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第十三章 思いがけない王命

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「――何ですって!?」

 私は一瞬、頭が真っ白になった。まあまあ、とお父様が仰る。

「私も、最初は驚いたさ。どうしてまた、と思った。だがお前は、昨日の鷹狩りで、マルク殿下の食事に毒が仕込まれているのを見抜いただろう? 陛下は、その点を重視されたそうなのだ。未来の王妃にふさわしい観察眼と、的確な判断力だ、と」
「そんな……。私はただ、植物の知識があっただけですわ……」

 私は、昨日の国王陛下のお言葉を思い出していた。結婚に消極的なマルク殿下に、陛下はこう仰っていたではないか。

 ――いつまでも逃げているようなら、私が強制的に決めるぞ?

 その相手が、私だというのか。お父様は、さらに続けた。

「それだけではない。陛下は、こうも仰っていたそうだ。その後モニク嬢は、実に的確にその場を采配した、と」
「ありがたいお言葉ですけれど……。私、お受けできませんわ……」

 私は、力無く答えた。するとお父様は、勘違いされたようだった。

「ああ、ドニ殿下のことを気にしているのか? それなら大丈夫。確かに殿下は、お前を妃にと望まれたようだが。陛下曰く、『ドニの妃ならいくらでも代わりがいるが、王太子妃には代わりがいないから』とのことだ」
「そうじゃありませんわよ!」
「なら、何だと言うんだ」

 お父様は、むっとされたようだった。

「アルベール様とは、お別れしたのだろう? いいじゃないか。王太子妃など、こんな名誉な話は無い。それにお前も、まんざらではないのだろう? マルク殿下を狙った料理人を、お前は男性陣と一緒になって追跡したそうじゃないか。お前は殿下を慕っているものと、陛下は信じ込まれているぞ?」

(違いますわ……!)

 誤解の積み重なりに、私は顔を覆いたくなった。マルク殿下のことはもちろん心配だったが、料理人を追跡したのは、ドニ殿下の一連の犯行を暴くためだったというのに。

「翌朝には、王宮から迎えが来る。早速、王太子妃教育が始まるそうだ。用意をしていなさい」
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