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最終章 前世から来世へ

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 それから、さらに一ヶ月が経過した。

 あの後、マルク殿下の葬儀はしめやかに執り行われ、エミールは立太子式を経て、正式に王太子となった。ローズはといえば、ギャーギャーわめきながらも、規則に則って修道院へと送られていった。

 さらに、マルク殿下のご逝去と時を同じくして、ドニ殿下が幽閉先にてご遺体で発見された。死因は、毒物摂取とのことであった。アルベール様とエミールの存在を知って、王位へのわずかな希望を完全に失ったことによる自決……と見られている。だが、肝心の毒物をいかにして入手できたのか、その経路は不明のままであった。

 二人の息子を一度に失って、さすがの国王陛下も、すっかりやつれきってしまわれた。だが、まだ幼いエミールを王太子として立派に育てる、ということだけが支えになったようだ。陛下自ら、エミールに教育を施す機会も設けられたと、私たちはミレー公爵から伺った。

 そして私はといえば、デュポン侯爵と共に、国立庭園開設に向けた準備をせっせと進めている。モーリスも、張り切って手伝ってくれている。そして侯爵と私は、最近連名で、とある論文を発表した。――その名も、『タバインの男性不妊効果について』。

 これは、男性貴族らを震え上がらせるに十分だった。跡継ぎが作れないとなれば大問題だし、何より男性が原因で子が成せない場合もあるという事実は、これまでの男性優位社会を覆した。子供ができなくて悩んでいた貴婦人たちは、こぞって私の元に、礼を言いに押しかけたくらいである。

「モニクは前世の記憶のおかげで、社会改革を成し遂げましたね」

 その日、二人で散歩していると、アルベール様は仰った。

「そんな大げさなものじゃありませんわ。でも、麻薬の誘惑への抑止力となったら、嬉しいです」

 あの一斉摘発のおかげで、麻薬犯罪はかなり減った。とはいえ、バール男爵のような存在は、いつ現れるかわからない。不妊効果があるとわかれば、麻薬に手を出そうという男性も、少しは減るだろう。私は、その期待も込めて、あの論文を発表したのである。

(麻薬を嫌悪なさっていた、マルク殿下のためにも……)
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