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変怪

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朝、目を覚まして簡単に身支度と朝食を済ませた四人。まだ持ち運びが出来るサイズの聖樹を植えるため穴を掘り、サリサとカメリアが巫女らしく二人で大地に植えたのだが木が光り輝いたり、不思議な声が聞こえたりするわけでもなく普通に一本目が終わってしまった。

「これで本当に良いんだよな?」

腕を組んで首をかしげるサリサの問いに応えられる者は誰もいない。

「大丈夫と信じよう。まだ一本目だ。きっと五本植えたら何か起こるはずだ」

五本の聖樹を守るために森にいたガストラが自分自身に言い聞かすように言った。

「そうだよな!よし次いくぞ!」

「おうよ」

活発な二人とは対照的に静かに樹を見つめるカメリア。

「どうかなさいましたか?」

いつもとは違う様子の主人を心配してツキカゲが声をかける。

「あ、ええ、大丈夫よ。意外にあっけなく植えることが出来たから実感がなくて」

カメリアは心配かけないように笑みを浮かべる。しかし、それを見たツキカゲの顔は険しくなった。

「なにか心配ごとがあるのでは?」

多くの言葉はかけないツキカゲだが、彼から心配されるとよほど自分が不安そうな顔をしていたのだと反省するカメリア。それでも彼に話すのは躊躇われてしまった。

「……本当はヘルム様のことが心配なの。夢で、ヘルム様の気持が心変わりする話をされたから」

「愛するものとは必ず別れがあります。誰も逃れることはできません。私が失ったものももう戻りません」

言葉の違いもあってツキカゲは自分のことを語らない。カメリアがつけた彼の名のように静かな姿は、彼が失ったものの大きさを示しているようだった。

「ごめんなさい。貴方に比べたら私は……」

「私はまだ良い方だ」とは言えるほど心の整理が簡単につくものではなかった。

「私でよろしければいつでも話してください。お聞きすることができます」

「おーい!何してんだ!?早く街に行こうぜ!」

カメリアとツキカゲが遅れていることに気がついたサリサが二人に向かって大きな声で合流を促す。

「只今!」

ツキカゲが発する大声は普段の彼とは全く違ったものだった。しかし「参りましょう」とカメリアに促すツキカゲはいつもの彼に戻っていた。
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