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130 妹、再び帝都来襲①
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「電報ですー」
とんとんとん、というノックと共にそんな声がウッドマンズ工房に響いた。
はいはいはい、とポーレが先んじて扉へと近付く。
「テンダー様!」
工房では電報は受け取った者が最初に見て皆に告げることが多い。
いつもの様にポーレはそうしようとして――
「何、私宛てなの? いきなり」
「大変です!」
皆が手を止めてポーレとテンダーの方を向いた。
「どうしたのポーレ、貴女がそんなに狼狽するなんて」
「そうよ本当に」
「何って書かれてたの?」
皆が口々に言葉を発する中、見せて、とテンダーはポーレから電報を受け取る。
――途端、テンダーの口がはしたないと言われそうなくらいに大きく開いた。
「叔母様!」
そして叫んだ。
「ど、どうしたのテンダー」
「アンジーが――来ます!」
「え」
「電報は父からです! 何かいきなり家を飛び出してこっちに向かった様なので気をつけなさい、ということです」
え、妹? どういうこと? と同僚達はざわつく。
「……兄さんはあの子が出てすぐに電報を送ってくれたみたいね。昔ほどぼんくらではなくなったのかしら」
「それどころではないですよ叔母様、来るならまずここじゃないですか! 何とかしないと!」
「え、ちょっと待って、テンダー、貴女の妹が来るって言って何でそんな」
「嵐なんですよ。アンジー様は。悪い方の」
がっくりとポーレは肩を落とす。
「せっかく結婚して落ち着いたかと思ったのに! 何だってあの方は、わざわざ平地に乱を起こそうとするんです! というか何で今更来るんですか? テンダー様に今更! いまさら! 用があるなんて思えないんですが!」
両の拳を握りしめ、滅多に見ない剣幕のポーレに皆がおののいた。
「まああの子の考えることは私には解らないわよ」
ふう、とテンダーはため息をつく。
「いえ、私ちょっと心当たりがあります。というか昔のあの方の行動から考えたんですが」
「心当たり?」
「テンダー様最近『友』のインタビューに答えてましたでしょう?」
「ああ…… でもあれはヒドゥンさんの記事のついでで」
そう、最初の公演以来、女装俳優転じて怪奇俳優としてのヒドゥン・ウリーの名は着実に広がっていた。
それは帝都だけでなく――
「それですよ。ヒドゥンさんの『友』でのインタビューの時に、私服のオーダーもしている婚約者ってことでテンダー様、確かにちょっとだけど、写真入りで出てたでしょう?」
「あー、『友』は帝国全土で売っているものね。帝都の情報とか知りたい若い奥様だったらだいたいどんな階級でも手にする可能性はあるわ」
「いや、でも」
テンダーはやっぱり「今更」と思った。
「甘いですよ。アンジー様はテンダー様の想像の斜め下をどれだけ昔やってきたことか!」
「あの子だってそれでももう二児の母じゃない」
「……子供が子供産んでどうするんですか。それこそ私の母がテンダー様についたみたいに乳母つけているんじゃないですか?」
「ああ…… あ、そうだ。フィリアは最近何か言ってきていた?」
「最近は足腰が…… いや、その話は後ですよ。ともかく今は、あの方が来てしまったらどうするか、ですよ! まずとりあえず作業場に入られない様にしなくては……」
そう言うとポーレはばたばたと動き出した。
「え? え? いや、斜め下って」
さて何処から説明したものか。
テンダーは迷った。
「ともかく今日出たなら、帝都に着くのは最近の鉄道では明日か明後日でしょう? ……ちょっと待って、この電報によると、『一人で』とあるけど……」
カメリアはテンダーに問いかける。
「父の頭の中では侍女は人数に入っていない、とは…… でもあの子が一人で列車に乗れるとは思わないし……」
頼むから誰も付いていないでくれ、とテンダーは思った。
