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裏切り者
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アティスは、戦利品として持ち帰ってこさせた100以上もある美少女や女の生首を眺めながら、うっとりとして呟いた。
「ああ、なかなか美しいな。このまま永遠に時を止めてあげたことに感謝して欲しいくらいだ」
周囲に立ちつづける今回の戦いに参加した兵士は、そんな異常性がにじみ出るアティスのことを理解できなかったが、口出しするものは誰もいなかった。
「バッカル。お前、キスがまだだっただろう。この金髪碧眼の美女とキスをしてみたらどうだ?」
「ぼ、ぼ、ぼ、僕は……」
青ざめながら、生首を見つめるバッカル。
「どうした?俺の提案が聞けないのか」
「そ、そんなことありません」
バッカルは、吐き気と恐怖を堪えながら、美しい金髪をしている美女の生首に近づいた。そして、おそるおそる唇を重ねた。
「うっ……」
血と泥の味が唇に残る。
「どうだった?ファ―ストキスの味は?」
「あ、あ、あ、あ、甘酸っぱかったです」
皇帝の機嫌を損ねないために、心にもないことを呟く。
「それは、よかった。今度は、ディープキスをしてみたらどうだ?」
「ぼ、ぼ、僕、ぼ、僕は……」
カタカタと震えだしたバッカルは、何かを言いかけてやめてしまう。
「冗談だ。そろそろ本題に戻ろう。お前たちをここに呼んだのは芸術鑑賞させるためではない」
ぐるりと、今回の戦いに参加したたった百人の兵士を見つめる。アティスは、今回の戦いでギル達が真っ向勝負を挑んでこないことを予想して、これだけの兵士しか用意していなかったのである。もちろん情報がばれないように、兵士たちにもこのことをばれないようにし、自分達は部隊を合わせると一万人規模の軍隊であると思いこませていた。
「さて、今回の件で裏切り者が発覚した」
ゆっくりと周りを眺める。誰も顔に動揺を現していない。全く、よくできたスパイだ。
「ブルーノ・マーシャル。裏切り者は、お前だろう」
それを聞いた男は、かすかに震えた。
アティスと目があったブルーノは、必死で動揺を押し殺していた。
「どうして……私だと思ったんですか」
私は、完璧であったはずだ。どんなミスもした覚えはなかった。いつも慎重すぎるくらい慎重に行動をしていた。誰かにつけられていることもなかったはずだ。
「お前がルータリア人に虐められていたと知ったからだ。他の奴らは、ルータリア人として何不自由なく育った。よって、動機がない」
そんな理由で、ばれてしまったのか。
いや、だけど確かに動機がない奴らを疑うことは大概無意味だ。
しかし、まだ、大丈夫だ。アティスは、証拠を掴んだわけではない。ここで、無実を主張すれば信じてもらえるかもしれない。
「陛下、私は無実です!!陛下を裏切ったことなんて一度もありません」
「貴様は、俺の推理を否定するのか。俺が正しいと言えば、正しい。ここでは、俺がルールだ」
そんな……。
指先がブルブルと震える。心臓が鋼のように打ち出す。死が影のようにひっそりと近づいているのを感じる。
「裏切り者は、抹殺しなければいけない」
ワインのように甘美な声が響きわたる。
「いったいどんな殺し方がいいだろうか。火あぶり、溺死、落下、飢死、凍死……。できるだけ苦しんで死んで欲しいものだ。何がいい?」
ルビーのような目をキラキラとさせて、考え続ける。
「そうだ、いい考えがある。お前も命が惜しいだろう。俺は、寛大だからお前の裏切りを許してやる」
それを聞いた途端、全身がゾッとした。
この男がこんなに優しい言葉をいうはずがない。ここから先は、聞きたくない。
「だから、TKGの首謀者であるフローレンスを殺せ。そしたら、許してやろう」
アティスは、悪魔のように美しく歪んだ笑顔を浮かべた。
「ああ、なかなか美しいな。このまま永遠に時を止めてあげたことに感謝して欲しいくらいだ」
周囲に立ちつづける今回の戦いに参加した兵士は、そんな異常性がにじみ出るアティスのことを理解できなかったが、口出しするものは誰もいなかった。
「バッカル。お前、キスがまだだっただろう。この金髪碧眼の美女とキスをしてみたらどうだ?」
「ぼ、ぼ、ぼ、僕は……」
青ざめながら、生首を見つめるバッカル。
「どうした?俺の提案が聞けないのか」
「そ、そんなことありません」
バッカルは、吐き気と恐怖を堪えながら、美しい金髪をしている美女の生首に近づいた。そして、おそるおそる唇を重ねた。
「うっ……」
血と泥の味が唇に残る。
「どうだった?ファ―ストキスの味は?」
「あ、あ、あ、あ、甘酸っぱかったです」
皇帝の機嫌を損ねないために、心にもないことを呟く。
「それは、よかった。今度は、ディープキスをしてみたらどうだ?」
「ぼ、ぼ、僕、ぼ、僕は……」
カタカタと震えだしたバッカルは、何かを言いかけてやめてしまう。
「冗談だ。そろそろ本題に戻ろう。お前たちをここに呼んだのは芸術鑑賞させるためではない」
ぐるりと、今回の戦いに参加したたった百人の兵士を見つめる。アティスは、今回の戦いでギル達が真っ向勝負を挑んでこないことを予想して、これだけの兵士しか用意していなかったのである。もちろん情報がばれないように、兵士たちにもこのことをばれないようにし、自分達は部隊を合わせると一万人規模の軍隊であると思いこませていた。
「さて、今回の件で裏切り者が発覚した」
ゆっくりと周りを眺める。誰も顔に動揺を現していない。全く、よくできたスパイだ。
「ブルーノ・マーシャル。裏切り者は、お前だろう」
それを聞いた男は、かすかに震えた。
アティスと目があったブルーノは、必死で動揺を押し殺していた。
「どうして……私だと思ったんですか」
私は、完璧であったはずだ。どんなミスもした覚えはなかった。いつも慎重すぎるくらい慎重に行動をしていた。誰かにつけられていることもなかったはずだ。
「お前がルータリア人に虐められていたと知ったからだ。他の奴らは、ルータリア人として何不自由なく育った。よって、動機がない」
そんな理由で、ばれてしまったのか。
いや、だけど確かに動機がない奴らを疑うことは大概無意味だ。
しかし、まだ、大丈夫だ。アティスは、証拠を掴んだわけではない。ここで、無実を主張すれば信じてもらえるかもしれない。
「陛下、私は無実です!!陛下を裏切ったことなんて一度もありません」
「貴様は、俺の推理を否定するのか。俺が正しいと言えば、正しい。ここでは、俺がルールだ」
そんな……。
指先がブルブルと震える。心臓が鋼のように打ち出す。死が影のようにひっそりと近づいているのを感じる。
「裏切り者は、抹殺しなければいけない」
ワインのように甘美な声が響きわたる。
「いったいどんな殺し方がいいだろうか。火あぶり、溺死、落下、飢死、凍死……。できるだけ苦しんで死んで欲しいものだ。何がいい?」
ルビーのような目をキラキラとさせて、考え続ける。
「そうだ、いい考えがある。お前も命が惜しいだろう。俺は、寛大だからお前の裏切りを許してやる」
それを聞いた途端、全身がゾッとした。
この男がこんなに優しい言葉をいうはずがない。ここから先は、聞きたくない。
「だから、TKGの首謀者であるフローレンスを殺せ。そしたら、許してやろう」
アティスは、悪魔のように美しく歪んだ笑顔を浮かべた。
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