61 / 84
殺人事件
しおりを挟む
ゾディア教徒皆殺し事件の次の日、フローレンスが何者かに首を絞めて殺された。
最初の頃は、フローレンスが姿を見せなくて、みんな彼が責任を感じて落ち込んでいると噂をしていた。さすがに夜まで姿を見せないと違和感を覚え始めた。数名で彼の部屋を訪れると、冷たくなった彼を発見した。
二重スパイであったブルーノ・マーシャルも、自殺していた。遺書には、「ごめんなさい」としか書かれていなかった。
ブルーノがフローレンスを殺した可能性もあるが、他の可能性も調べてみる必要がありそうだ。
そして、僕はフローレンスが殺された事件の黒幕の最有力候補者として再び地下牢に放り込まれた。
って、誰も僕を信用していないじゃん。悲しくて、目からバケツ一杯の涙が出てきそうだ。
牢屋で石を眺めながら、この衝撃的な事件について考える。
ブルーノは、アティスにスパイであることがばれたんだろうか。そして、フローレンスをアティスのために殺そうとした。けれども、結局アティスには許してもらえず、殺されることになって自殺することを選んだ。
そう考えると辻褄が合うが、その推理を裏付ける証拠はたいしてない。
そして、もう一つ気になることがある。それは、ブルーノがバレたら死ぬ奴だとジュレミーが言っていたことだ。あの言葉が嘘だとは思えない。いや、嘘かもしれない。あんな風に嘘をつける男だから、アティスの下で生き延びることができたのかもしれない。
あ――――。遺書のごめんなさいってどういう意味だよ。何に対するごめんなさいか、それさえわかれば、解決できる気もする。
散々考えた後は、眠気が襲ってきた。ベッド付近においたろうそくの火を消そうとした時、カツン、カツンと地下牢の階段を降りてくる音がした。
こんな時間に一体誰だろう?ギル・ノイルラーに恨みを持つ誰かが、僕を殺しにきたのか。
「誰だ?」
まずは、敵の正体を知っておきたい。説得はそれからだ。
「こんばんは」
現れたのは、天使顔負けの美少年だった。
「リュカ!」
「眠れなくて来てしまいました」
寝るために軽装をしているせいか、いつもよりも天使度が上がっている気がしてしまう。
「そうか。お前は、僕が犯人だと疑っていないのか」
「もちろんです。ギル様を疑っている人は、たくさんいるけれども、僕は今のあなたが悪い人に見えません」
それを聞いて胸がじんわりと温かくなった。
ここへ来たから、冷遇されたり、閉じ込めらたり、疑われたりしてばっかりだけど、リュカに信じてもらえれば、どうでもいい気がした。
「手を握ってくれませんか。今は、誰かに慰めて欲しいんです」
「ああ……」
そっとリュカの手を握り締める。彼の手は、握り締めたら壊れてしまいそうなほど小さくて、温かかった。
「フローレンスは、僕にとって兄のような存在で……、とても大切な人でした。彼のためにも、僕は頑張らないといけません」
彼の宝石のように綺麗な瞳からは、ぽたぽたと涙が零れ落ちていた。
なんて健気でいい子なんだ。フローレンスの仇は、絶対に僕がとってやろう。
「きっと、リュカの頑張りは報われるよ」
それを聞いたリュカは、ますます泣きだした。
「ありがとうございます」
僕は、もう片方の手で泣き続けるリュカの頭を撫で続けた。
リュカがひとしきり泣いた後は、二人で事件について話し合うことにした。
「リュカは、この事件の真相をどう思う?」
「そうですね。ブルーノが、フローレンスが殺されたことに関係している可能性が高いと思います」
「やっぱり、そうだよな」
「あの……最後にブルーノを見たとき、思いつめるような顔をしていたんです。……もし、あの時、何か言葉をかけていれば、彼とフローレンスを助けることができたかもしれません」
リュカは、今にも泣きだしてしまいそうに顔を曇らせた。
「リュカのせいじゃないよ」
しかし、ブルーノが思いつめるような顔をしていたということは、彼は自殺したと考えて間違いがないだろう。やっぱり、罪悪感が自殺の引き金となったのか。
ああ、情報が足りなすぎる。これ以上、この話をしてもリュカを傷つけるだけかもしれない。他に手に入れておきたい情報は何だっけ……。ああ、そうだ。
「これからTKGをどうするんだ?」
「フローレンスの代わりにジュレミーがトップに立ちます。そして、副隊長は、おそらくルーナになるでしょう」
頭がきれそうなジェレミーはともかく、あのオカマは人望があったのか……!?結構、驚きだ。
リュカは、眠気が襲ってきたのか小さなあくびをした。
「そろそろ寝ろ。また、明日、話し合おう」
握られていた手がゆるりとほどかれた。
「じゃあ、そろそろ戻ります」
「ああ、おやすみ」
「おやすみなさい」
リュカが去って行く。その小さな後ろ姿が、城に残してきたシオンの後ろ姿と重なった。
思わず去りゆく彼に手を伸ばしたとき……。
ガッシャーン。
「え?」
不意に頭上で、何かが割れる音がする。
それから、マシンガンでズドドドドドドドドドと打つ音も聞こえる。
その音を聞いたリュカの動きも止まった。
「嫌あああああああああああああああああああああ」
「助けてええええ!」
「誰かあああああああああああああああああああああああああああああ」
「きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
まるで地獄にいるかのような悲鳴が次々に聞こえてきた。