乗り方が分からないなら向こうの駅で足止めができるのだから。
とんとんとん、というノックと共にそんな声がウッドマンズ工房に響いた。
はいはいはい、とポーレが先んじて扉へと近付く。
「テンダー様!」
工房では電報は受け取った者が最初に見て皆に告げることが多い。
いつもの様にポーレはそうしようとして――
「何、私宛てなの? いきなり」
「大変です!」
皆が手を止めてポーレとテンダーの方を向いた。
「どうしたのポーレ、貴女がそんなに狼狽するなんて」
「そうよ本当に」
「何って書かれてたの?」
皆が口々に言葉を発する中、見せて、とテンダーはポーレから電報を受け取る。
――途端、テンダーの口がはしたないと言われそうなくらいに大きく開いた。
「叔母様!」
そして叫んだ。
「ど、どうしたのテンダー」
「アンジーが――来ます!」
「え」
「電報は父からです! 何かいきなり家を飛び出してこっちに向かった様なので気をつけなさい、ということです」
え、妹? どういうこと? と同僚達はざわつく。
「……兄さんはあの子が出てすぐに電報を送ってくれたみたいね。昔ほどぼんくらではなくなったのかしら」
「それどころではないですよ叔母様、来るならまずここじゃないですか! 何とかしないと!」
「え、ちょっと待って、テンダー、貴女の妹が来るって言って何でそんな」
「嵐なんですよ。アンジー様は。悪い方の」
がっくりとポーレは肩を落とす。
「せっかく結婚して落ち着いたかと思ったのに! 何だってあの方は、わざわざ平地に乱を起こそうとするんです! というか何で今更来るんですか? テンダー様に今更! いまさら! 用があるなんて思えないんですが!」
両の拳を握りしめ、滅多に見ない剣幕のポーレに皆がおののいた。
「まああの子の考えることは私には解らないわよ」
ふう、とテンダーはため息をつく。
「いえ、私ちょっと心当たりがあります。というか昔のあの方の行動から考えたんですが」
「心当たり?」
「テンダー様最近『友』のインタビューに答えてましたでしょう?」
「ああ…… でもあれはヒドゥンさんの記事のついでで」
そう、最初の公演以来、女装俳優転じて怪奇俳優としてのヒドゥン・ウリーの名は着実に広がっていた。
それは帝都だけでなく――
「それですよ。ヒドゥンさんの『友』でのインタビューの時に、私服のオーダーもしている婚約者ってことでテンダー様、確かにちょっとだけど、写真入りで出てたでしょう?」
「あー、『友』は帝国全土で売っているものね。帝都の情報とか知りたい若い奥様だったらだいたいどんな階級でも手にする可能性はあるわ」
「いや、でも」
テンダーはやっぱり「今更」と思った。
「甘いですよ。アンジー様はテンダー様の想像の斜め下をどれだけ昔やってきたことか!」
「あの子だってそれでももう二児の母じゃない」
「……子供が子供産んでどうするんですか。それこそ私の母がテンダー様についたみたいに乳母つけているんじゃないですか?」
「ああ…… あ、そうだ。フィリアは最近何か言ってきていた?」
「最近は足腰が…… いや、その話は後ですよ。ともかく今は、あの方が来てしまったらどうするか、ですよ! まずとりあえず作業場に入られない様にしなくては……」
そう言うとポーレはばたばたと動き出した。
「え? え? いや、斜め下って」
さて何処から説明したものか。
テンダーは迷った。
「ともかく今日出たなら、帝都に着くのは最近の鉄道では明日か明後日でしょう? ……ちょっと待って、この電報によると、『一人で』とあるけど……」
カメリアはテンダーに問いかける。
「父の頭の中では侍女は人数に入っていない、とは…… でもあの子が一人で列車に乗れるとは思わないし……」
頼むから誰も付いていないでくれ、とテンダーは思った。
乗り方が分からないなら向こうの駅で足止めができるのだから。
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