう存じます。お目にかかれて、光栄ですわ」
「ご婚約者のことでは、お悔やみ申し上げます。何やら、あらぬ疑いをかけられているそうですが、我々ミレー家は、あなたの味方ですよ」

 公爵は、心から気の毒そうな顔で私を見つめられた。思い描いていたイメージとは裏腹に、穏やかな印象を受け、私は意外に思った。国王陛下の従弟、そして王立騎士団長という肩書きから、私は実は、かなり彼に怯えていたのである。

「あなた。モニク嬢をいつまで立たせておくのです? アルベールも、気が利かないこと」

 そこへミレー夫人が、とがめるような声を上げた。彼女は、私に優しく微笑みかけた。

「アルベールの母ですわ。もう、今日という日がどんなに待ち遠しかったことか。……ほら、ご存じの通り、この家は男だらけでしょう? いつも、雰囲気が殺伐としておりますの。だから、素敵なお嬢さんをお招きできて嬉しいわ」

 そして彼女は、とんでもない台詞を吐いた。

「私、すでに離れの改装を準備し始めましたのよ。二人の新居としてね。……ああそうだわ、子供部屋も必要だったわね?」

(ちょっと待ってください。何ですか、その飛躍……!?)
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