最初の頃は、フローレンスが姿を見せなくて、みんな彼が責任を感じて落ち込んでいると噂をしていた。さすがに夜まで姿を見せないと違和感を覚え始めた。数名で彼の部屋を訪れると、冷たくなった彼を発見した。
二重スパイであったブルーノ・マーシャルも、自殺していた。遺書には、「ごめんなさい」としか書かれていなかった。
ブルーノがフローレンスを殺した可能性もあるが、他の可能性も調べてみる必要がありそうだ。
そして、僕はフローレンスが殺された事件の黒幕の最有力候補者として再び地下牢に放り込まれた。
って、誰も僕を信用していないじゃん。悲しくて、目からバケツ一杯の涙が出てきそうだ。
牢屋で石を眺めながら、この衝撃的な事件について考える。
ブルーノは、アティスにスパイであることがばれたんだろうか。そして、フローレンスをアティスのために殺そうとした。けれども、結局アティスには許してもらえず、殺されることになって自殺することを選んだ。
そう考えると辻褄が合うが、その推理を裏付ける証拠はたいしてない。
そして、もう一つ気になることがある。それは、ブルーノがバレたら死ぬ奴だとジュレミーが言っていたことだ。あの言葉が嘘だとは思えない。いや、嘘かもしれない。あんな風に嘘をつける男だから、アティスの下で生き延びることができたのかもしれない。
あ――――。遺書のごめんなさいってどういう意味だよ。何に対するごめんなさいか、それさえわかれば、解決できる気もする。
散々考えた後は、眠気が襲ってきた。ベッド付近においたろうそくの火を消そうとした時、カツン、カツンと地下牢の階段を降りてくる音がした。
こんな時間に一体誰だろう?ギル・ノイルラーに恨みを持つ誰かが、僕を殺しにきたのか。
「誰だ?」
まずは、敵の正体を知っておきたい。説得はそれからだ。
「こんばんは」
現れたのは、天使顔負けの美少年だった。
「リュカ!」
「眠れなくて来てしまいました」
寝るために軽装をしているせいか、いつもよりも天使度が上がっている気がしてしまう。
「そうか。お前は、僕が犯人だと疑っていないのか」
「もちろんです。ギル様を疑っている人は、たくさんいるけれども、僕は今のあなたが悪い人に見えません」
それを聞いて胸がじんわりと温かくなった。
ここへ来たから、冷遇されたり、閉じ込めらたり、疑われたりしてばっかりだけど、リュカに信じてもらえれば、どうでもいい気がした。
「手を握ってくれませんか。今は、誰かに慰めて欲しいんです」
「ああ……」
そっとリュカの手を握り締める。彼の手は、握り締めたら壊れてしまいそうなほど小さくて、温かかった。
「フローレンスは、僕にとって兄のような存在で……、とても大切な人でした。彼のためにも、僕は頑張らないといけません」
彼の宝石のように綺麗な瞳からは、ぽたぽたと涙が零れ落ちていた。
なんて健気でいい子なんだ。フローレンスの仇は、絶対に僕がとってやろう。
「きっと、リュカの頑張りは報われるよ」
それを聞いたリュカは、ますます泣きだした。
「ありがとうございます」
僕は、もう片方の手で泣き続けるリュカの頭を撫で続けた。
リュカがひとしきり泣いた後は、二人で事件について話し合うことにした。
「リュカは、この事件の真相をどう思う?」
「そうですね。ブルーノが、フローレンスが殺されたことに関係している可能性が高いと思います」
「やっぱり、そうだよな」
「あの……最後にブルーノを見たとき、思いつめるような顔をしていたんです。……もし、あの時、何か言葉をかけていれば、彼とフローレンスを助けることができたかもしれません」
リュカは、今にも泣きだしてしまいそうに顔を曇らせた。
「リュカのせいじゃないよ」
しかし、ブルーノが思いつめるような顔をしていたということは、彼は自殺したと考えて間違いがないだろう。やっぱり、罪悪感が自殺の引き金となったのか。
ああ、情報が足りなすぎる。これ以上、この話をしてもリュカを傷つけるだけかもしれない。他に手に入れておきたい情報は何だっけ……。ああ、そうだ。
「これからTKGをどうするんだ?」
「フローレンスの代わりにジュレミーがトップに立ちます。そして、副隊長は、おそらくルーナになるでしょう」
頭がきれそうなジェレミーはともかく、あのオカマは人望があったのか……!?結構、驚きだ。
リュカは、眠気が襲ってきたのか小さなあくびをした。
「そろそろ寝ろ。また、明日、話し合おう」
握られていた手がゆるりとほどかれた。
「じゃあ、そろそろ戻ります」
「ああ、おやすみ」
「おやすみなさい」
リュカが去って行く。その小さな後ろ姿が、城に残してきたシオンの後ろ姿と重なった。
思わず去りゆく彼に手を伸ばしたとき……。
ガッシャーン。
「え?」
不意に頭上で、何かが割れる音がする。
それから、マシンガンでズドドドドドドドドドと打つ音も聞こえる。
その音を聞いたリュカの動きも止まった。
「嫌あああああああああああああああああああああ」
「助けてええええ!」
「誰かあああああああああああああああああああああああああああああ」
「きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
まるで地獄にいるかのような悲鳴が次々に聞こえてきた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
170
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる