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第三章 あざかわ女子になった理由、打ち明けます

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 するとグレゴールは、うろたえた声を上げた。
「ど、どうした!?」
 言われて初めて、私は自分が涙ぐんでいたことに気付いた。
「俺は何か、お前のいた世界では無礼にあたるようなことを言ってしまったのか? ならば、謝る……」
 こんな風にグレゴールが焦ったところを見るのは初めてで、私は意外に思った。どうやら、男が女の涙に動揺するのは、ここでも一緒らしい。
(狙って泣いたわけじゃ、ないけどね……)
 私はハンケチで軽く目元を拭うと、グレゴールの瞳を見て告げた。
「失礼しました。グレゴール様のせいじゃありません。ちょっと、昔のことを思い出したんです」
 グレゴールが、怪訝そうな顔をする。私は、ぽつぽつと語り出していた。
「小学生……十二歳までの私は、今と全然違いました。子供だったということもありますけど、男の子に好かれるために大げさな言動をすることはありませんでした。そして、女の子の友達もいました」
 小学校時代は楽しかったな、と私は昔に思いを馳せた。あの頃は、男女関係なく友達がたくさんいた。『可愛くて羨ましい』と女子に言われることはあったけど、皆で仲良くしていたのだ。そして、一番仲良しだったのが……。
「ミユキちゃん、という親友の女の子がいたんです。明るくて活発で、おとなしい私をいつも引っ張ってくれました」
 グレゴールは、黙って耳を傾けてくれている。どうして彼にこんな話をしているのだろう、と私は思った。誰にも言えなかった話なのに。そしてグレゴールも、なぜ聞いてくれているのだろう。
「私のいた世界では、十三歳の年に、上の学校へ進むシステムでした。私もミユキちゃんも同じ学校へ進みました。そして、別の学校から来た新しいメンバーと知り合いました」
 当時のことを思い出して、私はぐっと唇を噛んだ。
「……その、別の学校から来たメンバーの中に、女の子に人気のある男の子がいたんです。正直、私は興味なかったんですが、彼は私を好きになりました」
 顔が可愛い、というのが理由だったらしい。すると、それまで黙っていたグレゴールが、初めて相づちを打った。
「好きでもない男に惚れられるのは、難儀なものであろう」
 コクン、と私は頷いた。
「それだけじゃありません。親友のミユキちゃんが、彼を好きになってしまったんです」
 あれが地獄の始まりだった、と私はうつむいた。
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