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10 下手の真ん中上手の縁矢

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(ルカ=レーニャ視点)
 

 あのパーティーの夜から3ヶ月が経ちました。
 

 何故かお祖父様に気に入られた私は、あれ以来ちょくちょくお祖父様とランチやディナーをご一緒する仲になりました。

 たまにレオさんも一緒に来てくれますが、基本的には私だけで……ですが、お祖父様はあの夜とは違い、優しく陽気なただのおじいちゃんで、結構おしゃべりも楽しいです。

 なんだか私、夫役のレオさんよりも、お祖父様と旦那様と食事をご一緒している気がします……。

 食事だけではありません……。

 来週は、お祖父様と狩猟に行く約束をしていますし、次の週には、旦那様と格闘技を観に行く約束をしています。
 
 
 お二人とも、孫と息子の嫁を可愛がるのはいいですが、私を可愛がっても無駄という事はわかっていらっしゃいますよね?
 
 
 
 レオさんはと言うと、旦那様の仕事を回されたとおっしゃって、さらに忙しくなられたご様子です。

 あれだけしつこかった毎晩の行為も、今はする暇も気力もないようで、私は夜ぐっすり眠ることが出来てありがたい限りです。
 
 
 そしてあっと言う間に月日は流れ、雇用契約期間も半分が過ぎたある日の事でした。
 
 
「レーニャ様、お客様です」

「お客様、ですか? 私に……?」


 来客だと言われましたが全く心当たりがなく、少し警戒しながらも、お客様がお待ちだという、屋敷の庭へと向かいました。
 
 
 庭にいたのは……。
 
 
「……っレーニャ……さん?」
 
「っ!」
 
 庭にいたのは、本物のレーニャさんと、あの時瀕死の状態だった男性の二人でした。


 本物のレーニャさんは私の姿を見るなり、駆け寄って来られて、抱きつかれました。


「レーニャさん……っあの時は本当にありがとう……本当に本当にありがとう……っあの人が今生きているのは、貴女のおかげよ、本当に感謝してもしきれないわ……っ」

 私は本物のレーニャさんの身体に腕をまわし、抱きしめ返しました。

「お二人ともお元気そうでよかったです、ご本人なのに変装させてしまってすみません……」

 レーニャさんは私に気遣ってか、伊達眼鏡に帽子を被り、耳も尻尾も隠してくれていた。

「紹介するわね、貴女が命を救ってくれたこの人は、私のつがいよ……結婚は出来ないけど、ずっと一緒にいると誓ったの」

「驚いた……本当にそっくりだ……ああ、すみません、命を救って頂いたと聞きました、自分はテオです……その節は本当に世話になりました」

 レーニャさんの旦那さんのテオさんは、私を見て、レーニャさんと似ていると、とても驚いていました。

 私も驚いています、まるで鏡でも見ているようなのですから。


「レーニャさん、私達、ここへ来る前にレオの所へ行って来たの」

「そうなのですね」

「ええ、きちんとお礼と謝罪をしてきたわ……本当は、レーニャさんに会っていいか許可を貰うために行ったのだけどね」

 それからしばらく、私にアレコレとおしゃべりをするレーニャさんは、あのパーティーの夜とは違い、とても生き生きとして、幸せそうでした。

 テオさんは、ずっとレーニャさんの腰を抱いている以外、特に何をするでもありませんが、ただ、レーニャさんを見つめるその表情だけで、二人が愛し合っている事がひしひしと伝わってきます。

 ……これが本物の愛し合う二人なのでしょうか。



「お二人はこれからどうされるのですか?」

「そうね、レオから後半年は遠くにいてくれと言われたから、そうするつもりよ、ねぇレーニャさん、貴女は本当に1年間雇われただけの人間なの?」

 ご存知なのですね、レオさんが話したのでしょうか。

「はい、私は人間です、レーニャさんとの離婚が成立するまでの1年間の雇用契約を結んでいます」

「本当だったのね……」

「レーニャさん、戸籍は関係無いにしても、公にレオさんとの離婚が成立すれば、このお名前をお返し出来ますので、テオさんと入籍も出来ますよ、私の耳と尻尾も消えて、髪の毛も元に戻して貰いますので、レーニャさんはこの世で貴女だけです」

