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最終章
最終章-23
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ボートは速度を落としながらゆっくりと入り江へ入り、船着き場へ横付けする。
すると、港で待機していた男達が待ちかねていたように、タラップをボートへ掛けた。
「――――思ったよりも、早かったな」
開口一番、腕組みをしていた五十がらみの壮年の男性が、下船する綾瀬へそう声を掛けた。
綾瀬は肩をすくめてみせると、飄々とした様子で笑う。
「急がないと、君に海に沈められそうだったからね。でも、自分でも、ここまで段取り良く進むとは思わなかったよ」
「これは約束の報酬だ。綺麗な金だから安心しろ」
男性がそう言うと、傍に控えていた腹心風の男が茶封筒を差し出した。
どうやら綾瀬は、聖救出の成功報酬として、男から謝礼を受け取る約束をしていたらしい。
なかなかどうして抜け目のないヤツだ。
フフっと笑うと、綾瀬は相手を見遣る。
「まさか、君から報酬を受け取ることになるとはね。昔、現役だった頃は想像も出来なかったよ。まったく、人生とは面白いもんだ」
「そうだな。オレにとちゃあ、貴様は本来天敵だ」
「……あの、話し中すみませんが、所長、このあと直ぐに真壁さんへ報告しないと――事務所で待っていると連絡が来てます」
茶封筒を回収しながら、助手の佐々木が耳打ちする。
綾瀬は頷くと、透明な一陣の風のように身を翻した。
「――それじゃあ、オレはこれで失礼するよ。今回の活躍で、最初に犯した弊社のミスは帳消しって事でよろしく」
これに対し、タラップを降りてきた聖は不承不承頷く。
「ああ」
「真壁くんの方は、上手くフォローしておくよ。とにかく、君の帰りをそこにいるヤクザさんは一日千秋の思いで待ちかねていたようだ。積もる話もあるだろうけど、ケンカしないで仲良くね」
最後に――と、綾瀬はジンの腕を取った。
「君は、オレと一緒に来い」
すると、港で待機していた男達が待ちかねていたように、タラップをボートへ掛けた。
「――――思ったよりも、早かったな」
開口一番、腕組みをしていた五十がらみの壮年の男性が、下船する綾瀬へそう声を掛けた。
綾瀬は肩をすくめてみせると、飄々とした様子で笑う。
「急がないと、君に海に沈められそうだったからね。でも、自分でも、ここまで段取り良く進むとは思わなかったよ」
「これは約束の報酬だ。綺麗な金だから安心しろ」
男性がそう言うと、傍に控えていた腹心風の男が茶封筒を差し出した。
どうやら綾瀬は、聖救出の成功報酬として、男から謝礼を受け取る約束をしていたらしい。
なかなかどうして抜け目のないヤツだ。
フフっと笑うと、綾瀬は相手を見遣る。
「まさか、君から報酬を受け取ることになるとはね。昔、現役だった頃は想像も出来なかったよ。まったく、人生とは面白いもんだ」
「そうだな。オレにとちゃあ、貴様は本来天敵だ」
「……あの、話し中すみませんが、所長、このあと直ぐに真壁さんへ報告しないと――事務所で待っていると連絡が来てます」
茶封筒を回収しながら、助手の佐々木が耳打ちする。
綾瀬は頷くと、透明な一陣の風のように身を翻した。
「――それじゃあ、オレはこれで失礼するよ。今回の活躍で、最初に犯した弊社のミスは帳消しって事でよろしく」
これに対し、タラップを降りてきた聖は不承不承頷く。
「ああ」
「真壁くんの方は、上手くフォローしておくよ。とにかく、君の帰りをそこにいるヤクザさんは一日千秋の思いで待ちかねていたようだ。積もる話もあるだろうけど、ケンカしないで仲良くね」
最後に――と、綾瀬はジンの腕を取った。
「君は、オレと一緒に来い」
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