「……そうよね、今は私の名前を名乗っているだけで、貴女にもちゃんと飼い主がつけてくれた名前があるのよね……教えてくれる?」

「ルカです……大好きなお師匠様がつけてくださった、大切な名前です」

 私を柊の姓に入れてくれた、優しいお師匠様がつけてくれた名前です。

「ルカは、離婚が成立したらリーベルスのペットになるの?」

「っとんでもない! 離婚が成立したら、報酬を貰って、私は“人間の国”を目指します」

 契約が満了した後の事は、まだ決めてはいなかったですが、そういう事にしておきましょう。

「……“人間の国”……ねぇテオ、それって……」

「ああ……ルカさん、その“人間の国”は誰から聞いたんだ?」

「え、人間の病院にいる時に、同じ病室で入院してた人間から聞きました、都市伝説レベルの話しって言ってましたけどね」

 何でしょうか、二人の様子がおかしいです。

「“人間の国”はね、我々も聞いた事があるよ……ただ……」

「ただ?」

「ある1人の獣人が作ってるって話しなの」

 レーニャさんが話してくれました。

「獣人が人間の国をですか? ならつまり、ただのペット王国って事なのですかね?」

 全員その獣人のペットなのだろうか……。

「いいえ、そこでは人間が獣人を飼ってるみたいなの……」

「……え?」

 なんですかそれは……理解に苦しみます。

「要するに、そこはドM獣人の国、でもあるのでしょうか」

「っぷ! ……あはは! ルカったら、面白いわね」

 笑われてしまいました。

 でも、人間が沢山いるなら一度行ってみるのもいいかもしれません。

「ルカ、もし人間の国に行くなら、その前に私達の所へ顔を出してよ、私達も人間の国について調べておくから……スマホ貸して?」

「え、あ、はい」

 レーニャさんは私のスマホに自分の連絡先を登録してくれました。

「連絡するわっ、ルカも連絡してっ無事に離婚出来る事を願ってるわ、ルカのためならいつでもテオと駆け付けるし、チカラになれる事があればなるわ」

「……ありがとうございます、とても心強いです」

 人間がペットとしてしか生きられないこの世界で自力するのは、正直言えば不安が無いわけではありません。

 不思議な縁ではありますが、レーニャさんとテオさんに会えて本当によかったです。





 その後、二人は仲良く手を繋いで、帰って行きました……。









 その夜、珍しくレオさんが早い時間に寝室に現れました。


「……今日、テオ達が来たって?」

 まぁ、ご存知ですよね。

「はい、お庭でおしゃべりして連絡先も交換しちゃいました」

「仲良くなったのか?」

「はい、レーニャさんは同い年とは思えないほど、大人っぽいですね、本物に会えたので、演技もパワーアップできそうです」

「……演技ね、そうだな、頑張れよ……」


 レオさんは、疲れているのか口数が少ないです。
 それに、何かを言いたそうにも見えます。

「……あいつ等に何か聞かれなかったか?」

 なんだ、そんな事ですか、躊躇う必要ありますか?

「色々聞かれましたが、具体的にはどんな事でしょう?」

「……その……離婚が成立した後の事とか……」

 ああ……人間の国の事は不確定事項なので、クライアントであるレオさんには黙っておきましょう。

「離婚が成立したら、リーベルス家のペットになるのかと聞かれましたね」

「っ……それで、お前はなんと答えたんだ?」

「なんとも何も、なりませんと答えましたが……なりませんから」

「……ならないのか?」

「なりませんよ、仕事でもなければ、誰かのペットなんて絶対になりません」

 誰かに自分の生殺与奪を握られるなんて、まっぴらごめんです。

「それに、リーベルス家は人間をペットにしないと聞きましたが、違うのですか?」

「お、俺と爺さんはそうだが、父上なんかは別に名言してないからな、飼う可能性もあるんじゃないか? ……例えば……よほど気に入る人間がいれば、側に置きたくなるだろ」

 へぇ、そうなんですね。

「いずれにせよ、私は誰のペットにもなりませんから、関係ありませんね」

「……そうか、なら、我が家をでてどうするんだ? 行く宛あるのか?」

「はい、行く宛は今日一つ出来ました!」

 私は自慢気にスマホをフリフリさせます。
 まぁ、所詮、一箇所だけですが。

「……テオ達の所か……」

「はい! ですが、お友達としてお顔を見に行くだけです」

 ラブラブ夫婦の邪魔はしたくありませんからね。



「そうか……なんだか今日は疲れた……今夜は動けそうにないから、レーニャが上に乗って動いてくれ」

「なら、さっさと寝たらいかがでしょうか」

「出した方が良く眠れるんだ、頼むよレーニャ」

「夫婦の演技に必要とは思えませんので、お断りします」

 嫌です、一人でするなんて、馬鹿みたいです! 私はバター犬ではありません。


「なかなか言うようになったじゃないか」

「私のクライアントはレオさんだけではありませんから! 直接の雇用主である旦那様が、無理するなとおっしゃいましたので、嫌な事はお断りする事にしました」

「……嫌な事、だと?」

「はい、嫌な事、です」

「お前、俺とヤルの嫌な事だったのか?」

「その質問にはお答えしかねますが、業務遂行や業務円滑化の為とはいえ、あまりにも頻度が必要以上だったとは感じておりました!」

「っ! だったら、そう言えばいいだろ!」

「今言いました!」

「っ! ……っクソ! もう寝るっ!」

「はい、おやすみなさいませ、良く眠れないのなら、子守唄でも唄いましょうか?」

「っ結構だ!」


 ……怒らせてしまいました。


 でも、私は悪くありません。




 ○○●●


(レオポルト視点)


 クソッ! レーニャの奴、“嫌な事”だと?!

 あれだけ毎晩気持ち良さそうにしてたくせに!

 “嫌な事”だって?
 “嫌な事”? 嫌な……事……。

 つまり俺はずっとレーニャに嫌な事を強いて来たのか?

 クソ野郎かよ。

 だが……それにしたって……“嫌な事”……。




 今日、本物のレーニャと旦那のテオが会社に現れた。

 謝罪だのお礼だのと言っていたが、結局の所、レーニャに合わせて欲しいと、許可を貰いに来ただけにちがいない。


 その際に少しレーニャの存在について聞かれたので、話しておいた。

 本物のレーニャは、影武者のレーニャが人間であること以上に、顔も身体も全て魔法で自分そっくりにしたと思っていたようだが、耳と尻尾以外は自前だと知り、とても驚いていた。

 レーニャとレーニャで呼びにくいからと、本当の名前を聞かれたが、俺は答えられなかった。
 何故なら、知らないからだ。

 たった1年の関係だと、知ろうともしなかったからな。

 さらには、1年後、彼女はどうするとも聞かれたが、それについても、俺は答えられなかった。

 アルベルト・ヴォルフィートにも言ったが、1年後、レーニャが何をしようがどこへ行こうが、そんな事は俺には関係のない事だ。

 だが、本物のレーニャに言われたひと言が、何故か小さな棘としてずっと胸に刺さっている。


『抱くだけだいて、首にも噛みついてるくせに、彼女の事何にも知らないのね……興味がないの? それとも、自分の気持ちに気付いてないの? ……言っておくけど、今の貴方の話しを聞く限り、貴方達は夫婦じゃないわ、ただの飼い主とペットよ』


 ティルに言われてからこの半年……俺達は紆余曲折あり、立派に夫婦としてやれていると思っていた。
 今はもう俺はほとんど演技なんてしていないし、周囲も俺達の仲を疑う者など、誰一人としていないはずだ。


『自分の気持ちに気付いてないの?』

 あの言葉がどうにも引っかかる。

 なんだあの、まるで俺がレーニャに惚れてるかのような言いぐさは。
 まぁ、確かにあいつの身体には惚れ込んでるかもしれないが身体だけでは、愛とは言わないだろ。

 レーニャ・リーベルス……相変わらず、気の強い女だ……いや、あの女はもうリーベルスじゃなかったな。



 ……“嫌な事”……。
 

 クソッ……もう、レーニャから頼んで来るまで、抱いてやらないからな!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 ……それからひと月……レーニャから抱いてくれと頼んで来ることはなかった。
 
 それどころか、彼女はむしろ生き生きツヤツヤしている。


 契約満了の1年まで残す所あと5ヶ月……。
 レーニャと結婚式を挙げた日からすれば、1年まで、あと4ヶ月もない。


 相変わらず父上は嫌がらせのように俺に仕事を振って、自分はレーニャと出歩いているようだ。
 
 
 
 
 なんなんだ、なんでこんなにイライラするんだ。
 
 
 ……そうか、最近出してないからだな。
 
 久々に店に顔出すか……
 
 
 
 
 
 
 俺は魔法で容姿を変えて、夜の街に巡回に出ることにした。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「いらっしゃいませ、本日はどの子をご希望で?」
 
「……黒髪の人間はいるか?」

「おりますとも、最近入ったばかりで、今はまだその初心さが人気ですよ」

「ならその子にしよう」

「かしこまりました」





 VIPルームで待っていると、黒髪の人間の嬢が部屋に入ってきた。


「ご指名ありがとうございます、わぁ、お兄さん凄くカッコイイですね……」

 そうだった、俺は人間から見てもカッコイイんだよな……レーニャはカッコイイなんて一度も言ってくれた事はないが。

「お前、いくつだ?」

「私ですか? 20歳です」

 レーニャと一緒か……ならば、やはりレーニャの男の好みがおかしいんだ。
 そう言えば、父上の事をイケオジとか言っていたな……。


 そんな事を考えていると、嬢は俺の息子を取り出そうとベルトを外していた。

「凄い……カッコよくて、こっちもこんなに立派なんて……お兄さんなら、本番してもいい……よ?」

「……俺の事をその気にさせれたらいいぞ」

「その偉そうな感じ、興奮しちゃいますっ……では、始めますねぇ」


 嬢は俺の息子を咥え、舐め始めた。


 しかし……。


 ……下手くそめ。
 いや、違うな、店のマニュアル通りだ、うむ、正しく手順通りなので、問題はないのだが……。

 レーニャのテクに慣れた俺はには……全く気持ち良くない。


 まさかっ!

「っきゃ」

 俺はある恐ろしい可能性を確かめようと、嬢を押し倒し、彼女の穴に半立ち程度でしかない自分の息子を入れようとした。

 が、いかんせん気が進まない。

 息子もさらに萎えてしまった。


「……」

「……あれ?」


 駄目だ……どうしたんだ息子よ……いつもの元気はどうしたっ? レーニャとなら、平気でヌカ3でも5でもイケただろ。



「……悪いな、今日は帰るとする……チップだ」

「……ありがとう……ございます……」





 俺は肩を落としながら家路に付き、風呂に入って寝室のドアを開けた。

 ……レーニャは今日も寝ているだろうか。




「あ、おかえりなさいレオさん」


 起きてた。

「……なんだ、今日は起きてたのか」

「はい、話したい事がありまして」

「話し? なんだ」

「レオさん、今日風俗行きましたね? 変装までして」

 な! 何故それを!
 
 だが、別に俺は悪くない……俺達はただのビジネス夫婦だからっなっ!
 
「ああ、久しぶりに、店の巡回に行ったんだ、何でそんな事を?」

 ……何言い訳してんだ俺は! いいじゃないか別にっ!
 ここは男らしくハッキリと抜きに行ったと言えば!


「お祖父様が心配して連絡くださいました、上手くいってないのか、と」

 なっ! 爺さんが?!

「ったく……爺さんは何を勘違いして……仕事だっての……」

「……黒髪の人間……入ったばかりで初心がうり……」


 っな! 何故レーニャがそれを!

「レオさん、どうでした? スッキリしましたか?」
 
「……いや、だから俺は仕事で」
 
「ずいぶん早く出てきたみたいですけど、早かったのですか? そんなに上手な子だったのですか?」
 
 だ、誰だ! 俺の行動をレーニャに密告しているのは!! ただじゃおかないぞ!

 でも待てよ……? レーニャはもしかして……。

「妬いてるのか?」

「すみません……全く……私には妬く理由がありませんから」

「なら放っておいてくれ、爺さんには俺から言っておく……話しはそれだけか?」

「いいえ、まだあります」

「なんだ」

 なんなんだ、人が落ち込んでる今日に限ってレーニャは。


「赤ちゃんが出来てました」

「そうか赤ちゃん……っ?! は?!」

「妊娠6ヶ月に入るとの事です、いかがしましょうか」

「6ヶ月?! 嘘だろ?! 腹を見せろ腹を!」

 有り得ないだろ、6ヶ月も妊娠に気付かないなんてこの女は!

 俺はレーニャのパジャマをめくり上げ、その細かったウエストを確認する。

「……っな」

 レーニャの腹はくびれこそあれど、ぽっこりと曲線を描き前に出ていた。

「妊娠6ヶ月前……って事は5ヶ月前だよな……5ヶ月前……5ヶ月前……」

「パーティーの夜の時の子かと、あの日はピルを飲んだ記憶がありません」

「っ! あの時の子か!」

 なんて事だ……確かにあの日は色々あったからな……。

「俺以外には誰かに話したか?」

「いいえ、今日病院で判明し、誰にも話していません、まずは精子提供者に確認をすべきと思いまして」

 せ……精子提供者?! お前は人工授精でもしたのか!
 
「……父親だ、レーニャの腹の子の父親と言え、赤ん坊が腹の中で聞いてるかもしれない」

 全く……こんな時でもいつもの調子なんだなこの女は……。

「それで……いかがしましょう、医師から中絶するなら今すぐだと言われてしまいましたので、考えている時間はないようです」

「中絶!? 何馬鹿な事言ってんだ! レーニャさえ良ければ、産んでくれ! 俺の子を!」

「……産んで……よろしいのですか? ちゃんと考えてください」

「当たり前だろ! いや、むしろ、産むのはレーニャだ、身体に負担があるのもレーニャだ……だから、お前が好きでもない俺の子を産むのが嫌なら無理にとは言えないが……」

「産んだら……ちゃんと育てないといけないのですよ?」

「……レーニャ、俺が赤ん坊を放置するとでも思ってるのか? いいか、獣人はな、愛妻家であればあるほど、同時に子煩悩でもあるんだぞ、自慢じゃないが、俺は父上からそれはそれは大事に大事にうざいくらい可愛がられて育ったんだぞ、だからこんな性格に……っじゃなくてだな……っクソ!」


「……そんな気がしていました」

「……おい」


「……レーニャ、もう一度言う、俺は、レーニャが嫌でなければ、お腹の子を産んで欲しい、俺と一緒に親になろうレーニャ」



「……え?」

「……え? って……なんだ?」


 結構感動するところのはずが、何故かレーニャは寝耳に水、といった表情を見せている。

 ……え?

 
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